1201 Mbpsの夜明け
「懐かしいな―。」
二階のPCルーム。ハイエンドなデスクトップゲーミングPC、GALLERIAの漆黒の画面に、あの頃の自分が打ち込んだ文章が映し出されている。主人公は「黒瀬智哉」。タイトルは『黒瀬智哉の悪魔的日常』。それは私のオンライン小説だった。
私は、愛用のフットレストに足を乗せ、椅子の背もたれに深く体重を預けた。久しぶりに自分で読み返してみる。
「……あの頃の私は、今の私とは違っていた―」
とても野心的で、暗中模索の中。作家という道を歩み始めたばかりだった。
まあ、今でもプロの作家にはなれてないけどね。でも、ここ数日の快適さを思えば、気分は悪くない。
「やはり、通信環境が爆速になると快適だわ。この速度のSNS更新に付いてこれるとかね」
少し前までこれが不可能だった。
まず、Google Pixcel(スマートフォン)で料理中に写真と動画を撮影する。それをその場でXに写真と撮影ファイルをアップロードして、即座にSNS更新。―はい。これがまず無理だった。
Google Pixcelは高性能なカメラが搭載しているため、写真や撮影データがそもそも重い。たった10分の映像が2 GBを超える(設定で落とすことは可能)。この写真と撮影データをそのままモバイル通信でスマートフォンからX(旧Twitter)に投稿しようとすると、ずっとローディング中だ。
5分経とうが10分経とうが、1時間待とうが無理。そのうちタイムアウトになり、投稿しようとしていた記事はXの『下書き』行きへ直行だ。一時保存される。
そして、このメインマシン(GALLERIA)からXに写真や映像を投稿しようにも、つい最近までルーターがなかった。
モデム直付けでは通信速度が安定せず、Xの表示そのものができない。そもそも、そのモデムすらつい最近のこと。高性能で最新モデルのデスクトップゲーミングPCは、インターネットに接続出来ないただの箱と化していた。
それが今では、キッチンで料理をしながら、その場で撮影した写真や映像を秒でXに投稿が可能。
少し前まではそれが出来ずに、電波が安定するまで数時間待つか、愛車を走らせてマクドナルドのフリーWi-Fiへ行くしかなかった。SNSに写真や映像ファイルを上げるだけのことに、撮影してから数時間後という手前が掛かっていたものが。今ではその場で出来る。
昨夜の私はこのように、料理をしている最中に二枚の写真と動画を撮影し、それをまずキッチンの前からダイレクトにXに投稿した。
それが今のXのリポストである。
―で、このYouTube動画に続く。Xに二枚の写真と短い映像ファイルを投稿後。Google Pixcelによる撮影は続いている。
この『無題のビデオ012』は、その後に制作された動画である。内容を観ればわかる。
この一本の動画は、日本のYouTuberでは絶対に作れないレベルの動画であるが、それを即座に作ってしまえる今のパソコン環境―。GALLERIAはこれまでインターネットに接続されていなかったので、それが技術的に出来なかった。
というのも動画編集ソフトがサーバー連動型だったからである。サーバー連動型のソフトウェアの利点は、高性能なサーバー内にファイルを置いてシステムを稼働させて動画編集を行う。そのためローカル環境(パソコン内)で動画編集をするよりも速くなる。そのために開発された技術だが、オフラインになった途端に機能が果たせなくなる。
――現在時刻は朝の5時台。私は、二階の寝室の布団の傍らに身を投げた。
只今の時刻は―。
5:27
10月20日(月)
枕元のDELLモニターに映る画面。私は布団から起きて、たった今。Google Pixcelで撮影したこの写真を、リアルタイムで即座にXにポストした。これが少し前までは出来ない通信環境だった。
で、現在の私の寝室には。このように**HiM.3(ノートPC)**を布団の傍らに置き、1080HDのPCモニターに接続させて、その画面を出力させている。
このノートPCは、Windows 10だが。スリープ状態にしているため、即座にパソコンの起動が出来る。
そのノートPCは、新しく導入したルーターの**5 GHzのホームWi-Fi**に接続しているため、そのまま爆速インターネットが可能。
メインマシン(GALLERIA / Windows 11)、Google Pixcel(スマートフォン)、ノートPC(FMV / Windows 10)。これらはクラウドで同期させているため。例えば、Google Pixcelで撮影した写真や映像ファイルをメインマシンやノートPCで引っ張り出してSNS投稿、もしくは写真加工や動画編集が今では可能になっている。
ノートPCで写真加工だけやって、その続きをメインマシンで行い、そのまま動画編集をしてYouTubeに動画投稿、ということも今では可能になった。
「ところでこのルーターは優秀だね」
手に取った赤い箱に視線をやる。BUFFALO WSR-1500AX2L。この黒い小さな箱一つで、世界が変わった。
まず**Wi-Fi 6に対応していることが素晴らしい。Wi-Fi 6は、Wi-Fi 5の約1.4倍の速度だ。技術的に言えば、同じ80 MHzの5 GHzのWi-Fi帯域だとしても、Wi-Fi 5では理論値が866 Mbpsだったものが、Wi-Fi 6であれば理論値で1201Mbpsになる技術である。(※これは理論上の最大値であり、実際の通信速度は回線速度や環境に依存するが、体感速度を劇的に向上させたのは間違いない。)**
今は二階のPCルームのメインマシンのすぐ傍に設置しているが。寝室の『HiM.3(ノートPC)』にもWi-Fiの電波は十分に届く。一階にも電波が届くね。
だがさらに通信状態を安定させるために、これと同じルーターを購入し、それを中継機として一階に設置しメッシュネットワークにしてやろう。
ゆくゆくはローカル通信でのホームサーバーの構築だな。男の口角の端が上がる。
『さて。美味しいドリップコーヒーでも淹れるか。』
砂糖もミルクも無しの淹れたての苦いブラックコーヒーをやる。これが朝にいい。
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