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警察官達との情報交換を終えた鼎達だが、結局のところ有力な情報ば無く、途方に暮れていた。警察が帰った後、三人は応接室のソファに座る。一度座ると座面が沈み込み立ち上がりたく無くなるソファだ。鼎は勧められた席に座っているのだが落ち着かない。今なら橋部の親族が別邸に集まっているため三人で話が出来る。
「鼎、せっかく来てもらったが、みむろちゃんを連れて帰ってくれるか」
一成が鼎を見て話す。但し悩みながらだ、自分の行動が正解だと言う確信はない。
「大丈夫なのか?さっきの話だとお前がターゲットになる可能性が高いのだろう」
力及ばすとも、人数が多ければ犯人は手を出しづらくなるはずだ。一成が家の用事で動けないならば護衛は多い方が良い。鼎は弾除けくらいにはなるぞ、と一成に迫る。
「それも分かる……が、ターゲット俺一人なら信頼出来る人間で周囲を固めれば何とかなる。……部外者はここでは目立つ、それに……」
事件をもみ消すために部外者の二人が里の住人から口封じに狙われるかもしれない。一成は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。閉鎖的な里だが一成の故郷だ。里の恥を鼎に聞かせたくない。
「…………」
ここで、二人は押し黙る。お互いの言いたいことがなまじ分かるため、次の言葉がでない。
「どうせ、
黙った二人の間にみむろが割り込む。どうせ一成の車も移動させないといけない。何度も送り迎えを頼むより一度で終わらせた方が合理的だ。鼎ももう一度かずら橋まで歩きたくないし、みむろにも歩かせたくない。
「そうだな、それに少しはおもてなしをしないと橋部の
「彼氏面、すんな」
優しい眼でみむろを見ていた一成に、みむろが冷たい視線を送る。仕事は仕事、役作りは役作り、三人の時は別だ。それでもすぐ表情を緩めるみむろ。
「怖っ。案外厳しいんだな」
視線を受けた一成は目を逸らす。
「久しぶりに見たなその表情。前はそれがデフォだったよな」
鼎が昔を振り返る。そのくらい高校時代のみむろは荒れていた、いややさぐれていたのだ。優秀な父親との比較され、常に卑下されていたため、何事にも気力が無く斜に構えていた。
「昔の事は、なし」
みむろが照れて、鼎の口を塞ぐ。体格の違いから後ろから抱き着く様になっているがそれは恥ずかしく無いようだ。
「分かった、分かった」
鼎に言わせれば、みむろとみむろの父、祐人はよく似ている。割と弱点が多く、と言うよりは得意な事以外は全て苦手で、みむろの母である真由がフォローしなければ研究者としても大成しなかったのでは無いか……。何なら私生活のだらしなさはみむろを遥かに凌駕していた。みむろも誰かのサポートがあれば研究者としても成功しそうだ。だが今の鼎にはみむろのサポート役を買って出るだけの覚悟はまだ無い。
「よし、そうと決まれば、茶の準備をさせる。お菓子作りが得意な奴もいるし別邸に連絡しよう」
一成は携帯電話で別邸に連絡した。
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