第5話 魔法の訓練
昼食を食べた後、魔法の訓練が始まった。
「まず魔法とは、空気中に漂うとされる『マナ』に働きかけることで起こすことができます。このマナは触媒のようなものなので、どれだけ魔法を使っても減ることはありません。」
魔法を使う前に宮廷魔法師と紹介されたフィリアという女性によって魔法とは何かについて教わる。
でもこれ、魔法が創作物の中でしか存在しない俺たちがいた世界の人間に説明してもわからないんじゃないの?
そんなことを考えていたのは俺だけではなかったらしい。中村が質問する。
「フィリア先生、俺たちは魔法が存在しない世界から来ました。突然マナとか働きかけるとか言われてもわからないです」
「なるほど。では、まずは魔法をお見せしようと思います。」
フィリアはそう言うと、杖を取り出す。そして杖を的に向けて呪文を唱え出した。
「【ファイアーボール】!」
(え?呪文?)
呪文を唱え終わると杖の先に火の球が出現し、的に向かって一直線に向かって行った。
ファイアーボールは的に当たると消え、的も破壊された。
「これは、ファイアーボールという魔法です。実践的な説明をすると、まず呪文を唱えながら魔法陣を作ります。次に、作った魔法陣に自らの魔力を供給することで初めて魔法が発生します。では、皆さんも打ってみましょうか。」
フィリアの言葉で実技が始まった。
~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~
フィリアから杖を一人一人受け取って、的の前に立つ。先ほどフィリアに破壊された的はもう復活している。
「では、まず教科書にあるファイアーボールの呪文を唱えて魔法陣を作っていきましょう。作り終わったら魔力を送って使ってください。」
「魔力はどう送るんですか?」
「その説明を忘れてましたね。魔力を送るイメージを作ることで送ることができます。ちなみに過去に英雄と呼ばれた大魔法使いはイメージを使って魔法を放ったらしいです。俗に言う無詠唱魔法ですが、実際に使っているところを見た人はいないので御伽話の話ですが」
ただのファイアーボールで何故詠唱していたのか疑問だったが答えがわかった。この国では無詠唱魔法を御伽話として捉えられているらしい。
「それでは実践開始です」
フィリアの言葉でみな詠唱を始める。皆が黙々と唱える中、俺はやってるフリをしておいた。
「【ファイアーボール】!」
最初に完成したのは谷崎らしい。声の大きさとは合わないぐらいひょろひょろなファイアーボールが発射された。が、的に当たる前に消えてしまった。
「最初はそういうものです。クラスが高くなるほど適応力が高いのでより強力な魔法が撃てますよ」
フィリアの説明のあと、次々にできる人が増えていく。
だが、ほとんどの人は完成した瞬間消滅するか数メートル飛ぶだけであり、15メートルほど先にある的に当てたのは今のところ結衣だけだった。
「有村さん、どうやってやったの?」
「結衣!もう一回見せて!」
周りにいた人が次々に結衣に質問を浴びせているせいで、結衣が完全に困った顔をしていた。
そんな中、中村がファイアーボールを放つ。かなり魔力をこめたのか的に当たった瞬間小さな爆発が起きた。
突然の爆発音にみんな中村の方を見てポカンとしている。
フィリアが中村に近寄って中村を褒める。
「ケントさん」
「あぁ?」
「初めての魔法であれだけの威力を出せるならかなり伸び代があります。ただし、今回は魔力を無理矢理多くこめているようなので、今後はやめた方がいいですね」
「なんでだ?」
「単純に魔力の許容量を超えてしまうと、ファイアーボールの場合、その場で爆発してしまって危険だからです。」
中村はそう言われると自分の的に戻って行った。
っと思ったのになぜかこっちに来た。嫌な予感がする。
「おい、樋口」
やっぱり嫌な予感が当たった。完全に八つ当たりじゃん。
「何かな?」
「何かじゃねえよ。あとできてないのはてめえだけだ」
何が言いたいんだろうか。
「そうなの?」
「そうさ。お前のスキルはたしか魔法耐性だったよな?」
「そうだね」
「なら、お前は的だ。」
「なんでだよ」
「ははっ、そんなのもわからねえか。魔法を打てないなりに俺様の的になって役に立ってもらうだけさ」
申告したスキルのせいで無茶苦茶なこと言い出したな。俺は詠唱を入れてしまうと威力が調整できなさそうなので、やってるフリをしながら完全にサボっていたのだが、それが裏目に出てしまった。
「なるほどね。でも、それは無理かな」
「は?」
「だって打てないわけじゃないもの」
それだけ言うと、ファイアーボールを放つ。俺が放ったファイアーボールは的に向かって1直線に飛んでいき、着弾した。
だが、着弾した瞬間に中村のものとは比にならないレベルの大爆発を起こし、隣の的も破壊してしまった。
(あーあ、やっちゃった。てか詠唱なしでも調整できてねえじゃん)
そんなことを考えながら、ふと周囲を見渡す。その場にいたほぼ全員が口を開けて呆けていた。
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