ポーション的なアレ⑧
お兄さんの消息が絶たれて数日。なんだかモヤモヤした気分だが、今日もダンジョンへと潜る。前世でもこう言うことは多々ある。この間一緒に笑って酒を飲んでた奴が依頼の途中で魔物にやられて死んじまったり、くだらない喧嘩が行きすぎて死んじまったりだ。
あのお兄さんは変に生真面目な人なんで、自分と飯に行く約束を無かったことにする人じゃないし、何よりもあのお兄さんにこっそりかけた精神制御の魔法の残り香がダンジョンの中で途絶えていた。
途絶えたのは1層だ。スライムにやられた?いやいや、あのお兄さんがスライム如きにやられるのは考えにくい。よっぽど状況が不利だった?あのお兄さんなら状況が不利と見るや撤退するだろう。
誰かに殺された?
誰に?
そこまでお兄さんの事を知らないのでこれ以上は分からない。
ちなみに、ダンジョンで人を殺してもバレはしない。証拠も死体も全てダンジョンが吸収してくれるからだ。
なので、自分がわざわざ首を突っ込む事じゃないし、心をかき乱す必要なんてない。
前世でもあった事だ。よくあることだ。そう、よくあること。
なのに、なんで自分はこうまで悔しいのだろうか?悲しいのだろうか?
なんで、すぐに飯に行かなかったのだろうか?
お試しでも一緒にダンジョンへ潜らなかったのだろうか?
前世でも思ったはずだ。出会いを大事にして、後悔のないように、そいつにしてやれる事は出来る限りしてやろうって。明日会えなくなるかもしれない。だからしてやろうって。
生まれ変わっても成長してない自分を認識しながらも気持ちを切り替えようと試みる。
ダンジョンは遊び場じゃない。油断した奴から死んでいく。
だから自分は油断しない。
だから自分が尾行されていることにもちゃんと気がついている。
「なんのようですか?」
2階層の行き止まり地点まで誘導してから振り返り誰何する。
「オマエ、バカか?尾行に気付いたら逃げりゃあいいものを、わざわざ逃げ場のない場所を選びやがって」
現れたのは見たことのない奴らだった。
誰だ?コイツら?
「オマエがアイツを助けたんだろ?協会でアイツがオマエに礼をしてるのを見てたぜ?」
「はぁ」
お兄さんのことか?
お兄さんの口からは何も情報が漏れることは無かったが、まさかお兄さんの義理堅さがこんな形で牙を向くとは。
「どうやった?」
男たちの一人が聞いてきた。
「どうとは?」
「だからっ!どうやって!アイツを!治したか!って聞いてんだよ!」
いきなり激昂してくる男のうちの一人。沸点低すぎだろう?
どう答えたもんかと考えていると、別の男が口を開いた。
「オマエ、ポーション持ってたんだろ?どうやってオマエみたいな小僧が手に入れた?」
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