第2話 知ってる場所、知ってる人、知らない自分

これ...僕...?

鏡に映るのは銀髪を伸ばしっぱなしにしてふくらはぎ辺りまで伸ばし、オレンジ色の瞳をした少女。

ここまでならまだ...ギリギリ分かるラインなんだけど、問題はここから。

頭の上には大きくぴょこんとした三角形の耳と、腰には中程が大きく膨らんで先端のとがったもふもふとした尻尾が付いていた。

状況が受け入れられてない僕を他所に愉快そうにぴょこぴょこゆらゆらと揺れていた。


そんな自分の姿を受け入れられずにじっと固まっていると、病室の扉がガラリと開いた。


「あ...」


顔をそちらに向けると看護師さんと目が合った。

そしてその後ろにいた人が看護師さんの横をすり抜けて僕の前までやってきた。

黒髪を後ろで結んだ、背の高そうな女性だ。


「目が覚めたかい?起きたてで申し訳ないんだけど、君って久遠 銀君であってる?」


混乱と戸惑いと不安で声が出ず、ただこくりと頷く。


「そっか...大丈夫だよ」


女性は優しく僕の頭を撫でてきた。

...誰なの...?


追い討ちのように困惑していると看護師さんの横をすり抜けて、今度は知っている人が飛び込んできた。


「銀!銀なの!?」


「ぁ...」


飛び込んできたのはお母さんだった。

僕がまたこくりと頷くとお母さんは僕のことをギュッと抱きしめてくれた。


「良かった...!ほんとに、生きててくれて...!」


お母さんは泣きながらそう言うとまた僕を抱きしめる。

何が何だか分からずずっと固まっていた僕も段々と目から涙が出てきて、気がついた時には2人抱き合ってわんわんと泣いてしまっていた。


...

.....

...


しばらくして落ち着いた僕とお母さん、それとちょっと遅れて駆けつけてまた泣いたお父さんは、あの黒い髪の女性...お医者さん兼ちょっとした特殊機関の準責任者らしい「夜川渚よるかわ なぎさ」さんから詳しく話を聞いていた。


どうやらあの日から1週間たっているらしく、当初は帰ってこなかった僕を心配して、両親が警察に行方不明として捜索依頼を出したらしい。

その後、捜索中に家の自家用車と中に居る男物の服を着たケモ耳少女が山の麓の方にある木に引っかかっているのが発見されて、保護されたらしい。

その時、車は長い年月が過ぎたみたいにボロボロになっていたとか...


そんなことがあって、推定僕の少女...幼女?を保護、入院させたはいいものの、大学生の僕が見つからないまま時間が過ぎ、念の為この少女が起きるか毎日確認に来ていたところ、僕が目覚めた...というところらしい。


ここまでは状況説明で、この夜川さんの要件はこの後だ。


「君の身にあの時、何があったんですか?」


まぁそれだろう、自分でもよくわかっていないけれど、霧のこと、崖のこと、狐のお地蔵さんのこと、神社らしき場所のこと、くぐってはいけない鳥居のこと...僕が見たもの、起きたことを全て話した。

すると夜川さんは「なるほど」と一言発したあと、黙って考え込んでしまった。


一方その頃、お母さんとお父さんは僕を撫でて、姿は変わったけどよく帰ってきてくれたと言いながらまた涙ぐんでいた。


しばらくすると夜川さんは何処かに電話をし始めた。

漏れ聞こえる内容からすると、誰かをどこかに派遣しているようだ...


さらにもうしばらくして、やっと夜川さんはこちろに戻ってきた。


「いやぁ、お待たせしてしまって申し訳ありません。少し手配に手間取ってしまって...」


「全然構わないんですが、手配...ですか?」


「ええ、銀君を日常に戻すための手配です」


「えっ!もどるんですか!?」


僕の期待に満ちた言葉に、夜川さんはハッとした顔をして申し訳なさそうに顔をゆがめた。


「あぁいや、期待させてしまって申し訳ないんですが、姿を元に戻すのは我々には難しいです。また同じような存在に姿を変えられて、幸運にも元の姿とそっくり同じに戻る...くらいしか可能性は見いだせていません」


「...無理ってことですね...」


「日常に戻る、とは?」


「姿はそのままになりますが、普通の人らしく生きられるようにします。逆に言うとそれをしなければ、我々の施設で管理されることになってしまいます」


...実験動物ってこと?

それは...やだなぁ。


「なるほど...ならばその手続きを進めてください。どんな姿になってしまったとしてもこの子は我々の子供です。普通に独り立ちして一人暮らしするならともかく、こんな別れ方は認められません」


「えぇ、そうでしょうともお父様!もちろん、手続きに必要な人員を呼んでますのでご安心ください」


そういった直後、病室の扉をコンコンッとノックする音が聞こえた。


「信楽です、入っても構いませんかな?」


「はい、大丈夫ですよー」


扉の向こうからの声掛けに夜川さんが答えると、ガラガラとゆっくり扉が開く。

その向こうにいるのは法衣と袈裟を身にまとったスキンヘッドの人物、まるっきりそのままお坊さんだった。




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ここまで読んでいただきありがとうございます。

もしお暇でしたら評価等をよろしくお願いします。


ここからですが、ホラー等はなりを潜め、コメディ色が強いものになるのでご了承ください。

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