第7話「それじゃあ小さすぎるよ」

【当日まであと20日】


ナナミが複数の物体を手に持ち、

しげしげと眺めている。

カチャカチャ、と軽い金属音。

メジャーをカシャカシャと鳴らし、

測りながら「んー……」と唸る。

「やっぱり、それじゃあ小さすぎるよ」

どこか残念そうな声。

諦めのような響きがあった。


ナナミの手元が映し出される。

様々な形状のフレームが並べられている。

いくつかを試着してみるが、

どれも彼女の求めているサイズ感ではないようだ。

彼女は真剣な表情で、

誰かの顔の寸法が書かれたメモ。

そして、そのメモに挟まれた

お気に入りの景色が描かれた

「おでかけ日記」と見比べている。

日記には、あの人が写っている。


カメラが引くと、

ナナミが眼鏡店で、

たくさんの眼鏡フレームの中から

最適なものを選んでいるのが判明する。

手元のフレームは、

メモに書かれた誰かの顔のサイズに対して

小さすぎたのだと明らかになる。

ナナミは店員と熱心に相談している。

「もう少し、横幅が広くて、

鼻当てが高いものはありませんか?」

店員は困ったような顔で、

新しいフレームを差し出す。


ナナミはスマホを取り出した。

画面には、誰かの顔の寸法が書かれたメモの画像。

過去に撮った誰かの笑顔の写真も映る。

写真の下には手書きで「お気に入りの景色」と書かれている。

その背景には、

前にミサキが直していた庭のベンチが写っていた。

「こっそりあの人の古い眼鏡を借りて

サイズを測ったんだけど……」

ナナミは小さく呟いた。

その眼鏡を、そっと写真と見比べる。

「今度こそ、あの人にぴったりのが見つかるといいな」

誰かの快適な視界を願う。

その眼鏡をかける、あの人の顔を想像した。


あの人が、見える喜びを感じてほしいから。

それが、私の願い。


---


次回予告:


「うわぁ……こんなに……」

刺激的な匂いと、鏡に映る白い衝撃。

彼女の髪に一体何が起こったのか!?

まさかの事態に、彼女は絶叫!

美の追求は、時に過酷だ。


次回、

第8話「こんなに白くなっちゃった……」

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