6
隈田は大道寺から連絡のあった方角まで飛行していた。だがその途中耳元に違和感を覚えた。
「何?この不愉快なのは」
すると耳元に何かが掠めるような感覚を覚えた。隈田はとっさに防御の体勢を取る。すると背後から何かが近づいてくる気配を感じ、その身を翻した。
「・・・はく製?しかも動いてる」
はく製はその場で停止すると彼女の方へ向きを変えた。すると目の前に日霊連の社員証を掲げた男が現れた。
「お前が噂のアークエンジェルか。大道寺と何を企んでいる?」
「どいつもこいつもあたしをその名前で・・・もういい加減にして!」
隈田は翼から羽を男に向けて飛ばした。だが次の瞬間、男は姿を消し、代わりに先程の鳥のはく製がその場に現れた。
「逃げた?!」
隈田は高度を下げて男を探した。だが余程離れた場所にいるのか、すぐには見つけることが出来ない。すると頭上から先程の男の声が聞こえてきた。
「どこ見てんの?俺はここだぜ?」
そう言い放って男は手に持っていた拳銃を隈田に向けて撃った。弾丸は翼に当たったが硬度の関係もあってダメージは通っていない。
「これがエンジェル計画唯一の成功例か」
そうつぶやくと男は再びはく製の姿となり隈田に突進した。隈田は躱そうとするが高速で動くはく製に対応しきれず、突進を背中に受けてしまった。はく製に激突した隈田はそのまま地面に落下した。
「・・・痛た、ったく何なのあいつ」
隈田は起き上がって物陰に隠れた。目立つ場所にいれば再び襲われるのは明確だ。少しでも先程の男をかく乱するべく薄暗い路地に入った。
長野は上空から隈田の行方を捜した。激突してからそこまで時間はかかっていない。そうなればそこまで距離は動いていないはずである。最も改造人間ともなれば話は別だが。
「確か、連中の骨もカエちゃんと同じチタン製だったっけ。まあ何でもいいや。所詮本体はホモサピエンスの域を出ないはずだから。なあカエちゃん」
長野はビルの屋上に止まっているはく製に呼び掛けた。当然はく製は何も答えない。
「さてと、村田さんは大道寺に会えたかな」
東野が角部屋の前に来たタイミングで耳元に不快感を覚えた。そこで東野は外で大道寺が交戦中であると察した。
「この不快感・・・女王蜂だな」
東野は若干の吐き気を催しながらも角部屋に突入した。表の表札には「遠藤」と書かれている。中にはパソコンの画面と睨めっこしている若めの男が座っていた。彼が遠藤なのだろう。彼は特に動じることもなく手元にあった拳銃を東野に突き付けた。
「随分肝の据わった野郎だな。誰からもらった」
「うるさい!邪魔するな!」
そう叫んで遠藤は引き金を引いた。だが東野はそれを躱して姿を消した。急に姿が消えたことで遠藤は動揺したが今度は近くにあったトマトジュースを部屋の中でぶちまけた。その液が東野に少しだけかかったことで居場所がばれ、遠藤はそこに向けて再び銃を撃った。弾丸は東野の頬を掠めたがすぐさま彼は詠唱を放った。
「眼前の敵を縛り給え。拘束術其の一縄」
遠藤は縄で縛られた。隙が生まれたことで東野はすぐさま彼の持っていた拳銃を叩き落として肘鉄を食らわせた。
「畜生!あのクソッタレ課長がぁ!」
「どういう魂胆だ?どうせ課長からパワハラとかそんなところか?」
「あの野郎・・・俺が会社の備品とっただの言いがかりつけやがって!それで俺の給料カットしやがった!」
「ああバカバカしい」
東野は遠藤の胸倉を掴んで問い詰めた。
「この銃と襲う道具は誰からもらった?言え!」
「沢田って奴の事だろ?でも俺は代理人としか会ってない・・・だからどこにいるのか知らねえ!本当だよぉ!」
すると東野は机の上にある領収書を目にした。そこには今回使ったPの料金と請求先の住所が書かれていた。
「おいあんた、その領収書はなんだ?住所書いてるじゃねえかよ」
「あ、えっと、それはその・・・支店というかその・・・」
遠藤の態度がしどろもどろになってきた。
「まあいい、話は後でたっぷり聞いてやる。言っとくけどカツ丼無しな!」
そう言って東野は彼の腹部を殴って気絶させた。
「・・・さてと、人材教育課にばれる前に逃げるか」
中島達は西野の付近まで車を走らせていた。
「ここら辺あんまり来ないから新鮮だな」
「何のんきなこと言ってるの?その八田って人探すんでしょ」
「まあそうだけど」
すると上空に人影が見えた。背中には翼が生えている。南沢は不思議そうにそれを見た。
「なあ、天使っているんだっけ?」
「何言ってるの?そんなわけ・・・あれ?」
中島もその人影に気づいたようだ。するとその人影が何かに激突して落下していく。
「どうする?一応見ておくか?」
「どうしたのさ?あんたの目的と関係ないでしょ」
「そうなんだけど・・・何か引っかかるんだ」
南沢は中島からもらった資料の内容を思い出していた。彼の父の事件後、大道寺という男がエンジェル計画の生き残りをさらって逃亡したという。だが肝心のエンジェル計画についての記載はほとんどなかった。書いてあった情報と言えば人工的に妖霊術」を持った改造人間を作るといったこと程度だ。だがそうであればなぜわざわざ「エンジェル」などと名付けるのだろうか。まさか本当に天使でも作ろうとしていたのではないだろうかと南沢は読みながら考えていた。すると目の前にその「エンジェル」らしき存在が目に飛び込んできた。ひょっとすればあれに接触すれば何か情報が得られるかもしれない。
「多分だけど、さっきの資料にあった大道寺にさらわれた人と関係があるかもしれないんだ」
「なんでそう思うの?」
「男の勘って奴」
中島には理解できなかったが対象がすぐ目の前に近づいてきているのを確認したため、一旦車を停めた。
「路地に入ったよ」
「あそこか、ちょっと出てくる」
南沢は車から降りて彼女の後を追った。路地に入るとその女は何やら上空を注意深く見ている。
「・・・あの」
女は振り向くととっさに羽を飛ばしてきた。先程の交戦もあって気が立っているのだろう。南沢はそれを躱して続けた。
「待って!あんたの敵じゃない!・・・多分・・・俺は大道寺って人と八田って人を探してる」
その言葉を聞いて女は話しかけた。
「大道寺?あなた何者?日霊連?」
「違う。むしろあいつらの敵だ。・・・って、あんたは」
暗がりでよく見えなかったが目が慣れてきたのか、女の顔が判別できるようになった。
「まさか、北広の時の」
「あの時の子じゃないの。どういうつもり?」
南沢は深呼吸して話し始めた。
「5年前、俺の父さんが事件を起こした。それから俺は父さんの仇と父さんの行方を追っている。北広の時のあいつは父さんの仇の一人だった。でも他に父さんを苦しめた奴がいる。そいつを追っているんだ」
「5年前・・・ひょっとして大道寺があそこを辞めるきっかけになった事件?」
「それは知らないけど・・・俺は父さんがあの後どうなったのか知りたい。だからそれを知ってるかも知れない大道寺って人と話がしたいんだ」
隈田は南沢の顔をじっと見た。表情からして嘘はついていない様子だ。
「・・・あなた、何でここに来たの?」
「え、連れが車で」
「なら乗せて行って。あいにくあたしも追われてるのよ。いいでしょ?」
「え、ええまあ」
南沢は彼女を後部座席に乗せた。
「悪い、一人増えた」
「別にいいけど、後ろ狭くないですか?」
「乗れるだけありがたいわよ。それよりこのアパートまで」
隈田は中島に住所の書かれたメモを渡した。中島はナビを登録するとそれに従って運転を再開した。
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