第7話



 未来が見えないんじゃない。


 貴方との未来だけが見えるのだ、と当時ミルグレンは自分でもちょっと大袈裟かな……と笑いながらも、かつては兄のように慕ったメリクという人間を、一人の男性として愛するようになっていた。


 後に思う。


(あのとき、私には未来が見えていた)



 ――メリク様はどんな未来を見ていたのだろう?



 他の人のように目先の事ではなく、

 いつもどこか遠く、色んな人の事を思いやって、

 考えていたあの人は、どんな未来を描いていたのだろう?


(私と同じものでなかったのは確かだけれど、

 それでもメリク様にも、願う未来は確かにあったはずなのだから)


 それは何だったのだろう?


 そしてもし私が頑張れば、叶えられる事ならそれを叶えてあげたかった、と思う。


 メリクがいなくなったあと、不意にある日そんな風に思う事が出来た時、

 ミルグレンは、メリクもきっと、彼自身が側にいるということ以外、叶えられるミルグレンの願いは全て叶えてやりたいと、そう思ってくれていたんだと信じる事が出来るようになった。


 だからあの人は、私にあんなに優しくしてくれたんだ。

 そしてだから、私はあの人に惹かれた。


 私とメリク様は一緒にはなれなかったけど、

 お互いの不幸を願った事は一度も無い。





(過去も、今も、これから未来も。

 あなたはこの世で一番大好きな人)




【終】


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その翡翠き彷徨い【第43話 秋の情景】 七海ポルカ @reeeeeen13

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