第3話 七島香奈

●七島香奈(side)


 私は大変な所を助けられてから、一人で帰っていた。


「あの人って……如月先輩……だよね?」


 如月星斗、その男性は私の中では絶対に関わってはいけない人って言う印象だった。

 兄さんにも言われていたし、周りの人も口をそろえてそう言っていたしね……

 噂によれば、暴力を簡単に振るうし、女の子をとっかえひっかえしているととかって噂だ。実際に私の友達でも塾の帰りとかに、如月先輩が女の子と遊んでいるのを見たって子もいたしね。

 それに人の事を見下して、人の気持ちは全く考えない……そう聞いていた。


 まぁ、一部の人はそんなところがカッコいい!とか変な子も居たけどね……


 如月先輩は義兄さんたちと同じ学年だけど、中学の頃は余り学校に来ていなかったみたいで、義兄さんたちも顔を見た事は少ないって言ってたっけ?同じクラスになった事が無いって事もあるんだろうけどね。


 私の勘違いで人違い……そんな訳はないと思う。だってあの顔を忘れるわけがない。

 如月先輩は顔だけは超カッコいい……皆そう言っている。

 ただ怖いから誰も近づかないけどね。私も当然カッコいいから好きになるって事もないので、今まで近付きたいとかは全く思っていなかった。


 それでも私は一度だけ顔を見た事があったけど、絶対にあの人は如月先輩だ。

 最初にぶつかった時は凄く怖くて言葉に詰まったけど……


「もしかしたら思ったよりも良い人なのかも……」


 如月先輩はあの男が襲い掛かって来た時にしれっと私を引き寄せて守ってくれて、男をあっと言う間に倒してしまった。


 それから警察が来てからも私を気にかけてくれていしね。

 私の事を見捨てても何も文句を言える状況ではなかったのに……それに如月先輩は私の事は知らないだろうし……


 はっきり言ってしまうと、あの時の如月先輩の事は流石にかっこよく見えたな……


 当然顔がカッコいい事は知っていたしそこは別にどうでもよくて、カッコよく見えたのは行動がだ。

 私を引き寄せてくれた時は、守ってくれているんだと思って安心したし、それにちょっとドキドキした。私があんなふうに男子に守って貰ったのは今日が初めてって事もあるだろうけど……

 どちにしろ産まれて始めて男性に対して初めてドキドキしたと思う。

 それを証拠に最後の方は如月先輩の顔を見る事が出来なかったしね……


 私は男の子を好きになった事はない……自分で言うのもなんだけど、私は男子の友達も多いけどだ。

 ちょっととはいえ男性に対してドキドキしたのは初めて……もしかしたらこれが恋かも……とかも思ったけど実際の所どうなのか分からない……


 それに噂が本当なのかは知らないけど、今日の如月先輩は優しい声だった。

 警察と話していた時も私をフォローしてくれたし、慌てている私を優しく見守ってくれていた。

 私の目にはとてもじゃないけど如月先輩が悪い人には見えなかった。


 恋愛とはか二の次にしても、怖い噂が多いのも分かっているけど……


「もっと如月先輩の事……知りたいな……」


 恋心云々は一旦置いておいても、ただただそう思った私は気付けばそう呟いていた。

 


 お父さんとお母さんは今日は仕事で帰りが遅いとの事で、今は義兄さんと二人で夜ご飯を食べて居た。

 ていうかこの二カ月はずっとこんな感じだ。

 どうやら一緒に働いている二人の会社で凄く大切なプロジェクトがあるらしい。

 朝私たちと同じくらいの時間に出て行って、毎日23時くらいに帰って来る二人は凄く疲れているので、本当に感謝している。


「香奈?どうしたんんだ?」

「え、え?どうしたの兄さん?」

「なんか今日の香奈すげーぼーっとしてるけど、何か考え事か?」

「そ、そんなことないって!」


 私は如月先輩の事を考えていてぼーとしていたみたいで、義兄さんに心配された。

 私はちょっと焦ってそんな返事になってしまった。


「ほんとに?」

「本当だよ!」

「そう?なら良いけどさ」


 私は誤魔化せた事に安堵した。

 義兄さんに如月先輩には近づいちゃダメという事は、何度も聞いてたことなので、正直に言っちゃうとめんどくさい事になるって事は分かり切っているしね……


「どうしたんだ?やっぱり何かあるんじゃ?」

「う、ううん。そんなことないって。それより兄さんは明日から高校生だね」

「んーまぁ、そうだな……」

「美玖ねぇと咲ねぇも楽しみにしてたしね」


 美玖ねぇと咲ねぇとは、私と義兄さんとは小学生の頃からの付き合いである、幼馴染ってやつだ。

 二人はすっごく可愛くて、女の私でも惚れちゃうくらいの美少女。

 私の事を凄く可愛がってくれている二人の事が、私は凄く大好きだ。


「と言っても何も変わらないけどなー。俺と誠也は別に楽しみでもなんでもないね」


 誠也さんとは、義兄さんが中学生の頃に仲良くなった瀬戸宮誠也せとみやせいやさんだ。

 良くお家に遊びに来ていた事もあり、私もそこそこ仲が良い人。


「まぁ、そうかもね。でもそうなると私が美玖ねぇと咲ねぇと一緒に、昼食を取り辛くなるなー」

「三人は良く一緒に食べてたもんな。てかさ、そんな事よりも次の休みに一緒にゲームセンターに行こうぜ!」

「また?」

「またって、最近は一緒に行ってなかっただろ?」

「まぁ、気分が向いたらね」

「っち!それじゃあまた誠也と行くか……」

「そうしなよ」

「つれないなー。じゃ俺は部屋に戻ってゲームでもするわ。片付けよろしくなー」


 そう言って義兄さんは部屋に戻っていった。


「全く義兄さんは高校生になっても変わらないな……」


 私は義兄さんの事を家族として大好きなんだけど、もうちょっと家事を手伝ったりしてくれても良いじゃん……とは何時も思っている。

 私たちの両親は仕事の都合上最近は夜遅くに帰ってくるけど、朝ご飯の用意はお母さんがしてくれるって言っているけど、二人が疲れて帰ってきている事を知っている私は私がやるって言って、作らせて貰っている。

 それに片付けや掃除、洗濯などは基本的に私一人でやる形になっているしね……

 

 私ばかりしているから、義兄さんもしてくれればいいのに……そう思った事は少なくはない。


「まぁ、慣れたから良いんだけどね」


 それに後一カ月もしたら、お母さんたちの仕事も落ち着くらしいから、二人もしっかり定時にはかえって来れるようになるらしいからね。


 私はそんな事を思いながら、洗い物を進めて行った。



 ――私はご飯を食べてお風呂に入ってから部屋で寝転んでいた。


「恋ってどんな気持ちなんろう……」


 お風呂に入っている時私は、ずっとそんな事を考えていた。

 私が如月先輩に思っている気持ちが恋なのかを知りたい。


 流石に義兄さんに聞くのは無理だし、美玖ねぇや咲ねぇに聞くのもちょっと無理かもしれない。だって恥ずかしじゃん……

 

「そうだ!調べてみよう!」


 私はそう思ってスマホを掴んでさわり始めた。


 どう検索するか迷ったけど"人を好きになるってどんな気持ち"そう検索をしてみた。


 私はそれから複数の人の意見を見た。


 "その人を想うと胸が苦しくなってドキドキする"


 ちょっとドキドキはする感じはするけど、苦しくはなっていないからどうなんだろう?


 "その人の事をふと思い出してしまって考えてしまう"


 これは……当てはまってるかも?さっきもそうだけど如月先輩の事を考えちゃうし。


 "その人の事を目で追ってしまう"


 それはまだ分からない……


 "その人と話すとき恥ずかしくて目を合わせられない"


 これも当てはまってるのかも、助けて貰った後は恥ずかしくて顔を見れなかったし。でもあの時は緊急だったし、明日からはどうなんだろうか?


 "その人の事をもっと知りたい、その人ともっと一緒に居たいって思う"


 一緒に居たいかは分からないけど、知りたいとは思ってるかな……


 "その人とイチャイチャしたいと思うかどうか"


 イチャイチャ……そんな事はまだ想像できない。


「……全然分からないや」


 私はそう呟いてスマホをベッドの上にかるく放り投げた。

 調べても当てはまるのとそうじゃないので半分半分って感じだ。

 この気持ちが恋なのかは結局分からない。


「でもそんなに急ぐ事でもないのかな?」


 好きって思っても今すぐに何か出来る訳でもない。

 それだったらゆっくりと気持ちの整理をしていけばいい。

 噂の事だったり分からない事が多すぎるしね……


 でもどうやって如月先輩に近づけばいいんだろう……

 一応義兄さん達に会いに行くために高校生の校舎にお邪魔するつもりでは居たけど、義兄さん達とクラスが違ったら会えないかも知れない。


 私としては好きかどうかは分からない。でも好き云々は除外しても先輩の事をもっと知りたいのは間違いない……噂についてもどうなのか気になるし、今日の如月先輩を見るに誇張されているだけなんじゃないかとも思える。


「…………もういいや。とりあえず寝ちゃお!」

 

 これ以上考えても頭が痛くなりそうだしね。

 私はそんな事を思いながら目を瞑った。

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