ポーション的なアレ⑤

〜side ダンジョンセンター受付のお姉さん〜


 あぁ、私の可愛い一二三ひふみきゅん。

 売店で販売しているマップの正否をわざわざ確認する真面目さ。

 決して無理をせず、毎日決まった時間に探索へ行き、決まった時間に帰ってくる安定した探索をする一二三ひふみきゅん。

 かと思えば土曜と日曜はしっかりと休む一二三ひふみきゅん。

 礼儀正しく穏やかな一二三ひふみきゅん。

 彼との新婚生活はどんなのだろう。

 規則正しい生活リズムに、穏やかな愛が溢れる家庭が築ける事だろう。

 早く私を迎えにきてくれないかなぁ……



〜side 一二三ひふみ


 最近、ダンジョンセンターの受付のお姉さんの目がヤバイ。

 なんか嫌な予感をひしひしと感じる。しかし、何故か自分が受付に向かうとあのお姉さんが対応してくる。別の列に並んでもだ。いつの間にかあのお姉さんが陣取っている。完全にロックオンされたようだが、自分はあえて気付かないようにして事務的に対応する。向こうも仕事だ。ならばこちらもビジネスライクに行こうじゃないか。


 そんなどうでもいい攻防を水面下で行いながらもダンジョン探索は進んでいく。

 一応、土日祝は探索はお休みにしている。

 にのまえさん家の人達と買い物へ行ったり、遊びに行ったりするためだ。

 にのまえさんたちとの縁は大事にしたいし、何より、二一にかがうるさい。

 あれだ、たまにアイツは漫画とか小説で出てくる暴君的な姉キャラになる。

 要はワガママを言って自分に甘えているのだろう。無駄に人生経験が長いから知っているんだ。

 彼女も誕生日が来れば探索者資格を取ると言っていたから、二一にかと一緒にダンジョンへ入る事になるんだろう。

 逆に他のやつとダンジョンへ入るってなったら心配で自分がストーキングしてしまいそうだ。それはLOVEでもLIKEでもなく純粋な家族愛だ。何処の馬の骨かもわからないような奴にウチの二一にかは任せられない。




 2層への探索を始めて3日目、探索は順調。マップも順調だ。淡々と探索していると索敵に他の探索者の反応があった。その探索者は動かず、生命反応が小さくなっている。多分、負傷しているのだろう。

 しかし、その探索者以外の反応がない。ソロで潜っているのか?自殺志願者だろうか?おっと、ブーメランが飛んできた。



「大丈夫ですか?」


 近寄り声をかけてみる。近くにモンスターの反応以外ないので罠の可能性はない。

 その探索者は右足のふくらはぎ付近を食いちぎられており、出血も尋常じゃないようだ。

 かろうじて右足の根本を布で縛り止血をしているようだが、出血多量で死ぬのを少しだけ遅らせるだけだろう。


 この場合、探索者協会ではダンジョンへ入るのは全て自己責任としながらも、出来るだけ探索者同士助け合いましょうと謳っている。

 助けるとして、ここから地上まで送り届けると助けられた人間は助けてくれた人間に謝礼を支払わなければならない。

 相場としては、1層当たり10万円。今回だと2層からなので20万円だ。

 見た目は大学生くらいの少しチャラめのお兄さん。

 装備は自分と同じ初心者丸出しだ。


 話を聞けばパーティーで潜っていたが、野犬が強すぎて他のメンバーがお兄さんを囮にして逃走。一人残されたお兄さんも逃走しようとしたが、右足を噛まれた。

 右足を噛まれたことで恐怖に囚われたお兄さんの剣が運よく野犬の頭や胴体にヒットして野犬の討伐に成功したそうだ。

 で、そのまま止血をしたところで自分が来たってわけだ。

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