【ト】 埋蔵金伝説
●【ト】 埋蔵金伝説
桃太郎は
古い埋蔵金の地図をもとに
山奥の荒れ果てた道を
一人で 歩いていました。
すると 藪の中から
誰かが現れました。
それは……
1
お腹をすかせた犬
…『【ト・1】 空腹の犬』にすすむ
2
山菜採りの名人
…『【ト・2】 山菜採りの名人』にすすむ
3
女性冒険家インディーナ
…『【ト・3】 女性冒険家』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・1】 空腹の犬
藪の中から 現れたのは
お腹をすかせた 犬でした。
どうやら お腹がすきすぎて
声すら出ない様子です。
桃太郎は 犬に きびだんごを
あげました。
「ありがとう! 助かったよ!
命の恩人の きみに
なにか お礼をしたいんだけど
なにがいいかなぁ……
そうだ!
きみ なにかを探してるんだろ?
聞かなくたって
その恰好を見たら わかるさ。
こんな山奥の道で
スコップを持っているような人は
森林浴が 目的なんかじゃない。
そうだろ?
なにを探してるのかは 知らないけど
それを探す手伝いをするよ。
ぼく こう見えて 鼻が利くんだ。
え?
犬なら 鼻が利くのは当たり前だろうって?
そうとは言えないらしいよ。
最近は 鼻炎の犬が
増えているからね。
とにかく ぼくが どんなモノでも
探し出してみせるから
きみに お供させてよ。
いいだろ?
いいよね!
よし 決まり!
さっそく しゅっぱーつ!」
こうして とってもお喋りな犬が
旅の お供に加わりました。
桃太郎は
あれだけ お喋りだったら
寂しさも 紛らわせられるかも
と思いながら
犬と共に 先へと進みました。
…『【ト・4】 山の奥深くへ』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・2】 山菜採りの名人
藪の中から 現れたのは
山菜採りの名人でした。
山菜採り名人は
年は 八十歳くらいの男性です。
カゴの中には
美味しそうな山菜が
たくさん入っていました。
「あんれま。
こんな山奥で 人にバッタリ会うなんて
何十年ぶり じゃろかな。
おまえさん なにしに来たんじゃ?」
桃太郎は にこやかに 笑いながら
「山歩きです。趣味なんですよ」
と 言いました。
これは おじいさんに教わった
『埋蔵金探索中に
人と出くわした際の対応法』
でした。
出くわした人が
どんなに 良さそうな人でも
同じ 埋蔵金を狙う者だという
可能性があります。
地元民を装って近づき
こちらが持っている埋蔵金の情報を
聞き出そうとしてくるのだそうです。
だから 桃太郎は
念には念を入れて
嘘を言ったのでした。
「こんな山奥を歩いても
なんも 楽しいことなんか
ありゃせんじゃろうに。
まあ 迷子にならんように
気ぃつけなさいよ。
あ それから
この辺には
山の主の ツキノワグマがおる。
出くわさんように
気ぃ張って 歩きなされよ」
山菜採りの名人は
そう言って 去っていきました。
桃太郎は 最後まで油断せず
名人が見えなくなるまで
見送りました。
どうやら 本物の
山菜採り名人だったようです。
桃太郎は ホッとしつつ
先へ進みました。
そのとき 桃太郎は
山菜採り名人のことばかり
気にしていたため
気づいていませんでした。
すぐ近くに
ツキノワグマの
真新しい足跡が
あることに……
…『【ト・5】 ツキノワグマ』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・3】 女性冒険家
藪の中から 現れたのは
女性冒険家として有名な
インディーナでした。
桃太郎は 以前から
インディーナのことを
知っていましたし
なにより ファンでした。
なので 思わず
「インディーナだ!」
と 言ってしまったのでした。
「あっ すみません!
ずっと あなたのファンだったので
思わず 叫んでしまいました……」
「アハハ 別にいいよ。
そういう反応は 慣れてるから
気にしないで。
ところで キミ
こんな なんにもない山奥で
なにをしてたの?」
「実は ぼくのおじいさんが
埋蔵金探しをしていたんですけど
ぼくが引き継ぐことになったので
ここまで来たんです」
と 言ったあとで
桃太郎は おじいさんの言葉を
思い出しました。
『もし 埋蔵金探しの最中に
同業者に出会ったら
埋蔵金探しの最中であることは
絶対に 話してはならない』
おじいさんに
口を すっぱくして
言われていたのに
桃太郎は
インディーナに会えた
喜びと興奮で
ベラベラと 喋ってしまったのでした。
「フフ。
キミは 素直な 良い子だね。
ところでさ
キミの おじいさんって
もしかして――」
そのときです。
複数人の足音が
聞こえてきました。
インディーナは
咄嗟に 桃太郎を抱きしめると
藪の中に 隠れました。
桃太郎は
大ファンの インディーナに
抱きしめられて
もう 心臓が破裂しそうでした。
「キミ 静かに」
桃太郎は
ただ こくんと うなずきました。
足音の主たちが
桃太郎たちの そばを
通過していきます。
先頭を歩いていたのは
きちんとした身なりの男性で
手には 地図のようなものと
コンパスが 握られていました。
その男性に続いて やってきたのは
なんと 鬼たちでした。
桃太郎は おどろきすぎて
声が出そうになりましたが
なんとか こらえました。
鬼たちが去ったあとで
桃太郎と インディーナは
藪から出ました。
「あいつめ 鬼どもと手を組むとは……」
「あの…… インディーナさんは
あの男の人を 知ってるんですか?」
「うん。
あいつは ヨコドーリ教授っていう
人が見つけた お宝を
すべて横取りしていく
嫌な奴なんだ」
「えっ!
あの人が 世界的な発見を多くしている
ヨコドーリ教授だったんですか!
雑誌に載ってた写真と
まったく違うから
気づかなかった……」
「あいつ 世に出る写真は
すべて加工をして
イケメンにしてるんだよ。
そのせいで
実際に会ったとき
誰にも本人だって
気づいてもらえないんだけどね。
それに!
あいつが発見したって
言われているものの大半は
もともと わたしが
みつけていたものだから!」
「そ そうだったんですね……
あ!
ヨコドーリ教授が
ここに来ているっていうことは
目的は もしかして……」
「うん キミと同じだろうね。
そして わたしと同じ」
「えっ!
インディーナさんも
埋蔵金を探しに来たんですか?」
「キミ 気づくの遅すぎじゃない?
目 節穴なの?
でも……
目の奥が 輝いてる。
師匠譲りの 良い目をしてる」
「師匠……?」
「ねぇ キミ
わたしの 相棒にならない?」
「ぼ ぼくが!?
いいんですか!」
「嫌なら 別にいいけど」
「い 嫌じゃないです!
やります!
やらせていただきます!」
「フフ 決まりね。
じゃあ あいつらよりも先に
埋蔵金を見つけ出すよ!」
「はい!」
こうして 桃太郎は
冒険家のインディーナと共に
埋蔵金を探すことになったのでした。
…『【ト・26】 その後の話』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・4】 山の奥深くへ
桃太郎は
お喋りな 犬と共に
山の奥へと進んでいきました。
すると 突然
猿が 行く手を さえぎりました。
「おい!
こっから先は
おれっちの土地だ!
先へ進みたかったら
持ってるもんを
全部 置いていきな!」
それを聞いた犬が
猿を するどく にらみました。
「桃太郎さん
ここは ぼくに任せてください。
こんな奴 ガブッと ひと噛みで
追い払ってみせます!」
しかし 桃太郎は
犬を下がらせました。
桃太郎は……
1
猿に きびだんごをあげました。
…『【ト・6】 猿にきびだんご』にすすむ
2
猿に ゲンコツをあげました。
…『【ト・7】 猿にゲンコツ』にすすむ
3
別の道を行くことにしました。
…『【ト・8】 猿は無視』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・5】 ツキノワグマ
桃太郎は
地図に書いてある 目的地を目指して
山道を 歩き続けました。
すると 巨大な岩が現れました。
その岩を くまなく調べると……
「あった!」
岩の側面に
バツ印がありました。
それこそが
埋蔵金を示す印だったのです。
桃太郎は
すぐにスコップを取り出し
穴を掘り始めました。
ひと掘り ふた掘りしたところで
桃太郎は 違和感に気づきました。
最近 掘られたばかりのような
気がするのです。
とはいえ 周囲に
人が踏み込んだような形跡は
見当たりません。
仮に もし もうすでに
誰かが埋蔵金を掘ったあとだとしたら
埋め戻す必要など あるでしょうか?
しかし 土の感触からして
最近 掘られたとしか思えませんでした。
違和感を覚えながらも
掘り進めていくと
土の中から なにかが出てきました。
それは 動物の死体でした。
桃太郎は すぐに あることを
思い出しました。
それは クマの習性です。
クマは 自分が捕えた獲物を
すぐに 全部は食べないで
残りを隠しておく習性が
あるそうなのです。
土を掘って その中に隠すというのは
聞いたことがありませんでしたが
この動物の死体に残る傷跡を見るに
クマの仕業だと考えて
間違いなさそうでした。
「……と 言うことは
ここはクマの陣地に違いない。
エサを奪おうとしているだなんて
思われたら 一大事だ……」
桃太郎は すぐさま
その場から離れようとしました。
しかし そのときです。
掘っていた穴の底で
なにかが光った気がしました。
「もしかして……」
桃太郎は……
1
穴を掘ってみることにしました。
…『【ト・9】 穴を掘る』にすすむ
2
その場から離れることにしました。
…『【ト・10】 穴から離れる』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・6】 猿にきびだんご
桃太郎は
猿にきびだんごを あげました。
「お腹が すいてるんだろ?
その顔を見れば わかるよ。
ほら これでも食べて」
「い いいのか!?」
猿は きびだんごに飛びついて
すぐに完食しました。
食べ終わるなり
猿は わんわんと泣き出しました。
「おれっち 初めてだ
誰かに優しくされるのは。
今まで ずっといじめられたり
無視されたり してきたから……
ありがとう!
本当にありがとう!
お礼って言っちゃなんだけど
おれっちが 案内してやるよ!
この山のことだったら
おれっち以上に詳しい奴なんて
いないんだからさ!」
こうして 猿も
お供に加わることになりました。
道中 犬と猿は
ずっとケンカをしていましたが
桃太郎は
それはそれで にぎやかでいいやと
思いました。
…『【ト・11】 さらに山奥へ』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・7】 猿にゲンコツ
桃太郎は 猿に
ゲンコツを くれてやりました。
「コラ!
他の人や動物たちに
迷惑をかけるんじゃない!」
猿は ゲンコツをされたことも
怒られたことも
どちらも ショックだったようです。
おどろいた顔をしたあとで
ワッと 泣き出しました。
「わーんっ!
おかあちゃんにも
ぶたれたことないのにーっ!」
猿は 泣きながら
どこかへ行ってしまいました。
桃太郎と 犬は
かまわずに 先へ進みました。
そのときです。
数百匹の猿が
あちらこちらから現れ
瞬く間に 囲まれてしまいました。
「かあちゃん こいつだよ!
こいつが ぼくを
木の棒で ぶったんだよ!」
「いやいやいや
木の棒なんて 持ってないけど……」
「おだまりっ!
アタシの子を ぶつなんて
いい度胸してんじゃねぇか。
この山から
生きて出られると
思うなよ!
おまえら やっちまえ!」
猿たちが
いっせいに襲いかかってきました。
桃太郎と 犬は
必死になって逃げました。
犬とは いつの間にかに
はぐれてしまいました。
桃太郎は 逃げる途中で
崖から落ちてしまいました。
高い崖だったので
猿は もう追ってきませんでした。
桃太郎は 一命は取り留めたものの
足など 全身の骨を
折ってしまいました。
桃太郎は 数日をかけて
なんとか山を出ることができました。
しばらくの間
近くの診療所に 入院したあと
おじいさんと おばあさんの待つ
家へと帰りました。
その後 桃太郎は
もう埋蔵金探しはせずに
山で 柴刈りをして暮らしました。
桃太郎は 深く反省していました。
どんな状況であろうとも
暴力はだめでした。
あのとき 邪魔だからと言って
猿にゲンコツをするのは
最低の行為でした。
どんな状況で
どんな相手だろうと
暴力ではなく
話し合いで解決をしなくては
ならなかったのです。
それから
桃太郎は ずっと
犬のことを心配していました。
あのお喋りな犬が
無事であることだけを
ずっと祈り続けました……
おわり
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・8】 猿は無視
桃太郎は 猿のことは無視して
別の道を行くことにしました。
すると 後ろから
『ぐぅ~~~~』
という音が
聞こえてきました。
振り返ると
猿が しょんぼりした顔で
お腹を抱えています。
先ほど聞こえたのは
どうやら 猿のお腹の音
だったようです。
そのことに気づいた犬は
くっくっくっと
笑っています。
桃太郎は
きびだんごを取り出すと
猿に渡しました。
「えっ くれるのか!?」
猿は きびだんごを食べながら
わんわん 泣き出しました。
「ありがとう!
本当にありがとう!
お礼って言っちゃなんだけど
おれっちが 案内してやるよ!
この山のことだったら
おれっち以上に詳しい奴なんて
いないんだからさ!」
こうして 猿も
お供に加わることになりました。
犬猿の仲とは よく言ったもので
道中 犬と猿は
ずっとケンカをしていました。
桃太郎は
それはそれで にぎやかでいいやと
思いながら 先へ進みました。
…『【ト・11】 さらに山奥へ』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・9】 穴を掘る
桃太郎は
穴を さらに掘ってみることにしました。
そして 桃太郎は見たのです。
土の中に埋まる――
気づいたときには
もうすでに
桃太郎は
クマに捕まっていました。
桃太郎は 抵抗しましたが
クマの力には
かないませんでした。
そのまま 桃太郎は
どこかへ連れていかれて
しまいました。
その後 桃太郎が
どうなったのかは
誰も わかりません……
桃太郎が 掘った土の中で
なにを見たのかも
今となっては
誰にも わかりません……
あのとき
山菜採り名人が言ってくれた忠告を
きちんと聞いていれば……
後悔は 先には立ちません。
先人の助言には
きちんと 耳を傾けたいものです。
おわり
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・10】 穴から離れる
桃太郎は
その場から 離れることにしました。
大きな岩のそばを
離れて すぐに
クマが咆哮をあげながら
駆けてきました。
桃太郎は
必死に走って逃げました。
でも クマの足は予想以上に速くて
もう追いつかれてしまいそうです……
そのときです。
山菜採り名人が
藪の中から飛び出すと
籠の中に入っていた 山菜を
クマに向かって 投げつけました。
クマは 香り高い山菜に釣られて
夢中になって 食べ始めました。
「ほれ 走れ!」
山菜採り名人に言われ
桃太郎は 再び走り出しました。
そして なんとか無事に
山を出ることができたのでした。
「ありがとうございます!
おかげで 命拾いをしました!」
「おまえさん
山歩きが趣味なんかじゃないな。
あの大岩の下を
掘ったんじゃろう?」
「あ…… いえいえ
歩いていたら
たまたま クマに遭遇して……」
「あのツキノワグマは
この山の主じゃ。
奴には 王の貫禄がある。
ちょっと出くわした程度の奴を
必死になって 追い回しはしない。
奴が追い回すのは
自分の獲物を
奪われそうになったときだけじゃ。
そして 奴が獲物を隠す場所は
あの大岩の下のみ。
普通のクマは
穴を掘って 獲物を隠すなんてマネは
あんまり しないそうなんじゃが
奴は 誰に調教されたのか
獲物を 土の下へと 隠しよる。
しかも 毎回
同じ場所にしか 隠さない。
奴がいる限り
あの大岩には
近づけんだろうな。
おまえさんも
そう思うじゃろ?」
山菜採り名人は
笑顔で そう言いました。
笑顔だったのですが
桃太郎は 怖さを覚えました。
目の奥が
まったく笑っていなかったからです。
桃太郎は
再度 感謝を告げて
その場から離れました。
山へは
もう戻りませんでした。
桃太郎は
あの山菜採り名人が
ツキノワグマを調教した
張本人なのだと思いました。
思い返せば
山菜に クマが食いつくというのも
不思議な気がします。
もし もともと山菜好きになるように
調教されていたら と考えると
納得もできます。
そもそも
なぜ 山菜採り名人は
クマを調教したのか……
それは きっと
埋蔵金を守るためなのでしょう。
山菜採り名人は
代々 埋蔵金を守護する役目を
担っていたのです。
埋蔵金を守るために
ツキノワグマを調教し
あの大岩に 何人たりとも
近づかないようにしたのです。
……と 桃太郎は推測しました。
本当にそうなのかは
わかりません。
埋蔵金は手に入れたいですが
命の方が 大切です。
その後 桃太郎は
埋蔵金探しはやめて
村で静かに暮らしたのでした。
おわり
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・11】 さらに山奥へ
桃太郎は
犬と 猿を連れて
さらに 山の奥へと進みました。
すると 一羽の雉が
倒れていました。
慌てて駆け寄ると
雉の お腹が
ぐぅ~~~~と 鳴りました。
「お お腹が減って
もう飛べない……」
桃太郎は
雉に きびだんごを
あげました。
雉は たちまち元気になって
空中で 一回転しました。
「元気百倍!
ありがとうございました!
実は 埋蔵金を探していたのですが
すっかり迷子になってしまって。
あっ!
スコップを持ってるってことは
あなた方も 探しに来たんですね
埋蔵金を!」
雉が そう言うと
犬と 猿が 顔を見合わせて
ゲラゲラと 笑いだしました。
「埋蔵金って!
そんなもん
あるわけないじゃん!」
桃太郎は ここで気づきました。
そうなのです。
犬と 猿には
埋蔵金を探すために
ここへ来たことを
言っていなかったのです。
桃太郎は おじいさんに
こう教えられてきました。
『埋蔵金を探していることは
滅多に話してはならなん』
この教えを 守っていたのです。
埋蔵金をバカにして笑う
犬と 猿を 雉が
ケンケン鳴きながら
怒っています。
桃太郎は
埋蔵金を探していることを……
1
話しました。
…『【ト・12】 目的は埋蔵金』にすすむ
2
話しませんでした。
…『【ト・13】 目的は絶景』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・12】 目的は埋蔵金
桃太郎は
目的は 埋蔵金探しであることを
話すことにしました。
犬と 猿は 「えっ!?」と おどろき
雉は 「やっぱりね」と にんまりしました。
犬と 猿は すぐに表情を変えて
「桃太郎さんのためならば
一緒に 埋蔵金を探しますよ!」
と 言いました。
こうして 桃太郎は
犬と 猿と 雉を お供に
埋蔵金を探すことになったのでした。
桃太郎は さっそく
おじいさんから たくされた
埋蔵金の地図を
お供たちに見せました。
すると この山について くわしい猿が
目的の場所へと 案内してくれました。
雉が 空から道を確かめてくれて
犬は ベラベラと喋って
場を盛り上げてくれました。
いよいよ 目的の場所へ到着しました。
そこにあったのは
巨大な岩でした。
桃太郎たちは 岩の周りを
くまなく調べましたが
とくになにもありませんでした。
そのとき……
1
犬が ワンワン鳴きました。
…『【ト・14】 犬がワンワン』にすすむ
2
猿が キーキー鳴きました。
…『【ト・15】 猿がキーキー』にすすむ
3
雉が ケンケン鳴きました。
…『【ト・16】 雉がケンケン』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・13】 目的は絶景
桃太郎は
目的は 絶景探しだと 話しました。
雉は がっかりして
「同じ目的だったら
一緒に探せるかと思ったのに……」
と言って 去っていきました。
この山に くわしい猿が
絶景の見える場所を
教えてくれました。
それはそれは 美しい景色でした。
桃太郎は
これこそが 宝なのではないかと
思いました。
その後も 桃太郎は
犬と 猿と 山の中を歩きましたが
結局 埋蔵金を見つけることは
できませんでした。
そもそも 犬と 猿には
埋蔵金のことを話していないので
隠しながら 探すことは困難でした。
桃太郎は 失意のまま
家へと帰りました。
――後日
埋蔵金発見のニュースが
飛び込んできました。
発見したのは
あの雉でした。
おじいさんは ものすごく
悔しがりました。
だから 桃太郎は言いませんでした。
山の中で この雉に
出会っていたということを……
おわり
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・14】 犬がワンワン
そのとき
犬が ワンワンと鳴きました。
桃太郎たちは
犬のもとへと駆け寄りました。
「桃太郎さん 見てください!
ここ! ここです!」
犬が 指す場所を見ると
そこにあったのは
マツタケでした。
「マツタケです!
しかも こんなに大きい!
これ 売ったら
大金に化けますよ!」
犬は 大興奮で言いました。
が 桃太郎たちは
完全にシラケて
その場から 離れていきました。
すると そのとき……
1
猿が キーキー鳴きました。
…『【ト・15】 猿がキーキー』にすすむ
2
雉が ケンケン鳴きました。
…『【ト・16】 雉がケンケン』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・15】 猿がキーキー
そのとき
猿が キーキーと鳴きました。
桃太郎たちは
猿のもとへと駆け寄りました。
「桃太郎さん 見て!
これ! これ怪しくない!?」
猿が指す場所を見ると
そこには 小さな穴がありました。
全員で その穴を
覗いていると……
ぴょんっと モグラが
飛び出しました。
「ボクんちの前で
騒がないでくれる?
うるさくって 眠れやしない!」
桃太郎たちは モグラに謝りながら
その場を 離れました。
すると……
1
犬が ワンワン鳴きました。
…『【ト・14】 犬がワンワン』にすすむ
2
雉が ケンケン鳴きました。
…『【ト・16】 雉がケンケン』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・16】 雉がケンケン
そのとき
雉が ケンケンと鳴きました。
桃太郎は 周囲を見渡しましたが
雉の姿が どこにも見当たりません。
「桃太郎さん!
こっち! こっちです!」
桃太郎は 声を追って
上を向きました。
雉は 大きな岩の上空を
飛んでいたのです。
「桃太郎さん!
岩の上まで あがってきてください!」
桃太郎と 犬と 猿は
協力し合いながら
岩の上へと 登りました。
すると 岩の上部には
なにやら 文字のようなものが
刻まれていました。
長い年月が経ったせいで
文字のほとんどは
コケに覆われていました。
桃太郎たちは 素手を使って
コケを はぎとりました。
そこに 書かれていたのは……
1
埋蔵金の場所を示す言葉でした。
…『【ト・17】 埋蔵金の場所』にすすむ
2
この世の真実が書かれていました。
…『【ト・18】 真実』にすすむ
3
心の俳句が書かれていました。
…『【ト・19】 心の俳句』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・17】 埋蔵金の場所
そこに 書かれていたのは
埋蔵金の場所を示す言葉でした。
『陽 生まれし 大海の沖
人 寄せつけぬ 孤島の中
光 届かぬ 冥闇の奥で
星 瞬きし時
汝 栄華を得る』
どうやら おじいさんの地図は
この言葉が書かれている場所を
示すものだったようです。
埋蔵金を 手にするためには
この言葉に込められた意味を
解き明かさなくてはなりません。
桃太郎が その意味について
考えていると
「あっ 桃太郎さん!
ここから 海が見えますよ!
なかなかの絶景ですよ!」
と 犬が 尻尾を振って言いました。
「おい!
今は 景色を見て
シッポ振ってる場合じゃないだろ!」
猿が 犬を叱りました。
「ちょ ちょっとは息抜きが
必要かなって思って……」
犬は しょんぼりしました。
桃太郎は
半ば しかたないなという気持ちで
犬の言う海を見てみました。
たしかに 大地の向こうに
海が見えます。
犬の言う通り
なかなかの絶景です。
桃太郎は しばらくの間
その景色に 見惚れていました。
見惚れていたことによって
桃太郎は 気づきました。
太陽の位置から見て
海は ここから東側にあります。
まさに『陽 生まれし 大海』です。
そして その『大海の沖』には
島がありました。
それは まさに
『人 寄せつけぬ 孤島』のようでした。
「あの島だ!
あの島に
埋蔵金があるに違いない!」
桃太郎たちは
すぐさま その島へと向かいました。
……このときは
まだ 誰も 知らなかったのです。
その島こそ
『鬼ヶ島』だということを……
…『【ト・20】 孤島、上陸』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・18】 真実
そこには
この世の真実が 書かれていました。
『夢見ることができれば
それは実現できる。
ウォルト・ディズニー』
そこに刻まれていたのは
ウォルト・ディズニーが残した
言葉でした。
そうなのです。
宝というのは
この言葉だったのです。
でも どんな名言も
きちんと解釈しなくては
意味がありません。
ウォルトは『夢を見たら叶う』と
言っているわけではありません。
夢を きちんと描き
それに向かって努力することで
夢は 実現することができるのです。
夢を思い描くことができる心と
その夢を信じて 努力する勇気があれば
夢は 必ず叶うのです。
桃太郎たちは
ウォルトの言葉を胸に
山を下りました。
その後
桃太郎は 山で 芝刈りをする
会社を興して成功し
犬は お喋り好きを活かして
落語家になり
猿は 山に関する知識を活かして
山岳ガイドになり
雉は 世界各地を冒険する
冒険家になりました。
桃太郎たちは
あの岩の上で見つけた
偉大な言葉のおかげで
それぞれに 夢を叶えることが
できたのでした。
おしまい
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・19】 心の俳句
そこには
心の俳句が書かれていました。
『簡単に
稼ぐことなど
できないよ
おじいさん 心の俳句』
なんと それは
おじいさんが詠んだ
心の俳句だったのです。
「ほっほっほ。
よく ここまでたどり着いたぞ」
そう言いながら 現れたのは
おじいさんと おばあさんでした。
この大きな岩の上に どうやって!?
と 桃太郎は 思いましたが
二人の後ろを見ると
梯子がかかっていました。
どうやら 準備してあったようです。
「これは 桃太郎が
埋蔵金ハンターになれるかを
試すための 試験だったのじゃ。
桃太郎 おまえは
地図が示す場所へ
きちんと たどり着いただけでなく
道中で 仲間たちにも出会い
それぞれ 協力し合いながら
目的地へとたどり着いた。
教えては おらんかったが
人と心を通わす 人間力も
埋蔵金探しには 重要なのじゃ。
よって!
桃太郎は
埋蔵金ハンター試験
合格とする!」
おじいさんと おばあさん
そして 犬と 猿と 雉が
笑顔で 桃太郎に拍手を送りました。
そうなのです。
実は 犬 猿 雉は
埋蔵金ハンター試験の
関係者だったのです。
犬たちに対する
桃太郎の対応の仕方も
試験のチェック項目に
入っていたのです。
おじいさんは
埋蔵金ハンターの証である
金のバッジを
桃太郎に渡そうとしました。
しかし
桃太郎は すっかり あきれ顔です。
「ここまで がんばってきたのに
全部 試験でしたって……
なんだよ それ。
そんなバッジがなくたって
ぼくは 埋蔵金ハンターだ」
桃太郎は岩を下りて
どこかへ 行ってしまいました……
――その後
おじいさんたちは
桃太郎の行方を捜しました。
でも 桃太郎を見つけることは
できませんでした。
あれから 十年以上が経った ある日。
大海賊の秘宝である
『ワンピーチ(ひとつなぎの桃)』が
みつかったというニュースが
世間を にぎわせました。
その 大海賊の秘宝をみつけた人物こそ
桃太郎だったのです。
ヒゲ面になって
すっかり大人になった桃太郎が
新聞紙面の写真の中で
ダブルピースをしていました。
おじいさんは
桃太郎の写真が載った新聞を
おばあさんの仏前に
そっと置いたのでした。
おしまい
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・20】 孤島、上陸
桃太郎たちは
大海の沖にある孤島に
到着しました。
この島に来るまでの間
桃太郎たちは 人の目を避けて
誰にも会わないようにして 来ました。
海を渡るのに使った 舟は
海岸に乗り捨てられていたものを
修理して 使いました。
埋蔵金のことを
気づかれないようにという
警戒心から
人目を避けたのです。
しかし
それによって 桃太郎たちは
この島が 鬼ヶ島であることを
知ることなく
到着してしまったのでした。
島に上陸して すぐに
桃太郎たちは
巨大な門があることに
気づきました。
「無人島なのかと
思っていたけど
誰か住んでるんですかね?」
犬は そう言って
門を叩いてみました。
すると 門がゆっくりと 開き
中から出てきたのは
門と同じくらい 巨大な鬼でした。
桃太郎たちは
とっさに 門の柱の陰に
隠れました。
「おかしいな?
叩く音がしたんだが……
まあ 気のせいか」
と言って 鬼は門を閉じました。
桃太郎たちは
慌てふためきました。
「鬼じゃん!
ここ 鬼ヶ島じゃん!
やばいよ!
はやく 逃げなきゃ!」
犬は 桃太郎の腕を
噛んで 引っ張りました。
猿も 雉も
もうすでに 逃げる準備が
できていました。
でも 桃太郎は
動きませんでした。
「きみたちは 帰ってくれ。
ぼくは 行く。
埋蔵金を みつけてみせる」
「お 鬼がいるんですよ!
もう鬼たちが みつけてますよ!」
「違う。
鬼が ここにいるからこそ
埋蔵金は 今も ここにあるんだ。
だって もし鬼たちが
埋蔵金を手に入れていたら
人間たちを襲って
金銀財宝を奪うなんてこと
していないはずだ。
奴らは 知らないんだ。
自分たちの足元に
莫大なお宝が
眠っているということを。
だから ぼくは行く。
きみたちは 帰ってくれ。
ここまで ありがとう」
桃太郎は 正面の門以外の
入り口を探して
鬼ヶ島の 裏口の方へと
行ってしまいました。
残された
犬と 猿と 雉は……
1
全員で あとを追いました。
…『【ト・21】 あとを追う』にすすむ
2
全員で 帰りました。
…『【ト・22】 鬼ヶ島から脱出』にすすむ
3
猿だけ 残りました。
…『【ト・23】 猿の作戦』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・21】 あとを追う
犬 猿 雉は
桃太郎の あとを追いかけました。
すぐに追いかけたので
桃太郎が 鬼ヶ島の裏口辺りに
たどり着く前に
合流することができました。
「きみたち…… なんで?
ここから先は
本当に危険だよ?」
「ぼくたちは まだ
桃太郎さんに きびだんごのお礼を
返してないんですよ。
きっちり お礼を返すまで
お供させて いただきます!」
桃太郎は 呆れつつも
内心 ホッとしていました。
「桃太郎さん!
ここから入れそうだよ!」
猿が 岸壁の上から言いました。
桃太郎たちは
猿が見つけてくれた場所から
鬼ヶ島の内部へと
潜入することにしました。
…『【ト・24】 鬼ヶ島 内部へ』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・22】 鬼ヶ島から脱出
犬 猿 雉は
鬼ヶ島を出て 帰ることにしました。
舟は無事に鬼ヶ島を離れ
そして それぞれ 自分の家へと
帰ることができました。
――あれから 三十年
犬も 猿も 雉も
もう おじいさんになりました。
孫や ひ孫に囲まれて
幸せな日々を すごしています。
でも
あの日以来
心の底から笑ったことは
一度もありませんでした。
恩人である桃太郎を見捨てて
自分たちだけで 帰ってきたことを
ずっと ずっと
後悔し続けました。
あのとき
無理矢理にでも
桃太郎を引っ張って
一緒に帰っていたら……
あのとき
勇気を出して
桃太郎と一緒に
鬼ヶ島へ潜入していたら……
考えても しかたのない もしもを
三十年間 ずっと考え続けてきました。
あれから 桃太郎の噂は
一つも聞きませんでした。
無事なのか 無事ではないのか
なにもわかりません。
あのとき どうすることが
正解だったのか
犬も 猿も 雉も
わからずにいます。
ただ あのとき
無事に帰ってくることができたから
今 こうして
孫や ひ孫たちの
笑顔を見ることができるのです。
なにを選ぶことが
正解だったのかは
未来になっても
わかりません。
でも 確実にわかる
目の前の幸せを大切にしよう と
犬と 猿と 雉は
三十年目のこの日に
改めて 思ったのでした。
おわり
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・23】 猿の作戦
犬と 雉は
舟に飛び乗って
帰っていきました。
猿は 鬼ヶ島に残りました。
猿は すぐに
桃太郎の あとを追いました。
そして
桃太郎が 鬼ヶ島の裏口から
内部に潜入しようとしている
姿をみつけると……
「侵入者だ!
裏口のところに
侵入者がいるぞー!」
と 大声で叫びました。
猿の声を聞きつけ
鬼たちが わんさか出てきました。
桃太郎は逃げそびれて
鬼に 捕まってしまったのでした。
猿は 鬼のもとへ行くと
「侵入者を教えたのは
おれっちだぜ」
「でかしたな。
褒美は なにがいい?
金か? 食料か?」
「いーや どっちもいらねぇよ。
その代わり おれっちを
鬼の仲間に入れとくれよ!
おれっち 鬼の仲間になるのが
昔っからの夢なんだ!
牢屋の番人でもいいからさ
おれっちを 仲間にしとくれよ!」
「牢屋の番人でいいのか?
あれは 一日中暗い地下に
いなきゃならねぇから
誰もやりたがらねぇんだよなぁ」
と いうことで
猿は 鬼ヶ島の 牢屋の番人として
働けることになったのでした。
猿は 鬼に連れられて
鬼ヶ島の 地下の牢屋へと
やってきました。
牢屋は 地下道を進んだ先にありました。
三つの牢屋があり
二つの牢屋には
誰かが入っていましたが
もう死んでいました。
「今日から ここが
おまえの持ち場だ。
しっかり働けよ」
「まっかせときな!」
猿は 満面の笑みで 答えました。
そこへ 手錠をかけられた人物が
鬼に連れられて やってきました。
もちろん その人物は
桃太郎でした。
鬼が 猿を小突いて 言いました。
「おい おまえのおかげで
捕まった奴が来たぞ。
猿 おまえから
なにか言ってやれ」
猿は 桃太郎を見て
ケタケタ笑って 言いました。
「あんたのおかげで
鬼ヶ島で 働けるようになったぜ!
ありがとよ!」
猿の裏切りを知った 桃太郎は
今すぐに 殴ってやろうとしました。
しかし 鬼に手錠を引っ張られ
猿に飛び掛かることは
できませんでした。
桃太郎は
空いていた牢屋に
放り込まれました。
桃太郎は 悔しくて 悔しくて
地面を叩いて 泣きました。
――数時間後
桃太郎は 真っ暗な牢屋の中で
膝を抱えて座っていました。
すると なにか聞こえてきました。
暗闇の中で 辺りを見渡すと
牢屋の入り口に
誰かがいます。
目を凝らすと
それは 猿でした。
「桃太郎さん! 桃太郎さん!
さあ 行きましょう!」
暗闇の中
猿は 笑顔で言いました。
…『【ト・25】 真・猿の作戦』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・24】 鬼ヶ島 内部へ
桃太郎たちは
鬼ヶ島の内部へと
無事に 潜入しました。
しかし 無事に入れたものの
どこから調べたらよいか
なにも決まっていません。
どうしたものかと
悩んでいると
「クンクン……
埋蔵金の匂いがする…… 気がする」
と 犬が言いました。
「いい加減なこと 言うな!
埋蔵金の匂いなんて
わかるわけないだろ!」
と 猿が小さな声で怒りました。
「そりゃ 埋蔵金の匂いなんて
わかんないけどさ……
でも あの岩の上に
掘られていた文字と
同じ匂いがするんだ。
もし あの文字に残っていた匂いが
埋蔵金に関係する匂いだとしたら
この匂いの先に 埋蔵金が
あるのかも……
ないのかも だけど」
犬は 自信なさげに言いました。
「よし
きみの 嗅覚を信じよう。
さあ 匂いの方へ
連れて行ってくれ!」
桃太郎が 頼むと
犬は 嬉々として
歩き出しました――
犬の先導で 着いた場所は
地下道でした。
まさに あの岩に書かれていた
『光 届かぬ 冥闇』のようです。
地下道の壁を調べると
どうやら 自然にできた穴のようです。
つまり 鬼たちが棲み始める前から
この地下道はあったということです。
犬は 暗闇の中
嗅覚だけを頼りにして
奥へと進んでいきました。
すると ほどなくして
すごく広い空間に出ました。
実際には 真っ暗なので
どのくらい広いのかは
わからないのですが
音の反響の仕方から
だいぶ広い場所であることが
わかったのでした。
犬の嗅覚に頼るのは
ここまでが限界のようです。
あとは
自力で探すしかないのですが
真っ暗な中で探すのは
難しそうです……
桃太郎は 岩の上に
書かれていた言葉を
思い出していました。
『光 届かぬ 冥闇の奥で
星 瞬きし時
汝 栄華を得る』
「星 瞬きし時……」
そのとき
夜目で なにも見えない 雉が
壁に激突してしまいました。
すると 壁や天井の一部が
微かに光った気がしました。
桃太郎は もしやと思い
「壁を叩いて!」
と お供たちに言いました。
桃太郎たちは
それぞれ 壁に近づいて
力いっぱい 壁を叩き続けました。
すると
壁や天井で
光が いっせいに瞬きました。
光の正体は
闇で光る虫『夜光虫』でした。
振動で慌てた虫たちが
いっせいに光を放ったのです。
その虫たちの放つ光の中
広間の奥へと進むと
明らかに 地面の色が
異なる場所がありました。
「ここだ ここに違いない!」
桃太郎たちは 穴を掘り始めました。
時間が経つと
夜光虫たちが 消えてしまうので
猿と 雉が 壁を叩いて
桃太郎と 犬は 穴を掘りました。
そして 土の中から
古びた箱が出てきました。
桃太郎は 仲間たちと共に
箱を開けました。
なんと 箱の中には
黄金の小判が詰め込まれていたのです。
「やった!
ついに みつけたぞ!」
桃太郎も 犬も 猿も 雉も
大喜びで 踊ったり 跳ねたりしました。
そのときです。
「そこにいるのは 誰だっ!」
鬼たちが 現れました。
壁を叩きすぎたことで
鬼に 気づかれてしまったのです。
桃太郎たちは
慌てて 黄金の入った箱を
持ち上げました。
すると 地面の下で
なにかが動く音がしました。
途端に 地面が激しく
揺れ始めました。
鬼たちは 突然の揺れにおどろいて
慌てふためいています。
その隙をついて
桃太郎たちは 重たい箱を持って
逃げ出しました。
地下道は長く
なかなか地上に出られません。
その間も振動は続き
地下道が崩れ始めました。
桃太郎たちを追う 鬼たちが
崩れた岩で押し潰されたり
道をふさがれて 閉じ込められたりと
侵入者を追っている場合ではなくなって
桃太郎たちを追い越して
出口に向かって走り出しました。
桃太郎たちは
そんな鬼たちと 一緒に
地下道から地上へと出ました。
地上も 激しい揺れで大混乱です。
その混乱に乗じて
桃太郎たちは
舟まで一気に走りました。
なんとか舟に到着すると
今度は全力でこいで 沖へ出ました。
桃太郎たちが
鬼ヶ島から離れて
数分後……
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
轟音と共に
鬼ヶ島は崩れ 海の底へと
沈んでいきました。
どうやら 宝を盗んだ者は
島ごと 海に沈むという罠が
仕掛けられていたようです。
時間が経ちすぎていたせいで
仕掛けの発動までに 猶予があったため
桃太郎たちは助かることが
できたのでした。
「あーーーーーっ!」
猿が 大声をあげました。
猿は 箱を開けて
中身を見ていました。
箱の中いっぱいに
あったはずの黄金の小判が
わずか 四枚しかありませんでした。
なんと 箱の底に
穴が開いていたのです。
走って逃げる中で
小判は ボロボロと
落ちてしまったのです。
でも 小判が少なくなったおかげで
桃太郎たちは 速く走ることができて
助かったのでした。
犬と 猿と 雉は
小判を落としてしまった事実に
とても落ち込みました。
それを見て
桃太郎は 声をあげて
笑ってしまいました。
「あははははは!
そんなに落ち込む必要ないって!
命があって よかったじゃないか!
それに 小判を一枚ずつ
持って帰れるわけだし。
それとさ 考えてごらんよ。
ぼくらは 鬼を退治したんだ。
きっと ぼくらは英雄になるよ」
桃太郎の言葉通り
桃太郎と 犬と 猿と 雉は
鬼退治をした英雄として
人々に 讃えられました。
ようやく探し当てた埋蔵金は
ほとんどを 海の底へ
沈めてしまいました。
でも 桃太郎は
かけがえのない仲間たちと
英雄という名誉を
得ることができたのでした。
めでたし めでたし
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・25】 真・猿の作戦
猿は 牢屋の鍵を開けました。
しかし 桃太郎は警戒しました。
信用していいのか
まだよくわからなかったからです。
「桃太郎さん さっきはごめん……
あのとき 鬼が一匹
陰から 桃太郎さんのことを
狙っていたんだ。
だから 叫んで
他の鬼を呼び集めることでしか
助ける方法がなくって……
牢屋で働けるかどうかは
賭けでしかなかったけど
もし 働けなかったとしても
助けに来るつもりだったんだ。
信じてもらえると
いいんだけど……」
桃太郎は 猿を
ギロリと睨んだあとで
ニコッと 微笑みました。
「ありがとう!
おかげで 助かったよ!
じゃあ ここから逃げようか」
桃太郎が言うと
猿は 首を振りました。
「こんな機会は
おそらく もう二度と
やってこないよ。
おれっちたちは
今 鬼ヶ島の中にいるんだ。
侵入に成功してるんだよ!
埋蔵金を探して 手に入れるなら
今しかない!」
「たしかにそうだけど……
でも さすがに無謀すぎる。
なんの情報もなしに
鬼ヶ島の中を探すのは……」
すると 猿がなにかを取り出しました。
それは 鬼ヶ島の地図でした。
猿は ひそかに鬼ヶ島の地図を
手に入れていたのです。
そして 埋蔵金がありそうな場所も
目星をつけていました。
桃太郎は 猿と共に
埋蔵金を探しに向かいました。
――その後
桃太郎と 猿は
地下の洞窟の中で
埋蔵金を見つけ出しました。
そして 埋蔵金を持って
鬼ヶ島から 無事に脱出したのです。
それから 桃太郎と 猿は
都に 豪邸を建てて
ずっと幸せに 暮らしました。
ですが その一方で
鬼は ずっと暴れ続け
人々を 苦しめ続けました。
桃太郎が 鬼退治を選ばなかったことで
その後もずっと
鬼の支配は 続いたのでした。
おわり
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ト・26】 その後の話
桃太郎は
冒険家のインディーナと共に
埋蔵金探しを続けました。
途中 鬼軍団を引き連れた
ヨコドーリ教授と遭遇し
対決する場面もありました。
それでも 困難を乗り越えて
桃太郎は インディーナと共に
埋蔵金を見つけ出しました。
激怒した ヨコドーリ教授が
「あの埋蔵金は
捏造された 偽物だ!」
と 学会で叫びました。
それに対して
桃太郎と インディーナは
ヨコドーリ教授が
鬼と手を結んでいる証拠を
公表しました。
鬼と手を結ぶことは
絶対にしてはならないことです。
ルールを破った
ヨコドーリ教授は
学会を追放されたのでした。
その後 桃太郎は
インディーナと共に
世界中の秘宝を探す冒険を
続けました。
一方で 学会を追放された
ヨコドーリ教授は
鬼ヶ島で 鬼どもの指導者となり
桃太郎と インディーナの邪魔を
し続けました。
その冒険と 戦いについては
また 別の物語として話しましょう。
おわり
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