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「つまり、死んだはずの淵元奈々を称する女が現れたと。しかし病死では怨恨の線は薄そうだが」
「そうなんですよそこが謎で……特に爺さんは奈々を含めた淵元家を救おうとしていた訳で、狙われるのはおかしい。狙うなら結果的に淵元家との縁を切っている俺のはず」
これには警察官三人も頷いた。リスクとリターンが釣り合わない。犯人の行動が迷走しているのだ。
「そう言えば、修理後のかずら橋を渡った女を見ていませんか、その女が淵元奈々なんですが……」
唯一の淵元奈々の目撃者である鼎が口を開く。警察官が奈々の顔を見ているのなら里の中を探す事も出来るはずだ。
「う〜んその質問に対する答えは、『誰もいない』だな。かずら橋が通れるようになってから両側には常に警察官を配置していたし、誰も通すなと指示が出ていた。わざわざ命令違反はしない。しかも警察官二人が揃って命令違反なんて考えられないな。それに怪我人とかでやむを得ず人を通す場合は無線で署に確認するからね。そんな無線は流れてなかったから間違い無い」
「う、」
奥田の答えに鼎は、黙った。では奈々は何処に行ったのか……。
「
本山が口を開く。警察は遺体の搬送に車両を使用するため、ぎりぎりまで
「だとすると、僕が二人から事件に巻き込まれたと連絡を受けたのが……」
「110番して警察を待っている間。九時四十八分」
みむろがスルリと答える。
「そこから三十分で買い出しし直接かずら橋に向かったから約二時間半てところで午後一時前後でかずら橋に到着。そこから
腑に落ちない様子で鼎が計算すると、
「そうだな俺が、兎美……の死体を発見したのは……ドアを開けるのに手こずって二時くらいになっていたはず……。う〜んマラソン選手並みに走って
一成も鼎の思案をフォローする。二人とも無意識のうちに鼎のカーディガンの件は伏せた。
「まあ、探偵さんが好きな言葉で言えば淵元奈々は時間と扉、二つの密室に守られているわけだ……」
曽我の言葉で鼎たちと警察の情報交換は閉幕したのだった。
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