【ツ】 桃太郎、都会へ向かう
●【ツ】 桃太郎、都会へ向かう
夜中に 家を出た 桃太郎は
都会を目指して
夜通し歩き続けました。
その道中
アクションスターを夢見る 犬と
俳優志望の 猿と
モデルに憧れている 雉と
出会いました。
都会に憧れる者同士で
意気投合し
みんなで一緒に
都会を目指しました。
二日をかけて
桃太郎たちは
都会に到着しました。
初めて見る ビルの大きさ
農民一揆レベルの 騒音
家畜小屋のような 悪臭
大祭りでしか見ない 人の数
桃太郎たちは
目に映る なにもかもに
おどろきました。
その後
住むところなどを
まったく準備していなかった
桃太郎と 猿と 雉は
きちんと住むところを
準備していた 犬の部屋に
転がり込むことになりました。
桃太郎たちの 共同生活は
狭いし
貧乏だし
お風呂もないし
トイレは共同だし
冷房も暖房もないし
いいことなんて
なんにもありませんでした。
でも ずっと楽しくて
全員で ずっと笑っていました。
それは
みんなの中に
夢と希望が
あったからでした。
時間が経ち
次第に 現実が見えてくると
みんなの顔から
笑顔が消えていきました。
そんなとき
猿が ギターを拾ってきました。
チューニングが ズレた ギターで
猿が 適当に音を奏でると
犬が 空き箱を
ドラム替わりに叩き出し
雉が 口笛で伴奏し
そして 桃太郎が
適当な歌詞で歌い始めました。
いきなり
部屋のドアが開きました。
桃太郎たちは
隣の部屋の人が
また うるさい! と
怒鳴りに来たのだと
思いました。
しかし
そこに立っているのは
隣の部屋の人ではなく
スーツを着た
見知らぬ男性でした。
男性は
よほど慌てているのか
息を切らしていました。
「えっと…… うるさかったですかね?
ごめんなさい!
もうやめますんで」
「ち 違う!
違うんです!」
男性は そう言うと
息を切らしながら
名刺を出しました。
その名刺には
有名な音楽会社の名が
書かれていました。
「きみたち
ぼくの会社で
デビューしないか?」
そして
あれよ あれよと言う間に
バンドデビューすることになりました。
その バンド名は……
1
ピーチボーイズ
…『【ツ・1】 ピーチボーイズ』にすすむ
2
桃太郎と 愉快な仲間たち
…『【ツ・2】 桃太郎と 愉快な仲間たち』にすすむ
3
モイサキ
…『【ツ・3】 モイサキ』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ツ・1】 ピーチボーイズ
バンド名は
『ピーチボーイズ』に決まりました。
ピーチボーイズは
デビュー曲から
売上ランキングの一位に輝き
すぐに スターの仲間入りを
果たしました。
快進撃を続ける
ピーチボーイズの前に
強力なライバルが出現しました。
それは……
…『【ツ・4】 ライバル登場』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ツ・2】 桃太郎と 愉快な仲間たち
バンド名は
『桃太郎と 愉快な仲間たち』に
決まりました。
しかし
コミックバンドだと
思われてしまい
売り上げは伸びませんでした。
音楽プロデューサーの判断で
バンド名を
『ピーチボーイズ』に
変更することになりました。
すると
一気に 人気が上昇し
瞬く間に スターの仲間入りを
果たしました。
そんな 快進撃を続ける
ピーチボーイズの前に
強力なライバルが出現しました。
それは……
…『【ツ・4】 ライバル登場』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ツ・3】 モイサキ
バンド名は
『モイサキ』に決定しました。
これは
桃太郎 犬 猿 雉の
頭文字を繋げたものでした。
桃太郎たちは
このバンド名が
とても気に入っていました。
しかし
まったく人気が出ませんでした。
そこで
所属している音楽会社の社長が
社長の権力を行使して
バンド名を
『ピーチボーイズ』に
変更しました。
その途端
人気が 急上昇して
瞬く間に スターの仲間入りを
果たしました。
そんな 快進撃を続ける
ピーチボーイズの前に
強力なライバルが出現しました。
それは……
…『【ツ・4】 ライバル登場』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ツ・4】 ライバル登場
ピーチボーイズの前に現れた
ライバルとは……
鬼ヶ島出身の
鬼たちで結成されたバンド
『デビルフェイス』でした。
デビルフェイスは
ヘビメタバンドなのですが
楽曲の荒々しさに反して
ボーカルの声が美しく
聴く者を 虜にしました。
そして ついに
ピーチボーイズと
デビルフェイスが
対バンをすることになりました。
決戦の地は
大江戸ドームです。
――決戦当日
大江戸ドームには
約十万人の観客が集まりました。
その中には 桃太郎の
おじいさんと おばあさんもいました。
桃太郎が 招待したのです。
熱狂と 歓喜の中
いよいよ 決戦が
始まりました――
――数時間後
大江戸ドームからあふれ出した
観客たちの顔は
みんな 笑顔でした。
対バンの結果は
ドローでした。
そのことに
誰一人として
異論を唱えないくらい
どちらの演奏も完璧でした。
桃太郎たちは
デビルフェイスの鬼たちと
握手をしました。
「また対バンしよう。
次は ぼくらが勝つけどね」
と 互いに言い合いながら
別れました。
しかし
対バンがおこなわれることは
二度とありませんでした。
デビルフェイスの鬼が
不祥事で逮捕され
それが引き金となり
翌年には
解散してしまったからです。
ピーチボーイズも
目指す方向性の違いから
意見が食い違うようになり
結成から4年で
解散することになりました。
解散後
桃太郎は
あのみんなで暮らした部屋を
見に行ってみました。
しかし
もうすでに 取り壊されて
高層マンションの建設が
始まっていました。
都会での暮らしは
夢や幻のようでした。
掴んでも
消えていく 夢……
最初から
夢を掴もうと
していたのだから
今になって
掴んだものが
消えてしまったとしても
おどろくことではないのかも
しれません。
桃太郎は
空を見上げました。
そこから見える 空の色は
あのときに見た色と
まったく同じでした。
だからこそ
桃太郎は 故郷へ帰ろうと
思えたのかもしれません。
夢を握った拳を
ズボンのポケットに押し込んで
桃太郎は
故郷へ向けて
歩き出しました。
おわり
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