最弱職? 使いこなせないお前が悪いんだよ!

@MUMUDATOU

第1話

「街角の新しい宝くじ売り場に、最初の客が現れた。」


「30元で1枚いかが?運が良ければ最高100万円当たりますよ」


「悪くないな、1枚くれ」


陳風(チェン・フェン)はスクラッチくじを1枚引き抜き、じっと眺めた。


店主の心の中では笑いがこみ上げていた。


(もし本当に100万円当たったら、逆立ちして〇〇食べてやるよ……)


「数字の4だ。親方、当たりだ」


「兄貴……それどんな神がかり的な運だよ!?」


宝くじ売り場を出る陳風は、得意げに当たりくじをひらひらさせていた。


しかし換金する間もなく──突然暴走したトラックが突っ込んできた。


……


……


「陳風、私たちやっぱり合わないわ。私はS級職業【癒し手】なのに、あなたはE級だもの。別の世界の人よ」


陳風はぶるっと頭を振り、目の前の見知らぬ女性を呆然と見つめた。


深呼吸して記憶を整理すると……どうやら自分は異世界転生したらしい。


詭異(グイイ)に侵略されたパラレル地球。21世紀初頭、無数のダンジョンが出現し、3年ごとに魔獣や巨人が現れ人類を襲う世界。


成人した人間は職業を覚醒させ、ゲームのようなシステムで強化し戦う。


元の「陳風」は受験生で、職業覚醒後に絶望して魂が入れ替わったようだ。


悪い知らせ:覚醒したのは戦闘力ゼロの後方職。

良い知らせ:食いっぱぐれない「工匠(クラフター)」系統の職業。

最悪の知らせ:その中でもE級評価の「確率工匠」だった。


クラスメイトは笑い転げた。工匠系統で最低でもC級なのに、陳風だけが断トツのE級だからだ。


教師や家族は「人生いろいろ」と慰めたが、この世界でE級職は底辺確定を意味する。


なんと、ずっと両想いだと思っていたクラスのマドンナ・蘇沫熙(スー・モーシー)までが告白を拒絶してきた。


「職業覚醒したら付き合う」という約束は、SS級職を覚醒した金持ちの男子・王鑫(ワン・シン)が現れた瞬間に反故にされたのだ。


「陳風、わかってほしいの」

蘇沫熙が繰り返すと、陳風は「屑ったらしい笑み」を浮かべて言った。


「綺麗事はいいよ。王鑫がSS級職で金持ちだからってことでしょ?」

「そうだな、池の底の雑魚が女神に釣られるわけないよな。俺から断るわ」


記憶によれば、元の陳風は蘇沫熙にベタ惚れだった。だが実際は、彼女の“養殖池”の一匹でしかない。職業ランクが低い=即廃棄という単純な構図だ。


蘇沫熙は耳を疑った。いつも温和で無邪気な陳風が、こんな言葉を吐くとは。


「陳風!何様のつもり!?」

「あなたはクズなのよ!E級職じゃ一生這い上がれない!確率工匠なんて私の靴舐め役にもなれないわ!」


(あっ、本性出た)


陳風は嗤い、告白時に渡したチョコとラブレターを奪い返すと、レターをビリビリに破いてゴミ箱へ投げ込んだ。


「運の良さには自信あるんで」


チョコは1ヶ月分の生活費で買ったもの。自分で食べればいいんだ。


教室に戻ると、隣の席の顧思思(グー・スースー)がチョコに涎を垂らしていたので1つ分けてあげた。


高校入学からずっと隣の席で、無口で視線だけで会話する不思議な関係。彼女だけは陳風のE級職を笑わなかった。


(蘇沫熙より、こっちの方がよっぽど女神だわ)


顧思思はB級職【ガンナー】。工匠とよく組む職業だ。


チョコをぱくつく彼女に、陳風はさらに大きいのを渡した。

「糖分取りすぎ」

すると彼女は小さく頷き、「美味しい。もっと食べたい」と呟いた。


──その時、教室のドアが開いた。


担任の秦図(チン・トゥー)が黒板を叩く。

「10分後、最初の『職業計画授業』だ。実訓基地に職業別に集合しろ」


生徒たちは興奮した。職業特性を学び、成長させる第一歩だからだ。


職業は3大分類に分かれる:


戦闘職(直接攻撃型・身体強化系)


補助職(蘇沫熙の【癒し手】など)


後方職(陳風の【確率工匠】など)


それぞれ特性が異なり、レベルアップで転職も可能になる。


後方職専用の実訓教室で、秦先生が指示を出す。

「『システム』と心で唱え、個人ステータスを開け」


生徒たちの瞳が青く光り、自分だけに見える画面が現れた。


陳風も心で叫ぶ。

「叮!システム、ちゃちゃっと出てこい!」


【名前:陳風】

【年齢:18】

【レベル:LV1(0/10)】

【職業:確率工匠】

【評価:E】

(以下続く……)

【ステータス画面】

【レベル】:LV1(0/10)

【職業】:確率工匠(プロバビリティ・クラフター)

【評価】:E


【基礎能力値】:


筋力:3


敏捷:4


知力:6


精密:5


運:100


【補足説明①】

※本数値はシステムが覚醒者の身体をスキャンした参考指標です。装備・感情・状況により変動します。


【補足説明②】

※「知力」は知能指数ではなく、魔法系職業のダメージ係数計算用指標です。


陳風は静かに息を吐いた。


(……予想通りだな)


パネルに表示されたのは、彼の人生を象徴するような数値だった。

筋力・敏捷・知力は平凡──だが、運だけが桁外れに100。


陳風は幼少期から異常なほどの幸運に恵まれていた。

孤児院出身ながら、宝くじやスクラッチで生計を立てられるほどに。

ただ、この「運」が数値化すると人類トップクラスだとは……


(通常、100超えの数値は世界の強者のみ。しかも運はレベルアップ時に2ポイント以上消費する)

他人にパネルが見えなくてよかった。国家の実験台にされるところだった。


【職業スキル】

秦先生の指示で、陳風は「職業パネル」を開く。

表示されたのはたった2つの機能──


【分解】 と 【打造(クラフト)】


これこそが「工匠」系統の核心能力だ。

素材を分解し、設計図に従って武器や装備を製作する。

理論上、最高級の工匠なら神器さえ生み出せるが……


(金がかかりすぎる。だから“貧乏人は工匠を覚醒するな”と言われる)


教室では他の生徒が次々と能力を披露していた。

【修理工】の生徒は壊れた短剣を瞬時に修復し、

【機械師】の女子は木材から精密な木製パズルを製作する。


そして──いよいよ陳風の番だ。


秦先生が錆びた鉄塊を渡す。

「分解してみろ」


『分解!』


白光が閃き、鉄塊は消滅。

【分解成功!基本素材+10】


続いて「覚醒者限定スタートパック」を開封。

【E級武器設計図・普通の拳銃】を獲得!


「……E級武器の設計図!?」


秦先生が驚愕する。他の生徒の報酬は「便器栓」や「パズル」なのに、

陳風だけが売れる武器を手に入れたのだ。


「運が良すぎるんじゃないか?」

周囲の羨望と嫉妬の視線を浴びながら、陳風は苦笑する。

「まあ、E級職業の埋め合わせってことで」


【確率武器の現実】

素材を消費し、拳銃を製作する。

【製作完了!E級確率武器『普通の拳銃』】


【効果】:貫通力2倍化(発動確率0.02%)


(……5000発に1回か)


秦先生は拳銃を手にし、内心で結論を下した。

《役立たず》


生徒たちの嘲笑が飛ぶ。

「ははっ! 確率0.02%って……空から鳥の糞が口に入る確率以下だろ!」

「弾丸代だけで破産するわ」


しかし陳風は挙手する。

「秦先生、射撃場で試させてください」


教室が静まり返る。

(まさか……本当に効果を期待してる!?)

陳風は鉄鉱石を握りしめた。市価で1個100元もする高級品だ。学校の無料提供がなければ、とても手が出ない。


確率拳銃を携え、実戦訓練場へ向かう。


他のクラスメートは既に訓練を開始していた。戦闘職や補助職は広いスペースを必要とするため、教官の厳重な監視下で能力を試す。


「呉先生、秦先生の指示で来ました」


三年八組の戦闘職担当・呉剛(ウー・ガン)は眉をひそめた。(後方職のクセに射撃場に来るとは?)


「三番射撃台を使え」


陳風が拳銃を取り出すと、呉先生は飛び上がるほど驚いた。


「おい!何をする!?」

彼は瞬時に陳風の手首を押さえつける。


「これは私が製作した武器です」


「……お前が?」


呉剛は拳銃を検査し、目を丸くした。

「LV1で武器製作とは……運が良すぎる」

──だが、表情がすぐに曇る。「確率武器か。使い物にならん」


(E級職でも努力次第だ)

彼は陳風の肩を叩き、他の生徒の指導へ戻っていった。


【0.02%の奇跡】

標的を30mに設定し、弾丸を装填する。

(クラフターの特権:製作した武器の操作方法が直感的にわかる)


1発目:弾痕はごく浅い。(効果未発動)

6発目:


──叮!!


金属標的が激しく震え、システム通知が響く。

【確率発動!貫通効果2倍!】


標的を確認すると、小さな穴が空いていた。

(10発中1回の発動……理論値0.02%を大幅上回る)


陳風は拳銃を眺めながら思索する。

「他人が使っても同じ確率なのか?」


【開放訓練場での邂逅】

「陳風?後方職がここで何してるの?」


蘇沫熙の声に、周囲の視線が集まる。

しかし陳風は完全に無視し、砂地に円を描いていた顧思思(グー・スースー)に近づいた。


「弾丸1マガジン、試してくれ」


無言で頷く顧思思。彼女はB級職【ガンナー】──拳銃の適正はクラス最高だ。


一方、訓練場中央ではSS級職の王鑫(ワン・シン)がデモンストレーションを披露しようとしていた。


蘇沫熙は歯噛みする。

(あの陳風……以前なら必ず私に話しかけてきたのに)

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