第4話「じゃあ、入れるよ……」

【当日まであと3日】


静かな部屋。

シン、と張り詰めた空気。

ハナが小さな器具を手に持っている。

ツルリ、と光を反射する。

誰かの耳元に、そっと近づける。

その声は、優しくも、どこか緊迫している。

「ゆっくりだからね……」

囁くような声。

ハナの喉が、ゴクリ、と鳴った。


器具の先端が、

耳の穴にゆっくりと近づいていく。

シン、と緊張した沈黙が流れる。

ハナは、自分の鼓動が

ドクドクと速くなるのを感じた。

スウ、と息を吸い込む。

「じゃあ、入れるよ……」

ハナのセリフと共に、

スッ、と何かが差し込まれるような

微かな音がした。

カチッ、と小さな感触。

彼女の指先が、わずかに震えている。

失敗は、許されない。

汗が、ツゥ、と頬を伝った。


カメラが引くと、

ハナがマネキンの耳に補聴器を装着する練習をしているのが明らかになった。

彼女は真剣な表情で、

最もスムーズな装着方法を確認していたのだ。

セリフは、補聴器を装着する際の確認の声。

マネキンには「テスト用:○○(あの人のニックネーム)モデル」と書かれた小さな布が巻かれている。

「医療系の勉強してるから、

こういうの、慣れておかないと……」

ハナは独りごちる。

マネキンの耳は、何度見ても、

本物そっくりだった。


ハナはマネキンの耳に

補聴器がカチリとはまったことを確認すると、

満足げに頷いた。

「よかった……これで、大丈夫」

ホッ、と息を吐く。

テーブルの上には、使い方ガイド。

真新しい補聴器の箱も置かれている。

ピカピカと、光を反射する。


新しい補聴器の箱は、

小さなリボンで飾られている。

サラサラ、と揺れるリボン。

リボンには「聞こえる喜び、届きますように」と書かれたタグが添えられていた。


「これで、きっとあの人の会話も弾むはず」

誰かの穏やかな会話を願う。

あの人のためなら、慣れておきたい。

ハナは、そのタグをそっと撫でた。


---


次回予告:


「もっと……速く……!」

荒い息遣いと、上下する体に熱視線。

必死な表情。

果たして彼女は、その「道具」を

使いこなせるのか!?


次回、

第5話「さっきより速く動かして!」

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