第4話

さぁ!答え合わせをしよう。

私の名はランスロット、皇帝の第三皇子である。

隣国の王国に子爵令息と偽り留学をしていた。

皇子としてのお客様扱いを望んでいないのでその様な形で隣国へと留学した。

帝国では私が優秀だという事で皇太子へと推す者どもも居るが、あくまでも学問の上での話だ。

第一皇子である上の兄上は将来皇帝に一番相応しい方だと思っている。

下の兄上は施政者には向かない。

恐らくは騎士として上の兄上の治世を支える者となるのではないかと思う。

本人もそれを望んでおり、早々に武門の侯爵家へと婿入りを決めている。

私は皇弟として残る事となるのであるが、将来を見据え隣国に留学をしたという経緯もある。

後継者争いに巻き込まれない様にという意味もあるので留学が決まった時には喜んだ。

さて、留学して驚いた。

私以上に学問に長けた者が居た。

伯爵令嬢で将来は婿を取って家を継ぐという。

実に残念なことだ。

彼女が家を継ぐ事が無いのであれば私の婚約者へと望んだだろう。

聡明な彼女が伯爵を継げば家は安泰だろうと思うし、彼女の父が優秀な後継者を手放すとは思えないので諦めるよりないだろう。

しかし、学生の間は・・・

彼女は問題のある妹が居た。

聞くところによれば、彼女の持ち物を欲しがり奪っていくという。

人の物を欲しがる者は我儘な貴族令嬢によく見掛けるが、姉の物を奪う者は珍しい。

普通は真似て同じ物を買ったり、対価を支払い譲って貰ったりするものなのであるが・・・

気の毒に思い彼女を慰めることはよくあった。

婚約者から貰ったという特別な記念のペンダントを奪われた時に落ち込みが何時も以上で胸の辺りがチクリとしたような、モヤモヤしたような、そんな気持ちからつい彼女に言ったのを覚えている。


「何時も付けていたペンダントを今日は着けていないのだな」

「いつものやつよ」

「ああ・・・それは・・・ご愁傷様・・・」


彼女は落ち込みつつも諦めたような苦笑いだ。


「奪えない物もあるさ」

「え?」


不思議そうに私を見詰める彼女に目を奪われそうになる。

慌てて誤魔化す様にお道化てこめかみをトントンと指差す。


「そうね!それは奪う事は出来ないわね」


彼女は打てば響くというようにその動作で私の意を酌んでくれる。


「それに、奪われるなら奪われる以上の物を手に入れれば良いんじゃないか?」


私は彼女に商会設立を提案した。

彼女は興味を持ち、早速とばかりに商会を立ち上げ、優秀な学院に通う生徒たちを巻き込み商会を大きくした。

私はよくアドバイザーとして留学期間を過ごし、期間が終わると国元へと戻った。

もう、彼女に会えないのは寂しいので、帝国に支店を出す際には協力するので尋ねて来て欲しいと伝え、第三皇子である身分を明かした。

彼女は驚いていたが、別れを惜しみつつ、必ず尋ねる事を約束してくれた。

そして、歳月は流れ、卒業から3年後、私の許にチューズ伯爵の後継者を名乗る人物が訪ねて来た。

そう!彼女だ!!

私は逸る気持ちを抑えチューズ伯爵の後継者の居る面談室へと向かう。


「初めてお目もじ致します。チューズ伯爵家のルピナスと申しまする」

「初めてお目もじ致します。チューズ伯爵家のルピナスの夫のギルバートと申します」


チューズ伯爵の後継者を名乗る人物は彼女ではなかった!!

その後は何を話したかよく覚えていない。

まぁくだらない自慢話や惚気話で聞く価値も無かった。

私は急ぎ彼女の現在を調べることとした。

調べると、彼女は妹に婚約者を奪われ、後継者の座も奪われたようだ。

そして、チューズ伯爵家の家臣の家に後妻として・・・

私は急ぎ王国を訪ねることとした。

彼女に会う為だ。

しかし、彼女は世を儚んで・・・

彼女の眠る場所で呆然と立ち尽くす。

彼女に対する理不尽を受け入れる事は出来ない!!

私は国元に戻ると、皇帝である父と皇太子となった上の兄上に願い出た。


「皇家の秘宝の一つ、時戻しの魔道具を私にください」


父も兄も事情を聴くと憐れんでくれ、壊れていることもあり、私に下げ渡してくれた。

壊れているという魔道具を修理する事に心血を注ぎ、10年の歳月を費やし完成を遂げる。

そして、いざ、あの懐かしき彼女の許に!!

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