最終話 もう他の誰も、いらない
朝の光が、カーテン越しに部屋を照らす。
まるで誰にも邪魔されないように、世界はゆっくりと目を覚ましていく。
笹原桐斗は、まだ布団の中にいた。
裸の背中にシーツがふれている。
隣には、一ノ瀬仁。
眠っているのか、目を閉じたまま、自分の肩に額を乗せている。
——昨夜のことを、夢だとは思わなかった。
夢にするには、すべてがあまりにも“本物”すぎた。
最初は触れるだけだった。
でも、キスが深くなって、
熱が高まって、
気づいたときには、全部を許していた。
指も、唇も、体も、奥まで。
そして、感情まで。
「……起きてんだろ」
低く囁くと、仁がゆっくりと目を開けた。
「……ん、あぁ。おはよ」
声がいつもより穏やかだった。
その一言で、胸が少しだけきゅっと締まる。
「……あんた、変わったな」
「どこが?」
「全部。
昨日までだったら、終わったらすぐ女の名前忘れて寝てただろ」
仁は小さく笑った。
「そうだな。……でも、お前の名前だけは忘れられなかった」
「……バカ」
桐斗が目を伏せると、仁がゆっくりと体を起こし、
もう一度、静かに抱きしめた。
「なあ、桐斗。
もう誰も抱かねぇから。……お前だけで、いい」
「……簡単に言うなよ。
俺は疑うし、嫉妬するし、束縛もするし、性格も終わってる」
「全部知ってる。
それでも、お前がいい」
桐斗は黙って仁の胸に額を押しつけた。
もう、毒舌も皮肉も出てこなかった。
触れるだけで、わかった。
——このぬくもりに勝るものなんて、もうどこにもない。
◇ ◇ ◇
その日から、仁の周囲には女の影が消えた。
教室でも、廊下でも、誰かを抱く姿はもうない。
代わりにあるのは、隣の席にいる毒舌の天使だけだった。
『開幕!性欲魔人と毒舌天使のバトル』 漣 @mantonyao
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