第15話 望まぬ救援

 = side 結衣 =


 私は途中で合流した真央や数十人の騎士と一緒に魔法による身体強化を施して爆発音が聞こえた方向に走っていた。

 走っている最中に何回か爆発音が聞こえてきてそのたびに身震いしてしまう。けれど私たちが行かないと、いつ龍がオルトンに飛来するかわからない。


 爆発音が起きたと思われる場所に着くと巨大な穴が空いているのを見つけた。


 「うっ…!」


 穴の中を覗こうとした次の瞬間、足元に響く爆発音と共に強烈な衝撃波が吹き荒れ、土煙が辺りを覆った。

 私は風除けの魔法を展開して土煙を飛ばして中を覗き込む。


 「やはり龍が起きていたか」

 「あの、誰か人がいるみたいですよ」

 「何?」


 真央の言葉で下を見ると全身真っ黒のローブを着た人がいた。

 その人を見つけたリーダーは援護射撃の指示を出した。


 「全員攻撃魔法準備しろ」


 騎士の命令通り、各自で攻撃魔法の呪文を詠唱して魔法陣を展開する。

 全員が展開できたことを確認したリーダーは叫んだ。


 「全員、放て!」


 展開された数十個の魔法陣から一斉に色とりどりの魔法が炸裂する。

 放たれた魔法によって予想通り龍のヘイトがこちらに向いた。


~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~


 = side 涼介 =


 巨大なウォーターボールを叩きつけた後、龍は轟音を立てて地面に衝突した。

 落下の影響でかなりの土が舞い、土煙で視界が遮られる。

 すかさず魔力探知に集中して龍の動きを探る。が、地上に多数の魔力反応があった。


 「逃げ遅れたのか?いや近すぎるな」


 俺がそう呟いていると上空から多数の攻撃魔法が龍に向かって飛来した。

 ダメージは大差ないが、龍はこちらではなく上空を睨んでいる。


 「くそ。あいつらヘイトを買いやがったな」


 俺がそう考えている間に、龍はすでに膨大な魔力を貯めだしていた。おそらくドラゴンブレスだろう。

 今ドラゴンブレスを放たれると上の人たちはひとたまりもないだろう。


 俺はドラゴンブレスを放たれる前に風魔法と飛行魔法を使用した高速飛行で穴に向かう。

 そしてその場で魔法を唱えた。


 「【闇壁ダーク・シールド】!!」


 俺の目の前に黒い壁が現れた。その直後にドラゴンブレスが放たれる。が、ブレスが壁に当たった瞬間、吸収されてブレスは跡形も無く消えていった。


 全身のいたるところから出血し、魂を削り取るような感覚に襲われる。

 この魔法は敵の魔法を吸収することができる反面、魂の消費量が他の闇魔法に比べて圧倒的に多いため、一時的にこのような感覚に襲われるのだ。

 めったに使わないが故に開発してから数十年が経っても慣れないものである。


 だが、今はそんなことはどうでもいい。ヘイトを買ったバカ共を逃す必要がある。


 「お前ら何をしている。さっさと…「邪賢者だ!」」


 おいマジか。


 「邪賢者を捕えろ」


 隊長らしき人の命令によって数多の拘束魔法がこちらに飛んでくる。

 俺は飛行魔法や身体強化を用いて飛んでくるすべての魔法を回避していく。

 だが、常に回避していると龍が出てきてしまうかもしれない。俺は魔法を躱しつつ、聖魔法の結界を限界ギリギリまで魔力をこめて龍の穴に張った。


 「邪賢者め。全部躱しやがった」

 「剣で仕留めろ!」


 誰かがそう言うと今度は数人の騎士が剣で襲いかかってくる。

 俺は魔剣『ラーク』を取り出してはじめに斬りかかってきたやつの腕を斬り飛ばした。


 「ぐああっ!」


 味方の腕が斬られたせいか敵が一瞬たじろぐ。

 俺はその一瞬の隙をつくように、敵に向かって踏み込み連撃を放っていく。2人、3人、4人と圧倒的な速度と力で斬り伏せていった。


 20人ほどを戦闘不能にしたところで、残った敵が俺と距離を取って構え出した。俺も剣を構え直して再び斬りかかって行く。

 だが、俺の剣を受け止められた。

 驚いて敵の顔を見ると、そこにはいないと思っていた顔があった。


 「涼くんやめて!」


 結衣は泣きそうな顔で俺にそう言った。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る