【ヲ】 二番手は サムライ
●【ヲ】 二番手は サムライ
桃太郎と 犬と サムライが
鬼ヶ島を目指して歩いていると
またしても 誰かが 近づいてきました。
それは……
1
二丁拳銃のガンマン
…『【ヲ・1】 さすらいのガンマン』にすすむ
2
空手家のブルース
…『【ヲ・2】 飛拳のブルース』にすすむ
3
桜桃一刀流の剣豪
…『【ヲ・3】 名刀を握る剣豪』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ヲ・1】 さすらいのガンマン
それは
二丁拳銃を持った
さすらいの ガンマンでした。
「ヨォ 若いの。
ここいらじゃ見ねぇ顔だな。
……ん? 待てよ。
おまえさんが持っているのは
もしかして きびだんごって 奴かい?
てことは
おまえさんが
桃太郎って わけか。
ふ~ん……
なかなか いい面構えを
してるじゃねぇか。
よし いいだろう。
おれに きびだんごを
一つ よこしな。
その お礼がてら
おまえさんの 鬼退治に
同行してやるぜ」
桃太郎は
ガンマンに
きびだんごをあげました。
「へぇ なかなかうまいな。
さ ぐずぐずしてねぇで 行こうぜ
鬼ヶ島ってとこへよ」
こうして 桃太郎は
犬と サムライと ガンマンを連れて
鬼ヶ島へと 向かったのでした。
…『【ヲ・4】 鬼ヶ島での決斗』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ヲ・2】 飛拳のブルース
それは
空手家の ブルースでした。
「なにも言うな。
わかっている。
わたしは
ここで おまえから
きびだんごを受け取り
おまえの仲間になる。
そして 共に力を合わせ
鬼どもを駆逐するだろう。
すべては
我が家に伝わる
予言の書に
書かれていたことだ。
だから わたしは
この日のために
厳しい鍛錬を
積み重ねてきた。
さあ 行こう。
この飛拳と呼ばれた拳で
鬼どもを駆逐してやる」
「あ あの……」
「大丈夫 みなまで言うな。
わたしは すでに
すべて感じている」
「いや そうじゃなくって……
これ きびだんごです」
桃太郎は
おずおずと
きびだんごを渡しました。
ブルースは
すっかり 自分語りに酔ってしまい
肝心な きびだんごを
もらい忘れていたのです。
ブルースは
気まずそうな顔で
きびだんごを受け取って
食べました。
「……さて 行こうか」
ブルースは
赤くなった顔を
見られたくなかったのか
先だって歩き出しました。
こうして 桃太郎は
犬と サムライと
ちょっとドジな空手家と 一緒に
鬼ヶ島を目指したのでした。
…『【ヲ・5】 燃えよ! 鬼退治!』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ヲ・3】 名刀を握る剣豪
それは
桜桃一刀流の剣豪でした。
しかし 剣豪の目的は
桃太郎では ありませんでした。
サムライは
桃太郎と 犬を
後ろに下がらせると
剣豪の前に立ちました。
剣豪は
腰の刀に 手をかけながら
サムライに言いました。
「ようやくみつけたぞ
無敵の浪人 五十郎」
「やれやれ
こんなところまで
追ってくるとは。
追ってくる相手が 美女だったら
おれも 嬉しかったんだがな」
サムライの 言葉と態度に
剣豪は 苛立ちを覚え
剣を抜きました。
「その減らず口を
今 ここで
叩き斬ってやる!」
「ほう。
月見羽蛾刀(つきみばがとう)か。
これまた 大層な名刀を
持ってきたもんだな。
まあ それくらいの
名刀じゃないと
拙者の相手は
務まらんからな」
「黙れ!
我が道場の看板に
泥を塗った恨み!
今こそ 晴らしてくれようぞ!」
「まったく
逆恨みも 甚だしいな」
「なんだと?」
「拙者が 道場破りをしたことよりも
己らの一門が 弱かったことを
恨むべきであろう。
違うか?」
「うるさいっ!
覚悟っ!」
剣豪は サムライに斬りかかりました。
それは 一瞬の出来事でした。
サムライは
剣豪の一太刀を ひらりと避けると
音もなく 刀を抜き
そして そのまま
剣豪を斬りました。
流れるような
とても美しい居合抜きでした。
剣豪が倒れると
サムライは 刀を鞘に納め
そして 剣豪に向けて
手を合わせました。
サムライは
申し訳なさそうな顔をして
桃太郎に言いました。
「桃太郎殿
情けないところを見せてしまい
申し訳ない。
実は 拙者は 数多の剣客たちから
追われ続けている身なのです。
よもや 鬼退治に向かっているとは
思われまいと
桃太郎殿の一行に
参加させていただいたのだが
どうやら それも
気づかれてしまったらしい。
このままでは
桃太郎殿に迷惑が
かかってしまう。
勝手なことを言って すまないが
拙者は ここで抜けさせていただく。
桃太郎殿
どうか鬼退治を成し遂げてくだされ。
では これにて」
サムライは
桃太郎たちのもとから
離れていきました。
しかし
もう 桃太郎の頭の中には
サムライの刀さばきのことしか
ありませんでした。
「まっ 待ってください!
ぼくを 弟子にしてくださいっ!」
桃太郎は
サムライを追いかけました。
サムライは
予想外の展開に
「弟子は 取らぬ!
諦めて 鬼ヶ島へ行け!」
と 強い口調で言って 逃げました。
桃太郎は
サムライのあとを
どこまで 追いかけました。
――一方 取り残された犬は……
桃太郎に捨てられて
深く傷ついた 犬は
野犬となり
巨大な群れを作りました。
そして その群れを引き連れて
鬼ヶ島へと乗り込み
鬼退治を成し遂げたのです。
それまで 鬼の脅威に
おびえて暮らしていた人々は
急に鬼がいなくなったことを
とても喜びました。
ですが……
鬼ヶ島には
野犬たちが暮らすようになりました。
いつしか
『鬼ヶ島っていう
野犬たちの天国があるらしいぞ!』
という情報が広まって
世界中から 野犬たちが集まるように
なったのです。
その後
野犬から 鬼ヶ島を奪い返そうとする
鬼の集団と戦争があったり
鬼ヶ島を 我が物としようとする
強欲な人間が 軍隊を引き連れて
野犬どもを排除しようとしたため
野犬と人間の間で 戦争があったりと
さまざまなドラマが
繰り広げられるのですが
それはまた 別の機会に
お話いたしましょう……
おわり
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ヲ・4】 鬼ヶ島での決斗
桃太郎は
犬と サムライと ガンマンと共に
鬼ヶ島へと 上陸しました。
不審者に気づいた 鬼どもが
金棒を持って
いっせいに 襲いかかってきました。
桃太郎たちは
ひるむことなく
鬼どもに 立ち向かっていきました。
激闘の末
残すは 鬼のボスのみとなりました。
「ほう ここまで来るとは見事だ。
褒めてつかわそう。
だが おかしいとは
思わなかったのか?
おまえたちよりも
数段 大きな鬼たちが
こんなにも弱いなんて と」
そのときです。
四方八方から
金棒を持った 鬼どもが現れました。
桃太郎たちは
あっという間に
鬼どもに囲まれてしまったのです。
「ふっふっふっ。
まさに形勢逆転だな。
だが わしも
そこまで鬼ではない。
本物の鬼だがな!」
鬼のボスの 鬼ジョークに
手下の鬼どもが
割れんばかりの大声で笑いました。
「おまえたちに
最後のチャンスをやろう。
一人だけ
代表者を選べ。
そして
わしと 一対一で勝負をしろ。
もし おまえたちの代表者が勝ったら
我らは この島から出ていき
二度と戻らないと約束しよう。
どうだ?
この勝負に 乗るか?」
桃太郎たちは
顔を見合わせました。
全員の顔が
決意に固まっていました。
「その勝負 乗った!
ぼくたちが勝って
おまえたちには
出て行ってもらうからな!」
桃太郎が言うと
鬼どもは バカにしたように
ゲラゲラと笑いました。
「代表者は 誰だ?」
「ぼくたちの 代表者は……」
1
桃太郎
…『【ヲ・6】 桃太郎 対 鬼のボス』にすすむ
2
犬
…『【ヲ・7】 犬 対 鬼のボス』にすすむ
3
サムライ
…『【ヲ・8】 サムライ 対 鬼のボス』にすすむ
4
ガンマン
…『【ヲ・9】 ガンマン 対 鬼のボス』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ヲ・5】 燃えよ! 鬼退治!
桃太郎は
犬と サムライと
空手家のブルースと共に
鬼ヶ島へと 上陸しました。
不審者に気づいた 鬼どもが
金棒を持って
いっせいに 襲いかかってきました。
鬼どもを倒しながら
突き進んでいくと
鬼ヶ島の中央に
五重塔がありました。
どうやら この塔の最上階に
鬼のボスがいるようです。
桃太郎たちは
さっそく五重塔の中へ
踏み込みました。
――ステージ1『五重塔 一階』
一階には
巨漢の鬼が 待ち構えていました。
厚い脂肪で 覆われているため
刀も 銃弾も効きません。
桃太郎たちは
初戦から 苦しい戦いに見舞われました。
しかし
犬が 巨漢鬼の足元を
ちょこまかと走り回ることで
巨漢鬼を 転ばせることに
成功しました。
うつ伏せで倒れてしまった巨漢鬼は
もう二度と 起き上がることが
できませんでした。
――ステージ2『五重塔 二階』
二階へあがると
ヌンチャク使いの鬼が
待ち構えていました。
ヌンチャク鬼は
これ見よがしに
ヌンチャクの技を
披露してきました。
その どや顔に呆れた サムライが
ヌンチャク鬼を斬って倒しました。
――ステージ3『五重塔 三階』
三階へあがると
鬼のような顔をした
巨大な犬が 待ち構えていました。
「ここは ぼくにまかせて」
犬は そう言うと
鬼犬に 前に立ちました。
「小犬の分際で
おれさまに 戦いを挑むとは。
よほど 死にたいらしいな」
「言ってろ。
おまえみたいなデブ犬に
負ける気はないさ」
デブ犬呼ばわりされて
怒り狂う 鬼犬に対し
桃太郎軍の犬は 始終冷静で
攻撃を くらったとしても
致命傷になることはなく
素早い身のこなしで
相手を 翻弄し続けました。
そして……
激闘の末
犬は勝利を収めました。
しかし
歩けないほどの
深手を負ってしまいました。
「ぼ ぼくに構わず
上へ行ってください!」
桃太郎たちは
犬を三階に置いて
上の階へと向かいました。
――ステージ4『五重塔 四階』
四階には
武士のような佇まいの鬼が
待ち構えていました。
鬼武士の手には
巨大な日本刀が
握られていました。
「どうやら ここは
拙者の出番のようだ」
サムライは
桃太郎たちを下がらせると
鬼武士へ戦いを挑みました。
火花散る 激しい斬り合いの末
サムライは 鬼武士を討ち取りました。
ただ サムライも
深手を負ってしまいました。
「拙者に構わず 次へ」
桃太郎と 空手家のブルースは
四階にサムライを置いて
最上階へと 向かいました。
――ファイナルステージ『五重塔 五階』
最上階には
鬼のボスが鎮座していました。
鬼のボスは
空手の道着を着ていました。
なんと 鬼のボスは
空手家だったのです。
「どうやら
おれが ここへ来たことは
運命だったようだ」
空手家のブルースは
桃太郎を後ろへ追いやって
鬼のボスの前へと
出ていきました。
「ふっふっふっ。
まさか 鬼ヶ島へ
乗り込んできた一行の中に
空手家がいるとはな。
わしの 鬼ヶ島流の空手が
世界一だということを
世に知らしめる
いい機会だ」
「ふざけたことを。
貴様の空手など
お遊戯だったことを
教えてやろう」
ブルースと 鬼のボスの
空手による 激しい戦いが
始まりました。
序盤は 鬼のボスが
その巨大な体格を活かして
ブルースを追い詰めました。
ブルースは
鬼のボスの拳を
まともにくらって
壁まで吹き飛ばされました。
決まってしまったか……
と 思われましたが
ブルースは
血だらけになりながらも
立ち上がりました。
しかし 流血によって
ブルースは 冷静さを
取り戻しました。
ブルースは
鬼のボスの攻撃を交わすと
自らの攻撃を くらわせました。
静かで 激しい戦いが
続きました。
終わりも
静かに訪れました。
鬼のボスが
渾身の力をこめて放った拳を
ブルースは
顔面すれすれのところで交わし
その勢いのまま
鬼のボスの顔面に
強烈な拳を くらわせました。
鬼のボスは
ふらふらと
二 三歩 後ずさりをして
そのまま倒れました。
巨大な鬼のボスが
勢いよく倒れたので
床が抜けてしまい
そのまま一階まで
落ちていきました。
その影響で
塔が崩れ始めました。
桃太郎は
激戦で疲れ果てている
ブルースを担いで
さらに 各階で休んでいる
サムライと 犬も担いで
塔の外へと 脱出しました。
桃太郎たちが出ると同時に
五重塔は 崩れ去りました。
こうして
桃太郎たちの鬼退治は
無事に成し遂げられたのでした。
凱旋帰還後
犬も サムライも 空手家も
人々から注目をされ
時の人になりました。
しかし
特に活躍がなかった 桃太郎は
注目されませんでした。
――六十年後
歴史研究家が
かつておこなわれた 鬼退治について
改めて 調査をおこないました。
すると……
『我々が暮らす この世界は
鬼退治の成功によって
平和になった。
そのときの功労者は
犬と サムライと 空手家だと
されているが
しかし まず 桃太郎氏が立ち上がり
彼らに呼び掛けたことによって
鬼退治は 成し遂げられたのだ』
という見解を 発表しました。
こうして 六十年の時を経て
ようやく 桃太郎が
注目を浴びることになったのです。
しかし
桃太郎は あれ以来
姿を消してしまっており
誰も 桃太郎に会うことは
できませんでした。
桃太郎は 辺境の地で
静かに暮らしていました。
桃太郎は 鬼退治後に
注目されなかったことを
いっさい 気にしていませんでした。
みんなより
活躍が少なかったことは
事実でしたし
なにより
世界が平和になって
本当によかったと
心から思っていたからです。
自分の名誉など
みんなの平和に比べれば
大したこと ありません。
だから 桃太郎は
後悔など いっさいなく
ずっと幸せに 暮らしたのでした。
おしまい
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ヲ・6】 桃太郎 対 鬼のボス
「ぼくたちの 代表者は……
ぼく 桃太郎だ!」
桃太郎は
鬼のボスの前へと
出ていきました。
目の前で見る 鬼のボスは
他の鬼より 三倍以上 巨大でした。
「ふっふっふっ。
愚かだな 桃太郎。
勇敢さとは
無謀なことではないのだぞ。
だが おまえの勇敢さに免じて
苦しまぬよう
一撃で 終わらせてやろう」
「やれるもんなら やってみろ!」
桃太郎は
鬼のボスに斬りかかりました。
桃太郎の動きは
鬼のボスの 予想を上回る
速さでした。
脳から放出される アドレナリンが
桃太郎の身体能力を
著しく向上させていたのです。
桃太郎は
鬼のボスの左腕に
深い傷を負わせました。
腹を立てた 鬼のボスが
金棒を 大きく振り下ろしました。
桃太郎は
金棒を 余裕で避けました。
「一撃で 終わらせるんじゃ
なかったのか?」
桃太郎が ニンマリしながら言うと
鬼のボスは ますます怒って
すっかり 理性を失ってしまいました。
鬼のボスは
周囲を見ずに
金棒を振り回しまくりました。
その暴走に
周辺の鬼どもも巻き込まれ
混乱状態となりました。
この好機を
犬と サムライと ガンマンは
見逃しませんでした。
まずは 見張りの鬼どもを倒し
そこから周囲の鬼どもを
倒していきました。
混乱する中で
桃太郎は 鬼のボスと
戦い続けました。
桃太郎は
鬼のボスの金棒をくらって
左腕を負傷しながらも
決して 諦めることなく
右腕一本で戦いました。
そして ついに
桃太郎は
鬼のボスを討ち取りました。
こうして 桃太郎は
鬼退治を 成し遂げたのでした。
――その後
桃太郎たちは
鬼どもが 鬼ヶ島から出ていくのを
しっかりと見届けてから
鬼ヶ島を あとにしました。
桃太郎たちの凱旋に
人々は熱狂し
歓喜の祭りは
三日三晩 続きました。
桃太郎は
左腕を動かすことが
もうできませんでしたが
左腕一本の代償だけで
この平和と
みんなの笑顔を守れたことを
心から嬉しく思いました。
めでたし めでたし
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ヲ・7】 犬 対 鬼のボス
「ぼくたちの 代表者は……
犬だ!」
犬は
鬼のボスに 戦いを挑みました――
――犬は 敗北しました。
桃太郎と サムライと ガンマンは
鬼ヶ島の牢屋に
入れられてしまいました。
やはり 最後の頼みを
犬に託すのは
無謀でした。
でも 桃太郎たちは
あのとき 犬が言った言葉……
『ぼくに作戦があるんだ。
もしかしたら……
ううん 間違いなく
ぼくは 負ける。
でも 大丈夫。
数時間後
ぼくたちは ぜったいに
勝利を手にするから』
……その言葉を 信じました。
そして 最後の戦いから
数時間が経ちました。
「グォオオオオオッ!」
苦しそうな断末魔が
鬼ヶ島中に 響き渡りました。
鬼のボスが 急に苦しみだして
のたうち回り始めたのです。
実は 犬が 鬼のボスに
噛み付いたことで
『破傷風』という病気に
感染していたのです。
破傷風にかかった鬼のボスは
苦しみ続けた挙句
なんと 金棒を持って
暴走し始めました。
暴走する 鬼のボスは
手下の鬼どもを
次から次へと
殴り飛ばしていきました。
その混乱の中で
牢屋の鍵が壊れ
桃太郎たちは
脱走することができました。
鬼のボスは
鬼どもを あらかた倒したのちに
絶命しました。
残った鬼どもは
「犬の 呪いだ!」
と 恐れをなして
鬼ヶ島から逃げ出しました。
こうして
犬の 命を懸けた攻撃によって
鬼退治は成し遂げられたのでした。
――その後
凱旋した 桃太郎たちは
すぐに 犬の 立派な銅像を作りました。
今でも この地域では
犬のことを『お犬さま』と呼んで
大事にしているのでした。
おしまい
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ヲ・8】 サムライ 対 鬼のボス
「ぼくたちの 代表者は……
サムライだ!」
サムライは
鬼のボスの前へと
出ていきました。
「ふっふっふっ。
サムライごときが
粋がりおって。
貴様のナマクラなど
なんの役にも立たぬことを
教えてやるとしよう」
「はぁ……
おまえのような 下衆の血が
拙者の名刀に付くことは
本望ではないのだが
致し方あるまい……」
「生意気な口を。
死んで後悔するがいい!」
鬼のボスの攻撃で
戦いは始まりました。
サムライは
鬼のボスが振り回す金棒を
避けることしかできません。
まさに 防戦一方です。
しかし それは
サムライが 間合いを確かめる
ための時間だったのです。
「見切った。
次の一太刀で
すべてを終わらせよう」
「ふん。
やれるもんならやってみろ!」
あまりにも一瞬すぎて
誰一人として
なにが起こったのかを
理解することはできませんでした。
理解していたのは
ただ一人
鬼のボスを斬った
サムライだけでした。
鬼のボスは
前のめりに倒れると
そのまま 起き上がることは
ありませんでした。
サムライは
刀に付いた 鬼のボスの血を
丁寧に拭ってから
鞘にしまいました。
「この世に 悪が蔓延ることなど
ぜったいにない。
なぜなら 拙者たちが
その悪を斬り続けるのだから」
サムライは 鬼どもを睨みました。
鬼どもは 恐れをなして
鬼ヶ島から逃げ出しました。
こうして 鬼退治は終わりました。
――その後
凱旋した 桃太郎たちは
歓迎の宴に 招待されました。
しかし 気づいたときには
もう サムライはいませんでした。
サムライは
悪者どもに 苦しめられている
人々を助けるため
また旅に行ってしまったのです。
桃太郎は
サムライの雄姿も
その立派な後ろ姿も
一生忘れないと
心に誓いました。
おしまい
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ヲ・9】 ガンマン 対 鬼のボス
「ぼくたちの 代表者は……
ガンマンだ!」
ガンマンは
鬼のボスの前へと
出ていきました。
ここまで 鬼のボスの姿は
影に隠れて はっきりとは
見えませんでした。
光の下へと出てきた
鬼のボスの姿は
ウエスタンカーボーイ
そのものでした。
「……やっぱり
鬼のボスっていうのは
おまえのことだったか」
なんと ガンマンと 鬼のボスは
知り合いであり
ガンマンとして修業をし合った
仲間同士だったのです。
「ふっふっふっ。
わしはわかっていたぞ。
いずれ おまえとは
こうして向き合う日が来る とな」
「そうか……
なら もう始めよう。
勝負は 早撃ちだ。
このコインが落ちると同時に
銃を抜き 相手を撃つ。
もし コインよりも先に撃ったら
その汚名が 末代まで
言い伝えられるからな」
「言われなくても
先になど撃たん。
ただ 撃つのは
わしの方が速いがな」
「言ってろ。
じゃあ いくぞ」
ガンマンは
コインを 宙高くに投げました。
永遠にも感じる瞬間の中
コインは くるくると
回転しながら宙を舞いました。
そのとき
鬼のボスの口元が
ニヤリと緩んだことを
ガンマンは 見逃しませんでした。
鬼のボスは
約束を破って
銃を抜きました。
鬼のボスが 銃を撃った瞬間
ガンマンは 二丁の拳銃を抜き
二丁 同時に撃ちました。
ガンマンが撃った銃弾の一つは
鬼のボスが撃った銃弾と
空中でぶつかって 破裂しました。
そして
ガンマンが撃った
もう一つの銃弾は
鬼のボスの眉間へ
見事に命中したのでした。
そのとき
コインが床に落ちて
乾いた金属音が
鳴り響きました。
こうして 鬼退治は終了しました。
鬼どもが 退散した後の鬼ヶ島には
鬼退治を讃える記念館が
作られました。
その記念館の中には
あのとき ガンマンが投げたコインと
空中でぶつかった弾丸が
展示してありました。
記念館には
桃太郎が着ていた羽織袴や刀も
展示してありましたが
あまり人気はなかったそうです。
でも お土産で売られている
『桃太郎印の きびだんご』は
いちばん人気の商品でしたとさ。
おしまい
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