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島本からの連絡を受けて八田と上坂は車から飛び降りた。社内に入るとカッターナイフを持った伊藤が東野と島本に詰め寄っている。
「島本、どういうことだ!」
「八田さん!Pにやられています!」
すると伊藤はカッターナイフを振り下ろして島本を襲った。だが島本はそれを防ぎ、右足でローキックをかました。だが伊藤には効いていない様子だ。
「こいつ、ただのPじゃないな」
東野はメール画面を見た。すると東野に見られたのを確認したかのようにディスプレイから電撃が放たれた。東野は感電したが何とか気絶せずに済んだ。
「おい伊藤!どうしたんだ!」
高橋は叫んだ。すると伊藤は島本の腹部を殴って返した。
「そうだよなぁ、辞めた人間の事なんか一々覚えちゃいないよなぁ。あんたのせいで苦しんだ人間の事なんかよお!」
そう言い放つと伊藤は腕から電撃を放った。電撃は高橋に直撃するところだったが上坂が間一髪割り込んで何とか防ぐことが出来た。分が悪いと感じた伊藤はそのまま社屋の窓ガラスを突き破って逃走した。
「クソ!追うぞ」
八田がそう叫んだ瞬間、窓の外から電撃が放たれて八田に直撃した。島本と上坂は気絶した八田を置いて彼を負った。その様子を見て東野は一人つぶやいた。
「・・・やってくれるぜ」
大道寺達は会社のすぐ目の前まで来ていた。
「このビルの3階らしいよ」
「ほう、随分といい所に構えているな。大したこともしない業種のくせによ」
大道寺がそう愚痴をこぼした瞬間、目の前の窓ガラスが割れ、何者かが飛び降りる光景が飛び込んできた。
「おいおいマジかよ」
大道寺は飛び降りた箇所へ車を走らせた。するとそれを追うかのように装甲を着込んだ姿の人物が飛び降りてきた。
「なんだありゃ。日霊連にあんなのあったのか?」
「それより大道寺、東野がまだ会社の中にいるみたい。あたしはあいつを追うから」
「ああ、任せた」
大道寺は適当なスペースに車を停めて3階へ駆けのぼった。隈田も翼を生やして上空から逃げた男を探した。
東野はメールの来たパソコンをもう一度確認した。今度は電撃は襲ってこない。そのことから先程の攻撃は伊藤によるものだと推測した。すると大道寺がそばまで駆けてきた。
「遅かったじゃないか。獲物はもう逃げたぞ」
「そっちは小夜子に任せてる。それよりどういう奴なんだ?」
東野はパソコンのディスプレイを彼の方へ向けた。
「さっき飛び降りた男はこの画面を見た瞬間に苦しみだした。その後人が変わったかのようにこの高橋って男に襲い掛かった。多分Pだ」
「メール経由で寄生することが出来るってことか?トロイの木馬みたいだな」
「ああ。俺達もこのパターンは初めてだ」
大道寺は改めてディスプレイを覗き込む。すると彼は懐からルーペを取り出した。
「・・・メール経由なら、残穢は電線を伝って流れる。そう思わないか?」
「まあ、理論上はそうなる」
「でもこいつは電線を伝っていない。代わりにおかしな方向に向かってる」
残穢が向いているのは窓ガラスの方でもなく、全く関係のない方角だった。それを見て東野は何か気づいたようだ。
「・・・まさか、この方角にメールの送り主が?」
「可能性は十分にある。俺たちはこっちに向かおう」
上坂と島本は逃走した伊藤を追っていた。伊藤は住宅地付近まで逃げると走るのをやめ、上坂らと対峙した。
「もう逃げるのは止めてください。今のままではあなたまで犠牲になってしまう!」
だが伊藤は不敵な笑みを浮かべて上坂に言い放った。
「別にこいつをどうしようなんて思ってねえよ。その代わり俺の邪魔をするな」
そう言うと伊藤は腕から電撃を放った。上坂はそれを正面から受け止めて弓を放った。放たれた妖霊気は伊藤に命中したがそれでも彼は動じる様子はない。
「流石だな・・・でも効いていないだと?」
伊藤は地面を蹴って島本に殴りかかった。島本は受けの体勢を取って伊藤の攻撃を受け流したが、彼の拳に触れられた瞬間に彼女の体に電撃が走った。電撃の影響で島本は気絶した。
「島本さん!クソ!」
上坂は再び弓を構えた。しかし伊藤もそれを察知したのか、再び電撃を放とうと上坂に手を向けた。すると上空からの気配に気づいたのか、上空に向けて電撃を放った。
「やべ、気づかれた!」
隈田は翼で電撃を食い止めると伊藤に向けて鋼鉄の羽を放った。伊藤は羽を避けるがいくつかが彼の顔を掠めた。それと同時に伊藤本人の人格が一瞬だけ取り戻された。
「んん・・・誰だ・・・こんなことしやがるの」
それに気づいた上坂は伊藤に駆け寄った。
「待ってろ、今助ける!」
上坂は腕からP用のワクチンを取り出した。するとそれに気づいたのか、再び伊藤の意識が消えて上坂は電撃を食らった。その拍子に彼はワクチン入りの注射針を落としてしまった。
「邪魔するなよブリキ野郎」
伊藤は上坂の胸倉を掴んで貫き手を食らわそうとした。するとその刹那、隈田が彼の元に急降下して攻撃を防いだ。
「やっぱりPね。ならこいつで」
隈田は翼から羽を一つ引きちぎって剣に変化させると伊藤に斬りかかった。伊藤は懲りずに電撃を浴びせるが彼女には効いていない。
「そんなの実験室で毎日食らってたわよ!」
伊藤は踵を返して逃走を図った。だが隈田が彼を背中から斬り、彼にとりついていたPを分離させた。
「さてと、起きなさい坊や」
隈田は倒れた上坂を叩き起こした。上坂は連続して電撃を浴びていたのでかなりダメージを負っている様子だ。
「生身ならとっくにあんた死んでるわよ。いいもんもらったじゃない」
「・・・あなたは・・・あの時の」
上坂は隈田と以前遭遇したことを思い出し、腰から拳銃を取り出した。
「あなたは大道寺の仲間ですね・・・それなら、今すぐ我々に同行願います」
「あたしの事より、後ろに倒れている民間人をどうにかすべきじゃないの?」
「は?」
すると気絶していた伊藤が立ち上がった。どうやら意識を取り戻したようだ。その様子を見て上坂は思わず彼の元へ駆け寄った。
「大丈夫ですか?!」
その隙を見て隈田は上空へ逃げようとした。だが島本の放った弾丸がそれを制した。
「待ちなさい。いくら人助けをしたってあなたたちは逃げられないわよ」
どうやら島本は意識を取り戻したようだ。隈田はため息をついた。
「あなた、ついこの前まで総務にいた子でしょ?そんなやわな子があたしに勝てるとでも?」
「言ってくれるわね!」
島本は引き金を引いて彼女の脳天を撃ち抜こうとした。だがその軌道を読んだ隈田はそれを躱す。しかし彼女の放った弾丸は急に軌道を変え、隈田の脳天へ再び向かっていった。それを察知した隈田はすぐさま上空へ飛びあがるが躱しきれず、彼女の右肩を掠めた。
「軌道を変える妖霊術、少し厄介ね」
島本の持つ妖霊術は「ワインディングロード」、文字通り曲がりくねった道のように弾丸の軌道を変化させることが出来るものだ。弾丸の軌道は対象に命中するまで追尾することが可能であり、生身の人間にとってはかなり厄介な術である。しかし弾丸の威力などを底上げするような能力は持っておらず、言ってしまえば決定打に欠ける術ともいえる。島本自身もそのことを承知しており、術に頼らない戦闘スタイルをメインとしている。
「ああっもう、これじゃあ届かない!」
隈田は島本の拳銃が届かない高度まで浮上していた。
「上坂、こいつにPを寄生させた奴を追うよ!」
「は、はい!」
上坂は左腕のデバイスを操作して東野からの連絡を確認した。どうやら寄生させた犯人の方角の検討がついたらしい。
「東野代理は今発寒の方面に向かってます。そこに犯人がいるらしいです!」
「分かった。とりあえず社用車を」
「いや、こいつで追いかけます」
すると上坂は勢いよくジャンプした。あまりの勢いに上坂も最初は戸惑うが三好からのアドバイスを信じて何とか着地した。
「はあ、半月板が無事でなによりだぜ」
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