【ネ】 目覚めると…

●【ネ】 目覚めると…


 大きな桃を食べた翌朝

 おじいさんと おばあさんが

 目覚めると……


「だ 誰だ おめぇは!?」


 おじいさんは

 自分の隣で眠っている

 若い美女に おどろいて

 声をあげました。


 その声で 若い美女は目覚めると

 自分の隣にいる

 若い美男子に おどろいて

 悲鳴をあげました。


「きゃーっ!

 お おめぇさんこそ

 誰なんだべさ!?」


 その声で

 おじいさん 改め 美男子は

 この美女が 若返った

 おばあさんであることに

 気が付きました。


「ば ばぁさまなのか?」


「そ そういう おめぇさんは

 じぃさまだべか?」


 二人は 自分たちが

 若返っていることに

 ものすごく おどろきました。


 しかも ただ若くなっただけでなく

 確実に 以前の若かったときよりも

 美男美女になっていました。


「こりゃあ いったい

 どういうことなんだべ?

 なにが起こってるんだ?」


「もしかして……

 桃なんじゃねぇべか?


 昔 なんかの本で

 桃には 若返りの作用があるって

 読んだことがあるような

 ないような……」


「さすが ばぁさまだ。

 若返っても 物知りだなぁ」


「ちょっと じぃさま。

 もう あたしは

 ばぁさまじゃねぇっぺよ。


 昔みてぇに

 たまちゃんって

 呼んでくいよ」


「そだらば

 おらんことも

 昔みてぇに

 かずちゃんって

 呼んでほしいっぺよ。


 ほんなら

 おらからな。


 た たまちゃ~ん」


「はぁ~い。


 じゃあ あたしも……

 かずちゃ~ん」


「てへへ~

 なんだか照れくせぇなぁ~」


 こうして なぜか若返った二人は

 まるで 出会った頃のように

 甘くて ラブラブな日々を

 過ごしたのでした。


 ――十月十日後


 環子(元おばあさん)は

 赤ちゃんを産みました。


 元気な男の子で

 名前は『モモタロー』に決めました。


 イケイケな父・数男(元おじいさん)と

 ノリノリな母・環子は

 モモタローを

 イケイケで ノリノリな子になるように

 育てました。


 ですが 不思議なもので

 親が イケイケで ノリノリだと

 子は 真逆のタイプになるケースが

 多々あるものです。


 モモタローは

 ものすごく冷静で 落ち着きがあり

 知性と教養を兼ね備え

 かつ 運動神経も抜群という

 スーパー優等生に 育ちました。


 ある日

 そんな スーパー優等生のモモタローが


「お父さん お母さん

 ぼくは 鬼退治に行ってまいります」


 と 宣言しました。


 数男と 環子は

 予想もしていなかった展開に

 びっくり仰天しました。


 ですが

 イケイケで ノリノリな二人は

 すぐに受け入れて


「いーねー!

 いっちゃいなよ!」


「モモっち ガンバ!

 鬼なんて ぶっ飛ばして

 ヒーローになるっぺよ!」


 と 応援してくれました。


 ――出発の日


 数男は モモタローに

 虎柄の戦闘服と

 鞘をスワロフスキーで デコった刀を

 渡しました。


 環子は

 中に なにが入っているかわからない

 ロシアンおにぎりを

 渡しました。


 ですが モモタローは

 事前に用意しておいた

 羽織袴と 刀と

 自分で作った きびだんごを持って

 出発しました。


 数男と 環子は

 旅立つ息子の背中を

 しみじみと見つめました。


「立派な背中だっぺよ……」


「アタシらから

 あんなにも優秀な子が

 できあがるなんて……

 スズメが タカを

 産んだようなもんだっぺな」


「んだなぁ…… って

 こうしちゃいられねぇ!

 たまちゃん 準備せねば!」


「はいよ かずちゃん!」


 数男と 環子は

 なにやら準備を 始めました……


 ――一方 その頃


 モモタローは

 旅の仲間に 出会っていました。


 モモタローが出会った 仲間は……


  1

 イヌと サルと キジ

  …『【ネ・1】 安定の仲間たち』にすすむ


  2

 ネコと リスと ヒヨコ

  …『【ネ・2】 超絶カワイイ仲間たち』にすすむ


  3

 ティラノサウルスと

 ステゴサウルスと

 プテラノドン

  …『【ネ・3】 ジュラシックな仲間たち』にすすむ


  4

 横綱と 大関と 小結

  …『【ネ・4】 現役最強の仲間たち』にすすむ


  5

 幽霊の剣豪三人衆

  …『【ネ・5】 半透明な仲間たち』にすすむ




 ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


●【ネ・1】 安定の仲間たち


 モモタローが出会った 仲間は

 イヌと サルと キジでした。


 きびだんごをあげることで

 イヌと サルと キジは仲間になって

 鬼退治の お供になってくれたのです。


 そして 鬼ヶ島へと乗り込んだ

 モモタローたちは

 襲いかかってくる鬼どもを

 斬っては投げ 斬っては投げて

 ついに すべての鬼を倒し

 鬼退治を 成し遂げたのでした。


 モモタローたちが

 最寄りの港町へ 帰還すると


 大勢の人たちが

 モモタローたちを

 出迎えてくれました。


 人々は モモタローたちの活躍を

 すべて知っていたのです。


 なぜなら

 数男と 環子が

 ずっと モモタローを尾行していて

 鬼退治の一部始終を

 SNSで配信していたからです。


 モモタローは

 人々に知られることなく

 鬼退治をやり遂げたかったので

 数男と 環子の行為を怒りました。


 ですが それもこれも

 我が子を想う 親の愛なのだということを

 スーパー優等生のモモタローは

 わかっていました。


「我が子とはいえ

 人のことを

 勝手にSNSにあげるのは

 よくないってこと

 わかってる?


 ……でも

 いつも 見守っていてくれて

 ありがとう」


 モモタローの言葉に

 数男と 環子は号泣しました。


 その様子も また

 SNSで拡散され

 世界中で 3億いいじゃんを

 獲得したのでした。


 めでたし めでたし




 ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


●【ネ・2】 超絶カワイイ仲間たち


 モモタローが出会った 仲間は

 ネコと リスと ヒヨコでした。


 こんなにも

 小さくて可愛いだけの仲間で

 鬼退治なんて できっこない……


 と 普通は思うことでしょう。


 しかし スーパー優等生のモモタローには

 しっかりとした理論が

 あったのでした。


 いよいよ 鬼ヶ島へとやってきました。


 侵入者に気づいた鬼どもが

 いっせいに襲いかかってきます。


 が しかし


 ネコと リスと ヒヨコの

 可愛くて つぶらな瞳を見た鬼どもは

 握り締めていた金棒を

 地面に投げ捨てました。


 そうなのです。

 鬼は 小さくて可愛いものに

 めっぽう弱いのです。


 モモタローは

 そのことを知っていたので

 この仲間たちを選んだのでした。


 こうして

 すべての悪事を反省した鬼たちは

 奪った金銀財宝を

 すべて返しました。


 そして 鬼ヶ島を

 捨てられたネコや イヌなどの

 ペットたちを保護するための島へと

 変えました。


 鬼たちの ペットを保護する活動には

 モモタローも 参加しました。


 そして ひそかにモモタローを

 尾行し続けていた 数男と 環子も

 参加しました。


 こうして

 鬼たちを中心に

 ペットを保護する活動が

 広まっていきました。


 ですが……


 それでも

 ペットを捨てる人や

 ペットに虐待をする人

 そして ペットを金の種としか

 思っていない 悪質なブリーダーや

 ペットショップは

 後を絶ちませんでした。


 鬼たちよりも

 鬼畜な人間を退治すべく

 モモタローと 鬼たちは

 今日も 戦い続けるのでした。


 おしまい




 ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


●【ネ・3】 ジュラシックな仲間たち


 モモタローが出会った 仲間は

 ティラノサウルスと

 ステゴサウルスと

 プテラノドンでした。


 この恐竜たちは ノラの恐竜で

 畑を踏んでしまったり

 家畜の牛を食べてしまったりと

 人々を困らせていました。


 さすがに 恐竜たちに

 言葉は通じませんでしたが

 きびだんごをあげることで

 信頼関係を築き

 鬼退治の お供として

 連れていくことができたのでした。


 こうして

 巨大で強力な仲間を得た モモタローは

 鬼ヶ島へと乗り込みました。


 巨体で知られる鬼たちも

 恐竜の前では

 子犬も同然です。


 恐竜たちのおかげで

 鬼ヶ島は あっという間に

 陥落しました。


 鬼たちは シッポを巻いて

 鬼ヶ島から 逃げていきました。


 モモタローは

 鬼たちが いなくなった鬼ヶ島を

 恐竜たちに開放することにしました。


 噂は広がり

 鬼ヶ島には ノラの恐竜たちが

 集まるようになりました。


 こうして モモタローは

 鬼たちの問題と同時に

 ノラ恐竜の問題も解決して

 人々から 感謝されましたとさ。


 めでたし めでたし




 ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


●【ネ・4】 現役最強の仲間たち


 モモタローが出会った 仲間は

 横綱と 大関と 小結の

 現役最強の力士たちでした。


 彼らは モモタローが

 鬼退治へ行くことを知り

 お供をするために

 駆け付けてくれたのです。


 こうして モモタローは

 横綱と 大関と 小結と共に

 鬼ヶ島へと乗り込みました。


 侵入者が 現役最強の力士たちだと

 気づいた 鬼たちは

 割れんばかりの歓声をあげて

 喜びました。


 実は 鬼たちは

 相撲が 大好きだったのです。


 そのため 横綱たちは

 鬼たちの代表三匹と

 相撲で対決することになりました。


 舞台は 鬼ヶ島の土俵で

 行事は モモタローです。


 初戦は 小結 対 門番の鬼です。


 門番の鬼は 鬼ヶ島の門を守り続けて

 はや五十年という ベテランです。


 しかし 巨大な門を 小指一本で閉めるなど

 その力は 鬼ヶ島内でもトップクラスでした。


「はっけよい のこった!」


 序盤は 小結が力士の技を駆使して

 門番の鬼を 土俵際まで追い込みましたが

 あと少しのところで

 門番の鬼が 鬼の馬鹿力を発揮し

 小結を 持ち上げて 投げ飛ばし

 鬼軍の勝利となりました。


 二戦目は 大関 対 巨人鬼です。


 巨人鬼は 鬼ヶ島でいちばん大きな鬼です。

 さすがに自信満々な様子で

 土俵に入ってからも ニヤニヤと

 し続けていました。


 しかし

 勝負は 一瞬でした。


 行事のモモタローが


「はっけよい のこった!」


 と 言うと同時に

 大関は飛び出し

 巨人鬼の顔面に

 強烈な張り手をくらわせました。


 巨人鬼は

 たったの一撃で

 脳が揺れて 意識を失ってしまい

 そのまま倒れたのでした。


 試合時間は

 わずか 二秒でした。


 これで 勝負の行方は

 最終戦へと もつれ込みました。


 最終戦は 横綱 対 鬼の大将です。


 鬼の大将は この鬼ヶ島を仕切る大ボスです。

 どの鬼よりも筋肉質で

 頭に生えた二本の角も

 太くて立派です。


「はっけよい…… のこった!」


 開始早々 横綱と鬼の大将は

 がっぷり四つで組み合いました。


 しばらくの間

 両者は そのまま

 まったく動きませんでした。


 ですが よく見ると

 両者は それぞれに

 じりじりと 力を入れています。


 動いていないように見えて

 ものすごく熱い戦いが

 おこなわれているのです。


 この勝負を

 誰もが息を飲んで見守りました。


 十分…… ニ十分…… 三十分……


 時間だけが過ぎていきました。


 通常であれば

 水入りといって

 休憩をはさむのですが

 今回は 両者の意向により

 水入りはありませんでした。


 見ているだけでも

 緊張で疲れてしまう時間が

 続きました。


 そして

 試合開始から

 五十分が過ぎようと

 していたときのことです。


 最初に仕掛けたのは

 横綱でした。


 鬼の大将が

 微かに息を吐いた瞬間を

 見逃さなかったのです。


 しかし

 それは 鬼の大将が仕組んだ

 罠でした。


 横綱が 右の上手を引いて

 一気に攻め込もうとすると


 それを待っていた 鬼の大将が

 横綱の意表を突いて

 左の足を払おうとしました。


 が しかし

 それもまた

 横綱は読んでいたのです。


 横綱は

 鬼の大将が 息を吐いたこと自体が

 演技であると 見抜いていました。


 なので その罠に引っかかるフリをして

 逆に 鬼の大将を罠にかけたのです。


 すべてを読まれていた 鬼の大将は

 横綱の得意技である

 大外投げによって

 投げ飛ばされました。


 勝負が決した瞬間

 会場中から 座布団が投げられました。


 座布団が舞う中

 横綱は 倒れた鬼の大将に

 手を差し伸べました。


 鬼の大将は 横綱の手を掴んで

 立ち上がりました。


 こうして

 急きょ開催された鬼ヶ島場所は

 力士軍の勝利で 幕を閉じました。


 力士たちの活躍によって

 日頃のおこないを反省した 鬼たちは

 もう二度と 人々を襲わないと約束し

 今までに奪ってきた金銀財宝も

 すべて返すことにしました。


 その代わりに

 毎年 鬼ヶ島で

 力士軍 対 鬼軍による

 『特別興行 鬼ヶ島場所』が

 開催されることになりました。


 モモタローは

 すべてのきっかけを作った偉人として

 鬼ヶ島場所の名誉会長に

 任命されました。


 モモタローの行動と

 相撲の魅力によって

 世界は平和になったのでした。


 めでたし めでたし




 ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


●【ネ・5】 半透明な仲間たち


 モモタローが出会った 仲間は

 幽霊の剣豪三人衆でした。


 実は モモタローには霊感があり

 日頃から 幽霊を視ていました。


 幽霊の剣豪たちは

 最期に大活躍することが

 できなかったという無念を

 抱えていました。


 それを知ったモモタローが

 鬼退治に誘うことで

 無念を晴らしてもらおうと

 考えたのです。


 モモタローが 鬼ヶ島へ上陸すると

 鬼どもは


「小童が 一人でやってきやがった!」


 と バカにして笑いました。


 でも 中には

 霊感のある鬼もいて


「な なに言ってんだ!

 あんなにも強そうな仲間を

 連れてるじゃねぇか!」


 と 慌てました。


 幽霊の剣豪三人衆は

 見えない刀で 鬼どもを

 バッタバッタと斬っていきました。


 鬼どもは

 誰に斬られたのかもわからないまま

 倒れていきました。


 こうして モモタローと

 幽霊の剣豪三人衆は

 鬼をすべて倒し

 鬼退治を成し遂げました。


 そして

 最期に 大活躍することができた

 幽霊の剣豪三人衆は

 笑顔で 成仏していきました。


 凱旋したモモタローは

 どうやって鬼を退治したのかと

 聞かれたときに


「幽霊の剣豪三人衆が

 協力してくれたのです」


 と 正直に答えたのですが

 誰も信用してはくれませんでした。


 ですが

 数男と 環子は

 すぐに信じました。


 というのも

 数男と 環子は

 モモタローが旅立ったあとから

 ずっと尾行していたのです。


 二人には霊感がありませんでしたが

 モモタローが

 一人で喋っている様子や

 誰もいないのに斬られる鬼などを

 すべて見ていたのです。


 モモタローは

 みんなに信じてもらえなくても

 鬼を退治したことは事実で

 平和が訪れたことも事実だし

 なにより

 両親が信じてくれているなら

 もうそれだけで いいや

 と 思いました。


 ――その後


 モモタローのもとには

 全国の迷える幽霊たちが

 集まるようになってしまい

 彼らの無念を晴らすために

 数男と 環子も巻き込んで

 あれやこれやの

 大騒動が起こるのですが

 それはまた 別のお話……


 おしまい

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