ちょっと剣呑なバイトをしている女子高生の六町らいかは、深夜に雨宿りで入ったライブハウスで遭遇したガールズバンド『ライカーズ』の曲に衝撃を受ける。しかも良く見ればそのボーカルの正体はクラスメイトの地味な少女、吠巻黒歌だった。
タバコを吸えば酒も飲み、暴力の行使に躊躇がなく同性相手に真顔でセクハラをキメるらいかは大変キャラが立っているが、もう一人の主人公である黒歌もそれに引けを取らない。外見は地味で大人しく、内面には多くのコンプレックスを抱える黒歌だが、音楽の話題になると話は別。普通ならダサくなりそうな言葉も、赤裸々すぎる世間への本音も叩きつけるように吐き出す姿がカッコいい。
この正反対な二人がライカーズを人気にするために様々な活動を始める様子が抜群に面白い。時には失敗し、対立しながらも、一歩ずつステップアップしていく姿はまさに青春!
これだけでも十分に面白いのだが、物語は後半で意外過ぎる展開を見せて、全くの別ジャンルへと姿を変える。それなのに作品の雰囲気がブレないのは、物語を彩る登場人物たちの価値観が揺るぎなく確立しているから。キャラクターの魅力がそのまま作品の面白さに直結している勢い抜群な一作。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)