最低限の日、最高に生きている夜
朝とは対照的にまとまった食料を買って家に帰った。
制服を洗濯機に入れてスイッチを押す。一息ついてバニティネルをかけると、リビングには晋太郎がいつものように投影されていた。
なぜかゲームの中のに缶ビールを手にして、「お疲れ〜」と声をかけてくる。
「今日は、何もしなかった」
スーパーの袋から半額の固くなったパンと原価の焼き上げハンバーグを取り出しつつ、白葵はぽつりとそう言った。
眉を上げて晋太郎が返す。
「でも、行っただろ? 会社」
「行ったけど……もう、本当に最低限」 ハンバーグを電子レンジに入れ、まだ10%引きで彩りのいいサラダパックを取り出す。水気の飛んだレタスと、甘すぎるドレッシング。それでも今日は不思議と悪くない。
「最低限ってのは、たいてい他人から見たら十分なんだよ」
缶のふたを開ける仕草をしながら、彼はふっと笑った。
「頑張らなくていい日も、ちゃんと生きてる。それってすごいことだぜ?」
食器は割り箸だけ、レンジから出てきた熱々のハンバーグに箸を入れると、じゅわっと肉汁があふれ、香ばしい香りが鼻をくすぐった。
ゆっくりと咀嚼しながら、今日は何もしなかった自分を静かに労わるように、白葵は目を閉じて味わった。
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