第3話 お坊(暴)さん
信楽と名乗ったお坊さんは、病室に入ってくるなり僕を見つめて優しそうな顔で笑った。
「君が話にあった被害者の子ですね?私は信楽と言います...まぁ名前は覚えなくとも構いません。私が元の生活に戻れるようにしますのでご安心を」
「は、はい...おねがいします」
「さて夜川さん、早速やってしまって構いませんか?」
「先にこれから行うことの説明をしましょうか」
「おお、そうですな」
すると信楽さんは僕に向き直り説明を始めた。
「君は不思議な体験をした空間を脱してなお、未だに元凶に取り憑かれた状態なのです。今は何も無いかもしれませんが、今後元凶に何かあった際、君にまで余波が来る恐れがあります。なのでこれからお祓いを行い、君と元凶の繋がりを絶ちます」
「は、はぁ...なるほど...?」
「それでは準備はよろしいですかな?君はとにかく動かないで居ていただければ問題ありませんが」
そうは言われてもなんだか緊張するなぁ...
とりあえず、姿勢を正してビシッとしておいて...
「よ、よろしくお願いします!」
「はい、それでは参ります...」
信楽さんは柔らかな顔からスっと真剣な顔になり、手に数珠を巻き付け、腰を落とし拳を構えた。
わっすごい、法衣の下がちょっと見えたけどめちゃくちゃムキムキだよこの人!
...?
「えっ」
ちょ、まっ...
「破ァァァァ!!!!」
ビリビリと空気を揺らす叫びとともにその数珠を握りこんだ拳を振るう。
某ゲームなら僕の頭の上に赤文字で「危」って出てきることだろう。
顔に向かって迫ってくる拳を避けることも出来ずに目を閉じることも出来ずに見つめている。
走馬灯とかいうやつなのか迫ってくる拳がゆっくりに見える...怖...
あぁ...当たる、もう当たっちゃう...うおおおお...!
...?あれ?とまっ...
直後襲い来る突風、いや暴風。
世界がスローから等速に戻りながら僕の顔面に暴風をたたきつけてくる!
んぐぐぐぐ...た、耐え...無理っ!?
「にゅあぁ!?」
一瞬身体が宙に浮き、すぐベッドマットに墜落してポヨンと跳ねた。
「ちょ、ちょっと!?」
「銀!?大丈夫か!?」
お父さんとお母さんがベッドで大の字に倒れている僕に駆け寄ってきた。
「ちょっとチビったかも...」
「ハッハッハッ!大丈夫ですよご両親、今のは息子さんに憑いていた悪いもののみを吹っ飛ばしたのです。ほら銀くん、体が軽くなってないかい?」
何笑ってんの夜川さん...
それにあれで体が軽くって...
ん?おやおや?
「あっ!すごい!体かっるい!!!」
ぴょんぴょんベッドの上で跳ねてみると、これまでがまるで大岩を背負っていたみたいに体が軽い!
天井まで飛べるんじゃない?
やってみる?
よーし!
「とうぇっ!?」
ジャンプしようとして踏み込んだ足がベッドシーツに取られて勢いそのまま顔からベッドに倒れ込んじゃった...ちょっと鼻が痛い。
「こら、落ち着きなさい!」
「うんうん!元気そうですね!お身体にも問題なさそうです」
夜川さんが僕の頭をぽんぽんと叩いてニヤニヤと笑い、その反対で信楽さんは悔しそうな顔をして突然頭を下げてきた。
「本当は元の姿に戻して差し上げれたら良かったのですが、力及ばず申し訳ありません」
「えっ!?あ、いやいや大丈夫です!十分です!!」
元はと言えば運転をミスった僕が...ん?いや悪いのはちょっかいかけてきたやつだよね?
...あれ?そういえばその元凶ってそのままなんじゃ...?
「あ、あの!その元凶って...?」
「ん?ああ大丈夫ですよぉ、いまうちのエージェント達が封じに行ってますから、またあの道を通れるようになりますよ」
夜川さんは相変わらずニヤニヤケラケラしながら答えてくれた。
「さて、それでは我々はもう行きますね...あぁ!退院の手続きも済ましておきますのでちょっとこちらにサインだけ...はい、ありがとうございます」
夜川さんと信楽さんはお父さんにさささーっとサインをさせると帰り支度を始めた。
「あぁ、銀くんに言うことがあったのを忘れてました」
「僕にですか?」
「えぇ、その耳と尻尾ですが、無理に隠そうとしなくて大丈夫です」
「えっ?でもこういうの隠す組織とかじゃないんですか?」
「いえ?人に危害が及ばないようにするだけですね、例えばテレビに出て今回の話をするとかでも特に問題はありません」
「すみません、補足させていただきます、あなた自身が気にしないのであれば構いません、ただ人に知られるとあなた自身への面倒事が増えるでしょうから、そこはご自身で考えてくださいね」
夜川さんの説明に信楽さんが補足して説明してくれた。
「それでは我々はこの辺りで...また何かあったらここに連絡くださいね」
夜川さんから組織のらしい名刺を受けとると、2人はさっさと帰って行ってしまった。
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