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 江別の沢田の邸宅にたどり着いた南沢は中島からもらった資料に目を通していた。そこにコーヒーを持った中島が歩いてきた。

「何かめぼしい情報はあった?」

「いや・・・基本的に俺が知ってる情報がほとんどだ。あの鈴木とかいうクソ上司のせいで親父は犯行に及んだんだ。・・・あれ?」

「どうしたの?」

「確か日霊連に捕まった人は月形にある監獄に収監されるはずだ。でも親父がそこに連れられたっていう記載がない」

「どういうこと?」

南沢は必死にページをめくった。だが彼の父のその後に関する情報が一向に出てこない。

「・・・あいつら、何か隠してるんじゃないか?」

「確かに妙ね。でもこれ以上どう調べる?また潜入してみる?」

「その方がいいか」

すると中島のスマホに着信が入った。電話の主は沢田の部下の田尻という男だった。

「お疲れさまです」

「ああ中島、お前の潜入がばれた。しかも相手は人材教育課だ」

「え・・・」

人材教育課、中島もその名前は沢田から聞いたことがある。とにかくその部署に喧嘩を売るのは悪手であると。

「今後はあまりあの近辺には近づかない方が良いな。連れの男にもそう伝えてくれ」

「・・・了解です」

電話を切ると南沢は一つのページを凝視していた。

「ごめん、やばい部署に私の潜入がばれた。これ以上あそこに入り込むのは」

「いや、それよりも何とかなりそうだ」

そう言って南沢は先程まで見ていたページを彼女に見せた。そこにはある男の顔写真が写されている。

「俺が北広島に行ったとき会った連中の中にこの男がいた。名前は八田っていうらしい。それとこいつは、あそこで俺を殺そうとした大道寺って奴。沢田もこいつには警戒しろって言ってた」

「まさか、その二人に会うつもり?」

「潜入できないなら何とかしてこの二人に接触する。運よくこいつらが任務なりに出てくれればいいんだけど」

中島は複雑そうな表情を浮かべた。


 大道寺は新しく買ったアウトランダーの中で昼寝をしていた。この日も東野から札幌市内で呪物絡みの事案が発生したとの連絡が入った。今回の事案も被害者に非のある可能性があるため、大道寺に連絡が来た次第だ。

「・・・暑いな」

大道寺は車のエンジンをかけた。するとエアコンをつけた瞬間に妙な臭いがしてきた。

「くそ、エバポレーター洗ってなかったのかこれ!」

仕方なくドリンクホルダーに入った麦茶を飲んでいると隈田が戻ってきた。

「あんたエアコンも無しで死にたいわけ?」

「それ以上にエアコンが臭いんだよ。今度エバポレーター洗ってもらうわ」

「あっそ、それよりも東野達今西野辺りにいるらしいよ。ほら」

隈田はスマホの位置情報を大道寺に見せてきた。場所は丁度西区西野のコンサルタント会社を指し示している。

「会社の元従業員がここのコンサル会社に先月から変なメール送ってたんだって。それで今日辺りに襲うってメールが来たらしいよ」

「ほう、犯人自ら指定してくれるとは随分と親切な奴じゃないか。今回もちゃちゃっと済ませようか」

「そうね」

大道寺は隈田にキスをすると車を発進させた。もちろんエアコンはつけていない。

「それにしても暑いわね。本当にここ北海道?」

「台風が来ないだけマシだ。それに俺はそこまで暑いのは嫌いじゃない」

「あたしは無理。臭い酷くてもエアコンつける」


 八田達は社用車の中でコンサル会社の外に待機していた。そもそもの始まりはこの会社に勤務する高橋という人物への誹謗中傷からである。それ自体は1カ月前からメールを送り付けられていた。だが当の高橋本人は心当たりが全くないらしい。しかし3日前、今日この日に高橋を呪い殺すというメールが送られてきた。そこで八田達に出動の依頼が来たというわけである。

「八田課長、本当に来るんでしょうか?」

当然のことながら上坂は半信半疑だった。まずご丁寧に日時を指定してくること自体が妙な話である。それもその日の前に襲われたという報告も無い。本当に憎いのであればもっとばれない方法で対象を襲うはずだと上坂は思っていたのだ。

「来るかどうかが分からん。今俺たちがやるのは対象の人物を守ること。それ以外は考えるな」

「・・・はい」

「それより、今のうちにそのスーツ装着しておいた方がいいんじゃないか?」

八田は後ろにあるスーツを指さした。つい先日開発部の三好から上坂に送られた戦闘用スーツ通称「アキレス」だ。装着することで上坂の動体視力の向上とジャンプ力の増強が見込めるという。

「そうですが、動きづらいんですよね、これ」

「戦闘でそんなこと言ってられないだろ。それにそのスーツ、確か空調効いてるそうじゃないか」

「それだから余計着づらいっていうか」

「常に万全なコンディションを整える、それが俺達にとって大事なことだ。気にしないで着ておけ」

「分かりました」

 一方島本と東野は会社内で待機していた。当の高橋は自分のデスクに座っている。東野の目から見ていたって冷静さを保っている様子だ。

「・・・随分と落ち着いておられますね、高橋さん」

「どうせガタガタ震えていたって問題は解決しないですよ。それに自分としても襲われる心当たりがない」

その言葉に島本が反応した。

「高橋さん、今現在勤務している社員の方々とはうまくいっているとはお聞きしましたが、退職された方とはどうでしたか?」

「退職?・・・」そんなこと言われても、いかんせんうちは出入りが多い所ですし、そんなこと一々覚えてはいません」

高橋は困惑しながらもそう答えた。というよりそう答えざるを得なかった。

「そうですか・・・何かヒントになると思ったのですが」

島本は残念そうに答えた。すると高橋の席から離れたところに座る社員が声を上げた。

「た、高橋課長、例のメールです!」

「何?!」

高橋は思わず立ち上がった。するとメールを確認した社員が急に胸を押さえて苦しみだした。

「うう・・・止めろ・・・入ってくるな!」

「お、おい伊藤君、大丈夫か?!」

東野と島本は伊藤に駆け寄った。すると彼は二人を振り払い、高橋を睨みつけた。

「・・・予告通り呪いに来たぞ、高橋さんよぉ」

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