ベテラン探索者 轟さん的なアレ

ベテラン探索者 轟さん的なアレ①

「よぉ!一二三ひふみじゃねーかっ!元気してたかこの野郎っ!」


 ダンジョンセンター内に響き渡るようなデカい声で名前を呼ばれる。

 知らない奴ならぶっ飛ばすけど、顔見知りなので挨拶をする。


「どぅも、とどろきさん、お久しぶりです」


 デカい声の人はとどろきさんといい、下の名前は知らない。

 みんなからは普通に『とどろきさん』と呼ばれている。

 ここ第三ダンジョンで活動するトップチームのリーダーで最高探索階層は40階層だそうだ。

 身体はゴツく、強面で普通なら近寄りがたい人なんだが、人懐っこく、面倒見が良く、少々お節介焼きな人柄が相まって不思議とみんなに好かれ、頼られる人だ。


 自分も毎日ダンジョンに潜るもんだから、とどろきさんが近寄ってきて、

「おい、坊主、毎日ダンジョンに潜ってるそうじゃねーか?金が必要なのか?いくらだ?俺もそんなに金持ちじゃねーけど、少しでも助けてやれるから俺にオマエを助けさせてはくれねーか?」なんて、自身の勝手な脳内設定を語り始めた時には吹き出しそうになった。


 そんな誤解も解けてからは、とどろきさんとはこうやってダンジョンセンターで会ったときは少しばかりの会話を楽しんだりしている。

 とどろきさんはトップチームらしく、いろんな情報を仕入れたり、ダンジョンの動向、他のチームの事などよく見ているし、よく知っている。


 その一方でとどろきさんは新人探索者の面倒も見ていて、彼ら新人が事故に遭わず、少しでも安全に探索出来るように講習会みたいなのも開いたりして更新の育成に力を入れている。


 見た目はゴツくイカついオッサンなのに、なんて細やかで優しいんだろうか。


一二三ひふみ、オメェ講師やってくんねーか?」


 は?このオッサン今、なんて言った?


「いや、新人講習の講師だよ。あと、面と向かってオッサンっていうなよー」


「あ、口に出てたか。

 てか、自分もまだまだ新人なんですけど?


 ボケるには早いですよ?」


「オマエって相変わらずナチュラルに人を傷つけてくるよな?」

とどろきさんならいいかな?って」


「よくねーよー!こう見えて俺ぁ傷つきやすいか弱い中年なんだよー」

「中年ってw自分の事オッサンだって認めればいいのに」


「やだよーっ!俺は可愛い中年男性なんだよー!



って、話が逸れたわ。


いやな、オマエさん、新人の癖に安定して大した怪我も追わずに毎日ダンジョンへ潜ってるじゃねーか?そのノウハウを他の新人たちにお裾分けしてやってくれねーかな?って。そう思うわけよ」


「んー」


「何?考えてくれんの?」


「めんどいから辞退します。もっと他に素敵な人がいるかと思います」


「つれねーこと言うなよー!」


 ここ第三ダンジョンセンターで駄々をこねる可愛い(自称)中年男性とそれをみて困っている10代と思わしき少年の姿が多数に目撃されたとか、なんとか。

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