【ゐ】 ライオンとゾウ
●【ゐ】 ライオンとゾウ
桃太郎は ライオンと一緒に
ゾウの背中に乗って
ゆっくり ゆっくり揺られながら
先へ進みました。
その揺れが
あまりにも心地よくて
桃太郎と ライオンは
眠ってしまいました。
――数時間後
目覚めると
そこは サーカス場でした。
なんと ゾウは
サーカスから逃げてきた
ゾウだったのです。
桃太郎たちが 眠っている間に
サーカスの団長に捕まり
連れ戻されてしまったのです。
桃太郎と ライオンは
団長に 事情を説明して
帰ろうとしました。
しかし……
このサーカス団は
今 倒産寸前の大ピンチ状態でした。
資金難の影響で
団員が 辞めていってしまったのです。
今では
ピエロも 綱渡りの人も
空中ブランコの人も いません。
そんな状況だったため
日々の食事も少なくて
ゾウは 空腹のあまり
逃げ出してしまったのでした。
団長が
そんな状況でも
サーカス団を辞めないのは
楽しみにしている子どもたちが
いるからでした。
生きづらい世の中で
せめて 子どもたちには
笑顔でいてほしい……
そんな 団長の想いを知った
桃太郎と ライオンは
少しだけ 協力することにしました。
桃太郎は
身体能力を活かして
綱渡りと 空中ブランコと
あと 得意の剣術を活かした
居合切りを 披露することにしました。
ライオンは
火の輪くぐりと 大玉乗りと
あとは ピエロに扮して
子どもたちを 背中に乗せて
駆け回るという演目を
披露することになりました。
桃太郎と ライオンは
少ない時間で 練習をおこない
ほとんど ぶっつけで
本番に挑むことになりました。
――夜の公演終了後
お客さんたちの拍手が
十分 ニ十分経っても
鳴り止みませんでした。
団長は
桃太郎と ライオンに
何度も何度も 感謝しました。
そして……
「我々と一緒に
このサーカス団で
働いてくれないか?
子どもたちの笑顔のために……
頼むっ!」
団長は
地面に頭が突き刺さってしまうくらいに
深く深く土下座をしました。
桃太郎と ライオンは
とても悩みました。
ライオンは
「桃太郎……
おれは ここに残るぜ。
おれ…… 初めてだったんだ。
子どもたちに 怖がられなかったのは。
あの子どもたちの笑顔を守るために
おれ ここで戦ってみようと思う」
と 言いました。
桃太郎は
ライオンの決断を尊重し
反対しませんでした。
でも 桃太郎は
鬼退治という目的があるため
団長の頼みを
断らなくてはなりませんでした。
こうして 桃太郎は
一人で鬼ヶ島を目指すことにしました。
ですが……
お客さんたちからの あたたかい拍手や
子どもたちの 満面の笑顔を思い出すと
居ても立ってもいられませんでした。
桃太郎は 振り返ると
サーカス場に向かって
走り出しました。
今ならまだ
夜の公演に間に合うはずです。
サーカス場へと走る
桃太郎の顔には
今までに見せたことがない
晴れ晴れとした笑顔が
浮かんでいました。
桃太郎自身も
気づいてはいませんでしたが
正義感の強い 桃太郎は
いつの間にか
『自分が鬼を退治しなくてはいけない』
という使命感に
囚われていました。
剣術の修行も
日々の体力づくりも
すべては鬼退治のためでした。
そんな
自分をずっと縛り続けていた想いから
桃太郎は 今 解放されたのです。
だから
あんなにも晴れ晴れとした笑顔に
なっていたのです。
その後 桃太郎は
サーカス団のエースとして
活躍し続けたのでした。
おわり
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