【ソ】 太郎の数奇な運命
●【ソ】 太郎の数奇な運命
「あいつは 人間の子じゃない。
桃から生まれた バケモノの子だ」
という噂は
ついに 太郎の耳にも
届いてしまいました。
太郎は
おじいさんと おばあさんに
噂の真相を聞きました。
「わっはっは!
桃から 人が生まれるわけないだろう?
そんな噂話は
無視していればいい」
太郎は おじいさんの言葉を
信じました。
しかし 事態は急展開を迎えます。
太郎が 桃から生まれたという話を
言いふらしていたのは
なんと おじいさんでした。
おじいさんは
太郎が来てからというもの
おばあさんを取られてしまったことに
嫉妬し続けていたのです。
そのことを知った おばあさんは
太郎を連れて 家を出ていきました。
おばあさんは
自分たちの子を
バケモノ呼ばわりしたことが
ぜったいに許せませんでした。
その後 太郎は
おばあさんと 一緒に
都の端っこにある あばら家で
暮らし始めました。
暮らしは豊かではなかったので
太郎も 働かなくては
なりませんでした。
太郎は
都から 歩いて5時間の農園で
旬の野菜や 果物を 安く買って
都で 売り始めました。
あるとき
桃が旬を迎えていました。
しかし 農園の人たちは
桃を触るのが苦手で
売るつもりがありませんでした。
そこで 太郎は
自分で収穫をするからと言って
ただで桃を もらいました。
太郎は 大量の桃を持って
都へ戻りました。
ちょうど その頃 都では
流行り病に 桃が効くという
噂話が 広がっていました。
そうとは知らずに
大量の桃を持って
都へと帰った 太郎は
あっという間に
桃を売りさばくことが
できました。
そこで 翌日も農家へ行き
ただで桃を収穫すると
都で売りさばきました。
いつしか
毎日のように
大量の桃を持ってくる
太郎のことを
人々は
『桃太郎』と
呼ぶようになりました。
桃の販売で成功した 桃太郎は
都の中央にある商店通りで
果物屋を始めました。
桃太郎の果物屋は
都で いちばんの 人気店となりました。
1
幸せなままで
この物語を終える
…『【ソ・1】 幸せな おわり』にすすむ
2
その後の物語を知る
…『【ソ・2】 続・太郎の数奇な運命』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ソ・1】 幸せな おわり
それから 桃太郎は
おばあさんと一緒に
都で 幸せに暮らしましたとさ。
めでたし めでたし
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ソ・2】 続・太郎の数奇な運命
ある夜。
桃太郎は 猛烈な熱さで
目を覚ましました。
目を開けると
周りは 火の海でした。
桃太郎は 窓を打ち破って
外へ 飛び出しました。
しかし 外も火の海でした。
都中が 火の海だったのです。
桃太郎は おばあさんが
いないことに気づきました。
なんとかして
家の中へ入ろうとしましたが
火の勢いが強すぎて
とても入れません。
「おばあさん! おばあさん!」
桃太郎は 声が枯れるまで
叫び続けました。
そのとき なにか大きな物音が
聞こえました。
音がした方を見ると
火の海の向こうに
鬼どもの姿が見えました。
松明を持った 鬼どもは
ニタニタと笑いながら
都から出ていきました……
――翌朝
なんとか生き延びた桃太郎は
焼け落ちた家へ向かいました。
焼け焦げた木材を
どかしていくと
その下から
焼けた骨が見つかりました……
――数日後
桃太郎は 服を整え 刀を持って
旅立ちました。
目的地は 鬼ヶ島です。
都に火を放ったのは
鬼どもに違いありません。
桃太郎は
おばあさんの無念を晴らすべく
鬼退治をしようと決めたのです。
桃太郎と同じように
あの火事で
家族や大切な人を亡くした
犬と 猿と 雉が
お供になりました。
鬼ヶ島へ上陸した 桃太郎たちは
鬼どもを 次から次へと
倒していきました。
そして 桃太郎は
いよいよ 鬼のボスを
追い詰めました。
「ふっふっふっ。
おまえが わしを追い詰めるとは……
皮肉なものだな」
「……ぼくを知っているのか?」
「ああ もちろん。
都で 果物屋をやっていた 太郎だろ。
今は 桃太郎って 名乗っているんだったかな」
「なぜ ぼくのことを……」
「冥途の土産に 教えてやるよ」
鬼のボスは
ある書類を投げて渡しました。
それは 契約書でした。
契約を結んでいるのは
鬼のボスと
そして
おじいさんでした。
「あんたの おじいさんは
よっぽど あんたのことを
恨んでいたようだな。
ただ殺すだけでは
生ぬるいから
焼いて殺してくれって
言われてな。
その通りに実行してやったんだ。
まさか あの火の海から
生還するとは
思ってもみなかったがな。
そうだ。
もう一つ 教えておいてやろう。
焼け落ちた おまえの家にあった骨は
別の人間のものだ。
おまえの ばあさんの骨じゃない。
おまえの ばあさんはな
最後の最後に
おまえではなく
あのじいさんを選んだんだ。
あの二人は
今頃 幸せに暮らしているだろうよ」
くっくっくっと
鬼のボスは楽しそうに笑いました。
怒りが頂点に達した 桃太郎は
雷のような速さで
鬼のボスを斬りました。
こうして 桃太郎は
鬼退治を成し遂げたのでした……
――しかし
桃太郎の復讐は
まだ終わっていません。
お供たちと別れた 桃太郎は
おじいさんと おばあさんを
探しました。
二人は 人里離れた場所で
静かに暮らしていました。
その夜。
桃太郎は
二人の住む家の壁に
刀を突き刺して
その場を あとにしました。
その刀だけで
おじいさんと おばあさんは
桃太郎に すべて気づかれていることを
悟りました。
それ以来
おじいさんと おばあさんは
恐怖で眠れなくなりました。
桃太郎は
生涯 恐怖を感じ続けるという
最高の復讐を成し遂げたのでした。
その後 桃太郎は
桃農園を営んで
永久に平和に暮らしたのでした。
おわり
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