第16話 再会

 = side 結衣 =


 龍のいた穴から、誰かが出てきた。

 その瞬間、周囲にいた騎士たちが、一斉にその人へ攻撃を始めた。

 最初は何が起きているのかよくわからなかったけど、「邪賢者だ!」という声を聞いて、はっとした。


 あれは、涼くんだ。


 気づいたときにはもう、戦闘が始まっていた。

 涼くんは、騎士の攻撃をすべていなしながら無駄のない動きと圧倒的な速度と力によって次々と斬り倒していく。


 そして、二十人ほどが倒された頃。

 私たちと涼くんの間に、一瞬の間が生まれた。


 空気が張り詰める。


 永遠にも思えるその一瞬のあと、涼くんが私に向かって斬りかかってきた。

 私は反射的に剣を抜き、受け止める。


 これまで一方的に斬っていた彼の剣が、止まった。

 仮面越しにでも、驚いているのが伝わってくる。


 思わず私は叫んでいた。


 「涼くん、やめて!」



 = side 涼介 =


 結衣の声で剣を下ろす。

 いくらとは言えども結衣に斬りかかっていれば俺は一生後悔していただろう。


 「今だ!やれ」


 結衣に見惚れていた間に後ろに回り込まれたようだ。


 さっさと結衣を連れて逃げたいところだが、穴に張った結界はあと数分もしないうちに破られてしまうだろう。結界が破られれば龍は逃げ出してしまう。


 おそらくこの騎士たちもそれを理解して攻撃しているのだろう。

 龍が復活すれば、俺を倒すどころか、彼ら自身も全員殺される。

 そして、俺が街の人を見捨てられないことも読まれている。


 俺は後ろから斬りかかってきた敵の動きを魔力探知で読み、振り向きざまに剣を振るった。

 剣は腰に命中し、相手は声を上げる間もなく地面に崩れ落ちた


 続けて残った敵には【風刃ウィンド・カッター】と【火球ファイアーボール】をお見舞いする。

 ウィンドカッターによって切断された腕をファイアーボールで炭化させることで再生できなくしたのだ。


 もう一人残っていたけど、それは結衣の親友の真央だった。

 彼女は戦う気はなさそうで、結衣のそばから離れようともしなかったので、手は出さなかった。


 敵を全員戦闘不能にしたところで足元に衝撃が来る。

 おそらく龍が結界に向かって大魔法を放ったのだろう。

 いつ破られてもおかしくないため、念のため結界を張り直しておいた。


 結衣と真央ではおそらくこの龍を倒すことはできないだろう。それに、ここにいれば確実に俺の魔法に巻き込まれて死んでしまう。

 なので2人には転移してもらうことにした。


 「結衣、真央。この魔導具に魔力をこめてくれ。俺の部屋に転移するからそこで待っててくれ」

 「わかった!」


 2人は渡した転移魔導具に魔力を込める。俺は2人が転移したのを見届けると結界を解除して穴に飛び込んだ。


 穴に入ると早速龍が襲いかかってくる。

 俺は龍を1発で仕留めるために、人が一生かかっても使いきれない量の魔力と、限界まで魂を削り出して魔法陣に注ぎ込む。


 この一撃で龍は必ず仕留める。


 「【アトミック・バースト】!!」

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