5

 東野と大道寺は発寒にあるアパートにたどり着いた。見たところ3階の角部屋から残穢が放たれているようだ。

「あの部屋だな。どうする?お前が透明になって忍び込むか?」

「いや、これだけの代物ってことはどうせ沢田が嚙んでるに決まってる。何体かFを護衛に付けてるはずだ」

「そうなると・・・俺に正面突破させてその隙にってわけだな」

「そうすりゃお前はたまたまFに襲われた馬鹿ってことにできる」

その言葉を聞いて大道寺は笑った。

「昔っから人使いの荒い奴だなお前!ならお望み通り」

そう言って大道寺はアパートへ駆けて行った。その様子を東野はどこか懐かしそうに見つめていた。

「・・・そうだな、お前も昔から手荒な奴だ」


 八田はしばらく経ってようやく目覚めた。周りには高橋の他に彼の部下と思われる社員がいる。八田は起き上がって外を確認するが既に部下は誰もいなかった。すると島本が戻ってきた。

「八田課長、お目覚めですか」

「ああ面目ない。えっと東野と上坂は?」

「東野は先に犯人の居場所まで向かいました。それを上坂が追ってます。あのスーツ結構ジャンプできますね」

そう言って彼女は八田にスマートフォンで撮影した上坂の様子を見せた。

「これがバッタの跳躍力か・・・三好課長って本当にヒーローもの好きなんだな」

「ヒーロー?バッタがですか?」

「おいおいバッタと言えば仮面ラ〇ダーだろ?君だって見てたんじゃないのか?」

「すいません、私の世代バッタというより電車だったので」

「あああれか・・・ってそんなことより!あの二人に任せても大丈夫か?ここは俺達も」

「それには及びませんよ」

その時、オフィスの外から聴きなれない声が聞こえてきた。声の方向を向くと日霊連の社員証を下げた中年の女性が佇んている。

「えっと・・・それはどういう・・・って村田代理?」

そこにいたのは人材教育課の村田と上野だった。

「お、お疲れさまですお二方!一体どのようなご用件で?」

「まあそこまで肩肘張ることはありません。丁度我々に盾突く不埒者を彼女と追っていたところあなた方の任務先に赴いたというわけです」

上野は相変わらず穏やかな口調で語りかけた。

「そうですか。それより皆さんが赴くとはやはり大道寺の」

「それもそうですが・・・それ以外にもいるんですよ、我々の内側から組織を腐らす愚か者が」

「愚か者?」

「実は今朝、第三実働課の者に化けた何者かが札幌支部に潜入して資料を盗んでいったらしいのです。そちらは私の部下に任せているのですが・・・問題は、誰が大道寺に情報を流しているか、ですよ」

八田は妙な緊張感に襲われていた。上野の口ぶりは誰が聞いても穏やかなものに変わりはない。だが彼の腹の中は決して読むことが出来ないそこ知れなさを秘めている。

「・・・上野課長、まさか、私の部下を疑っているのですか?」

「こうなった以上あなたも疑わざるを得ません。それに、大道寺と東野代理は同期であったと聞きましたが」

「まさか、彼を疑っているんですか?」

すると上野のスマートフォンに着信が入った。相手は長野からだ。

「はい・・・おやそうですか。では村田代理を向かわせます。・・・はい、お気をつけて」

そう言って彼は電話を切った。

「大道寺の居場所が分かりました。今発寒にいるようです」

「上野課長、ここは私にお任せを」

「ええ村田代理、お気をつけて」

そう言って村田は社屋を後にした。一人残った上野は再び八田に問いかけた。

「どうでしょう、最近東野代理の動きにどこかおかしな点はありませんでしたか?」

「・・・いえ、私の知る限りそのようなことはありません」

「・・・そうですか、ではこちらも地道に調べていくとしましょう」

そう言い残して上野は踵を返した。すると八田は上野に言い放った。

「私の部下は!・・・この仕事に誇りを持っています。ですので・・・信じてやってください」

上野は立ち止まって彼の言い放った。

「・・・八田課長、貴方の役割は信じること、ですが我々の役割は疑うこと。それをお忘れなく」


 南沢と中島はベッドの上にいた。彼女はメイド服を脱がされて下着姿にされていた。

「ちょっと・・・お父様の復讐は?」

「まずはあんたを抱いてからだ」

南沢は中島のブラジャーをはぎ取って彼女の乳房に吸い付いた。舌で乳首を転がしているうちに乳首が固くなってきているのがよくわかる。

「ねえ南沢は・・・復讐を終わらせたらどうしたいの?んん!」

「どうせまともな人生なんて遅れるわけない。沢田の駒にでもなるさ。あんたみたいにな」

「別に・・・私だって好きでここにいるわけじゃない」

すると南沢のスマートフォンに着信が入った。相手は先程連絡を入れた田尻からだ。

「はい」

「田尻だ。君の探している大道寺と八田だが、今西区西野と発寒にいる。この機を逃すとまたチャンスがあるか分からないぞ」

「そうか・・・位置情報を送ってくれ」

そう言って南沢は電話切った。

「・・・中島、発寒まで車を出してくれ」


 アパートに入ると案の定護衛用のFが3体部屋の前に佇んでいた。

「やっぱりな。まあいいや」

大道寺は拳に妖霊気を込めるとFの顔面にパンチを繰り出した。それと同時に右横にいたFが大道寺に蹴りを入れてきた。だが大道寺には効いていない。

「ったく、もうちょい金出していい奴買っとけ」

大道寺は突進してくるF2体に向けてラリアットをかました。攻撃を受けたFはそのまま機能を停止した。

「さてと、犯人の方は頼むぜ、相棒」

「元、相棒だろ?大道寺」

そう言って東野は姿を消した。大道寺はそのままアパートから出て隈田に連絡を取ろうとした。だがその時言いようのない緊張感に襲われた。

「・・・隠れてねえで出て来い」

その刹那、背後から謎の高周波が放たれ、大道寺の三半規管を狂わせた。バランスを崩した大道寺はその場に膝をついた。

「気配を察知してもそのザマなら意味ないわね、この裏切者」

アパートの物陰から村田が姿を現した。

「・・・女王蜂、久しぶりだな」

「懐かしいあだ名だねぇ、研修時代を思い出すよ」

そう言うと村田は「はっ!」と大声を上げて高周波を出した。大道寺はとっさに耳を塞ぐも、間に合わずに再度攻撃をもろに食らってしまう。

「伊達に20年間総務部やってるんじゃないんだ。お局舐めんな!」

「へっ、相変わらず女王気どりだ」

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