ポーション的なアレ⑦

九十九つくも君!この間はありがとう!」


 そう声をかけてくるのは先日ダンジョンで助けたお兄さんだ。

 あれから数日、協会で顔を合わすこともあり、二、三言葉を交わすこともあるのだが、毎回こうやって感謝を伝えてくる。真面目かっ!


「すいません、目立ちたくないのでその辺で勘弁してください」


 注目を集めるのはゴメン被るのでお兄さんに再度釘を刺しておく。


「あぁ、すまないね。今日も一人かい?ハハっ僕もだよ。アイツらとは縁を切った。またいつ裏切られるかわからない奴らと一緒にダンジョンには入れないからね」


 お兄さんはお兄さんで色々あったようだが、自分はあえて関知してない。所詮他人事だしね。


「自分は無理をせず安全マージンをたっぷり取って探索してますから大丈ですが、お兄さんはいずれパーティを作るかパーティーに加入するんでしょ?」


「出来れば君と一緒に探索したいと考えているんだけどねぇ」


「それはこの間もお断りしたでしょ?新しいパーティーメンバーを見極めるコツですが、一緒に飯食って、酒を飲むことですよ」


「ん?それは何故だい?まさか同じ釜の飯を食うことで連帯感をってことじゃないだろう?」


「もちろん。ただ食って、飲むだけじゃないですよ。観察するんです。飯の食い方とか、酒の飲み方とか。細かい所作を観察するんです。そしてどんなにくだらない馬鹿話でも真面目に馬鹿話をするんです。そしたら『コイツなら信用できる』って思う人が出てきますからその縁を大事にすればいいんですよ」


「んー分かるような、分からんような」


「見極めに時間はかかると思いますが、そうやって冒険者、失礼、探索者は仲間ってやつを見つけていくんだと思いますよ。ただまぁ、16歳の子供の言うことなんで、そんな話もあった程度で心に留めておいてください」


「そうか。ならば、今度僕と一緒に飯でも食いに行こう!」


 その瞬間、受付カウンターから鋭い視線が飛んできたが気づかないふりをして、


「酒は未成年なんで無理ですが、飯なら前もって言ってくれれば時間を作りますよ」


「おぉ!そうか。じゃー、また連絡するよ」


 そう言ってお兄さんと別れ、自分は買取カウンターでまたお姉さんに捕まった。


「あの男は誰?私より先にご飯に行くって本当?私よりあんな男を取るの?私とはどうなるの?」


 あれ?お姉さんは自分の彼女かな?しかも自分を男色の人みたいに扱ってるけど、それって失礼すぎない?








 それからお兄さんから食事の連絡が来ることはなく、お兄さんの消息がたった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る