2-3
「その後はどうなったんだ?」
男は城守に尋ねた。
どうやら、そこで話は終わってしまったようだ。
「その後の夫の姿を見た方はいなかったそうです。ただ、床に押し込められていた女性の中に上司の娘もいたそうですよ」
その報告を聞いた時、上司は一体どういう心境だったのでしょうね。
そう呟く城守の声を聞き流し、男は窓に目を向けた。
相変わらず豪雨が続いている。
時々、見える稲光が彼の脳内のとある部分を刺激している。
「しかし、なんで女性を床に押し込めていたんだろうな」
行方不明の女性は十人だった筈だ。
しかし、先程の話からすると更に被害は広がっていたのだろう。
夫が駐車場に向かっていたのは、そこに女性がいたからだろうか。
或いは、女性が女性を更に誘拐していたのだろうか。
「その答えならば簡単でございます」
―夫は妻を愛していた。夜の関係まで妻を求めていた―
「どういうことだ?」
「女性は全員、同い年でした。同じ服装、同じ髪型。まるで誰かを真似ていたみたいではありませんか?」
夫は妻だけを愛していた。
夫が幸せになるには妻がいなければならない。
「妻がいなければ妻を作れば良い、などと思ったのかもしれませんね」
そう微笑む城守の表情はとても穏やかで綺麗だった。
とても、この話にふさわしい表情とはいえない。
男は寝ようと決めた。
城守に断りの言葉を口にしようとしたとき、自然と言葉がするりと飛び出してきた。
「そういう話は好きなんだ。もっと聞かせてくれ」
いや、男は眠たいのだ。
ふかふかのベッドで眠りにつきたいのに、その思いとは裏腹の言葉が男の睡眠を妨害する。
「お気に召していただけて何よりでございます」
それでは、次はこのようなお話でいかがでしょうか?
いつの間にか男の目の前には、淹れたてのダージリンティーが置かれていた。
ダージリンティー。
男は目を細めると、そっとそれを口に含んだ。
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