ポーション的なアレ⑥
めんどくさい。
冷たく聞こえるが、自分でもそう思う。
冒険者っていうか、今世では探索者か。
探索者ってのは生きるも死ぬも自己責任だと思うし、謝礼の為にわざわざ2層まで送り届ける事に労力を使うのが面倒臭い。
目の前のお兄さんは脂汗を流しながら自分に助けて欲しいと懇願してくる。
しかも、お金がないので謝礼はすぐには払えないけど、分割でお願いしますとか・
いや、いや、なんで知らない人を助けるために自分が動かないといけないんだよ。しかも、分割でってとか考えている自分がいる。
なので、自分は屈み込んでお兄さんと目を合わせて問いかける。
「謝礼はいらないので、今からする事を内緒にできますか?」
嘘は見逃さない。お兄さんの心の中を探るように目線を合わせる。
「わ、わかった。何があっても口を割らない。約束する」
こっそり精神制御の魔法をかけて口を割らないようにしてからペットボトルを差し出す。
「これ、飲んでください。自分が作ったポーションです」
自作ってところが引っかかったのだろうか、躊躇するお兄さんだったが、意を決してポーションに口をつけた。
「う、うまい。ポーションって不味いと聞いていたけど、これはさっぱりして、凄く飲みやすい。これはサウナでたっぷり汗をかいた後に一気に飲んだら美味い奴だな!」
ポーションを飲むことで抉れた右ふくらはぎの肉が瞬時に再生を始めていく。
これはこれでなかなか普段見れない場面だな。
「え!?傷がもう治っている!?」
そこには破れたズボンから覗くお兄さんの足があった。大学生(男)の生足。誰得だよ?
「ありがとう!本当にありがとう!もうダメかと思ったんだ!」
男に縋り付かれて泣かれる光景がしばらく続いた。早く終わんねーかなー。
探索の続きをしたいんだけどなー。
流石に口には出さなかったが、自分はそう思いながらしばらくお兄さんの感謝を受けていた。
「大学で知り合った奴らなんだよ」
お兄さんの独白は続く。早く終わんねーかなー(2回目)。
「まさか俺を囮にするなんて……!」
早く終わんねーかなー(3回目)。
「貴重なポーションまで頂いて本当にありがとう!このことは誰にも言わない!約束するよ!」
1層への階段まで送ってやって、やっとお兄さんは去っていった。1層のスライムなら一人でも大丈夫だとのことだ。
面倒臭い、自己責任なんだかんだ言いながら結局お人好しなところは前世と変わんないな。と一人で笑ってしまった。
さてと、無駄に時間を使ってしまったし、続きをやろうか。
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