第2話 年下ヒロインと出会う
「何しよっかな……」
俺は昼ご飯を外食で済ませた後、当てもなくぶらぶらとしていた。
家に居ても特にする事もないし、かと言って別に外でもする事はない。
一応ネットやゲームで暇を潰す事も出来るけど……
「まぁ、暇だしもうちょっとぶらぶらしてるか……」
そんな時だった……
(ドン!)
曲がり角で誰かが勢いよく走って来て俺にぶつかった。
「す、すいませ……ん……」
ぶつかってきた子は、息を切らしながら謝待ってきた。
そして俺の顔を見て驚いていたが、実は俺も表情には出さないようにしていたけど、かなり驚いていた。
おいおいマジかよ……俺はこの子を知っている。
この子の名前は
身長は157cm。目がぱっちりしていて、黒髪ショートの美少女。
性格は明るくて元気な子で、凄く優しい子。
それから運動が得意で勉強は苦手。
俺がここまで知っている理由は、如月星斗が知り合いだった訳では当然ない。
俺が知っている理由……それはこの子がヒロインの一人だからなんだ。
攻略対象のヒロインは全員で三人。
そして主人公とヒロイン達は幼馴染で、なんだったらこの子は主人公の義妹にあたる、義妹ヒロインだ。
てか香奈……すげービビってるじゃん……顔真っ青だしさ。
これって、俺にビビってるんだよな?
1学年下だけど、同じ学校に通ってたし俺の事を知ってて当然と考えてら、これが当然の反応だよな。
どうしようか……別に関わらないとも思ってなかったけど、これ以上悪い印象を与える訳にもいかないもんな。
それに今ここで香奈に心象悪く思われると、今後にもっとめんどくさくなるかも知れないしな。
そんな事を思った俺は、とりあえず返事をする事にした。
「大丈夫だから気にするな……」
「おい!!待てよクソガキが!!!」
俺がそんな返事をしていると、香奈が走って来た方向からそんな怒鳴り声が聞こえて来た。
「あ……」
香奈はその声を聞くと更に顔を真っ青にして、今度は手や足まで震えていた。
そしてそんな事を言って来た男の事は、当然俺は全く知らない男だけど……あれが香奈の知り合いな訳もないよな?
明らかに柄の悪い男。恐らく大学生くらいだろうから、そんな奴が知り合いだとは思えない。
ていうか知り合いだったらここまで怯えてなんかないか。
なんで香奈はそんな男に追われているんだろうか???
理由は分からないが俺は取り敢えず声をかけてみる事にした。
だって余りにも酷い顔色だったし、もし危ない目に合っているんだとしたら、到底無視も出来ないからな。
「なぁ?すげー顔が青いけど大丈夫か?」
「……うぅ」
どうやら香奈は俺の言葉に返事する余裕はなさそうで、ひどく怯えている状態だ。
これはどう考えたって大丈夫じゃないな。
「くそ!!やっと追いついたぞ!!」
男がそう言うと香奈は更に震えが大きくなった。
良く分からないけど、この男から逃げてたって事は間違いなさそうだな。
「クソが!!ぶつかっておいて逃げてんじゃねーよ!!!どうせ逃げ切れねーんだからさ!!!」
「す、すいません……」
「すいませんじゃねーだろーが!」
俺はそんな会話を聞いて口をはさむことにした。
香奈は性格的に人を怒らせる性格ではないので、あの男が難癖をつけて突っかかって来ているって事はなんとなく想像できる。
「ちょっと良いか?ぶつかったって言ってるけど、謝ってるんだし許してあげても良いんじゃないか?」
「はぁ?お前はだれだよ!」
「どうでも良いだろそんな事はさ……ていうか謝ってるんだし許せばいいんじゃない?ただぶつかっただけだったらそんなに怒る事じゃないんじゃないか?」
「ふざけんじゃねーよ!ぶつかって来たんだから責任を取って体で払って貰わねーとこっちの気が収まらねーんだよ!!!」
……は?何言ってんだこいつ?
俺は余りにも意味の分からない事を言う男の言葉に、一瞬耳を疑った。
確かに香奈が可愛い事には間違いはないけど、言っている事は頭がバグっているとしか思えない。
大体何をどうしたらぶつかっただけで体で払うってなるんだよ……そこは百歩譲って金じゃねーのかよ……って金も意味わからないけど。
「あんた言ってる事分かってるのか?こんな場所でさ……」
「良いから黙ってそいつをよこせ!!!」
「渡す訳ないだろ?」
「てめぇには関係ないだろうが!!!」
「関係なくても普通助けるだろ?どう考えてもこの子が被害者だし」
「うるせぇー!!!」
駄目だこいつ……全然話が通じない。
男は聞く耳を持たずに俺に殴り掛かって来た。
こいつとは話し合いは無理そうだ。
その瞬間俺は香奈を引き寄せてから後ろに隠した。
男は迷わず全力で殴り掛かってきたので、喧嘩慣れは多少してそうだけど、ただそれだけだ。
全然下半身を使えていないし、体感もぶれぶれ。しかもスピードも大したことがない。格闘技をやっていた俺からしたらただの一般人となんら変わりがない。
俺はその拳を軽く避けると、男を転ばせて行動を制限して拘束した。
「いだ!!!くそ!!!離せよ!!!」
「大人しくしてろよ……」
「くそっ……」
そう言って少し力を込めて押さえつけると男は大人しくなった。
まぁ、骨が折れる直前まで力を込めたから当然だ。下手に暴れるとかえってまずい事になるって気付いたんだろう。
それから俺は香奈の方を見た。
まだ顔は青いが香奈は凄く驚いて……きょとんとしていた。
「なぁ?」
俺が話しかけても返事は無い。
「聞こえて無いのか?」
「あ!な、な、なんでしょうか!」
いや、慌てすぎだろ……俺が怖いのは分かるけどさ。
そんなに慌てなくても……って思うけどこの状況だと無理な話か。
「取り敢えず警察に連絡してもらえる?俺は手が離せないからさ」
「は、はい!」
香奈はそう返事をしてから警察を呼んだ――
◇
――それから暫くして俺たちは解放された。
幸いと言って良いか、警察の事情聴取は他の目撃者が撮影をしていた事もあって、その映像を提供してくれたので正当防衛としてすぐに終わった。
警察と話している香奈の話を聞いて、一応何があったのかを説明すると……
歩いているとあの男が後ろからぶつかって来て、難癖をつけられたと。
そして彼女は謝ったけど許して貰えずに、体を払えば許してやるよって言われてながら腕を掴まれた事もあり、怖くなって逃げ出したと。
それで俺にぶつかってって感じだ。
てか、改めて聞いても体で払えって意味分からな過ぎるだろ。
それにもしかしたら俺とぶつからなかったら、逃げきれていた可能性も……
とかそんな事も思いはしたけど、香奈は運動が得意と言ってもまだ中学生、相手は男の大学生なんだ、逃げ切る事は簡単じゃなかっただろう。
「大丈夫だったか?」
香奈は時間が空いたからか、今はかなり落ち着いていた。
「は、はい……あ、ありがとうございました」
「それは良いけど……ちゃんと帰れるか?」
「は、はい……大丈夫です」
香奈は相変わらず俯きながらそう言っている。
まぁ、助けたとはいえ流石に顔を見るのは怖いよな。
この様子だと俺はさっさと帰った方が良いなこれ……送ってあげるって言いたいところだけど、ここまで怖がられたらそうも行かなそうだ。
ていうか確か香奈の家はここからだとかなり近いはずだしな。
「それじゃあ気を付けてな」
「……」
俺がそう言うと香奈は無言で頷いた。
そして俺はその場を去った。
◇
「まさか義妹ヒロインと最初に会うとはな……」
主人公の義妹の七島香奈。
香奈は保育園の頃に母親の再婚によって、主人公の義妹となった子。
香奈も同じ一貫校なので、いずれは会うと思っていたが、こんなに唐突になるとは思わなかった。
ていうか、間近で見たら本当に可愛い。
流石はヒロインとしか言いようのない可愛さだった。
明日には他のヒロインとも会えるし、ちょっと楽しみだな。
「それにしても入学式か……」
明日はとうとう高校の入学式でゲームが始まる時だ。
俺の悪評を今から覆す……無理に決まってる。
そんな事は不可能と言って良いと思っている。そのくらい如月星斗は好き勝手やっていたからな。
そしてそんな俺が友達を作るなんて事はほぼ不可能。
てことはぼっちの学校生活になる事はほぼ確定……
まぁ、なるようになるだろう……一人には慣れても居るしな。
とはいえ友達は出来なくとも、時間はかかるだろうけど、皆から嫌われている現状はどうにかしたいかもな。
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