第2話 スキル鑑定
「帰る方法がわからないってどういうことだよ!」
中村とよく連んでいる鬼山が声を上げてサーシャの胸ぐらを掴む。
護衛が剣を抜いて鬼山に向けようとするが、サーシャはそれを引かせた。
「我々はわからないだけで邪賢者が持つとされる『転移魔導具』を使えば戻れるはずです」
「はずって…もしできなかったらどうするつもりだ!」
両者は一歩も引かない姿勢を見せる。そんな中、1人の男子生徒が声をあげた。クラス委員の谷崎である。
「鬼山、その辺にしておけ」
「あぁ?」
「これ以上やって、ここで殺されたら元も子もないぞ」
その言葉で若干不服そうな顔をしながらも鬼山は手を引いた。谷崎は続ける。
「それでサーシャさん。固有スキルとやらはどのようにして使うのですか?」
「あなたは…」
「谷崎です」
「タニザキ様ですね。固有スキルはそのスキルによって使用する方法が変わってきます。例えば私が持つ『聖女』の場合は聖属性とされる魔法に対する適応力がアップするのが主な能力です。このような自分の意思とは関係なく常時発動するものと、他に『飛翔』のように自分の意思で発動するものがあります。」
「なるほど。ではその固有スキルはどのように知るのですか?わからない状態じゃ「飛べ」と考えても意味がないでしょう」
「それに関してはこれから固有スキルの鑑定を行いますのでご安心を。鑑定は鑑定魔導球に手をかざすだけでできます」
サーシャは説明を終えると手を2回叩く。
すると待ってましたとばかりに俺たちの後ろの大扉が開き、白いローブを着た人に押されて浮いた台車のようなものが入ってきた。
「それでは皆さん、1人ずつ鑑定を行いますので、お並びください」
サーシャの言葉に戸惑いながらも皆並び、運命の鑑定の時間がやってきた。
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1人ずつ鑑定を行なっていく。まずはクラス委員の谷崎からだった。
「それでは鑑定球に手をかざしてください。」
指示通りに手をかざすと球が光り出す。光った球からパネルのようなものが浮かび上がり、谷崎の固有スキルなどが表示された。
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Name:谷崎 勇太
HP:100/100
MP:9/18
固有スキル:『魔法属性(火・水・風・土・氷・雷)』
クラス:3.5
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「タニザキ殿の固有スキルは『魔法属性』です。クラスは…さ、3.5です!」
鑑定士が離れた場所にいる国王に伝える。
その言葉に国王が反応した。
「タニザキ殿、そなたには6属性を高レベルで扱える素質がある。我が国でもトップクラスの魔法使いになれるぞ」
「失礼ですが国王様、我々の元いた世界には魔法やクラス?などの概念は存在しない。詳しく説明してほしい」
「そうだった。では魔法とクラスについて説明しよう。まずクラスとは…」
国王の超長い説明が始まった。魔法の大まかな歴史から、クラス・属性まで説明されたが、まとめるとこのようになるらしい。
・クラスとは魔力への適応力が数値化されるものである。
・クラスは1〜10の数値で表され、数値が小さいほど魔力への適応力が高い。
・確認された限り、この世界の住人はほとんどがクラス5〜8の範囲である。
・クラス3で国最強レベル。クラス2で世界トップレベルとなる。
・この国で確認された最も高いクラスは3.1である。
・魔法には基本4属性の「火」「水」「風」「土」と、スキルなどがないと発動自体が不可能な「氷」「雷」「聖」の計7属性が確認されている。
・魔法は各属性に対して相性のようなものが存在する。
・相性が合わない基本4属性のものはカスレベルでしか発動ができない。
・過去の勇者には「光」、魔王には「闇」の属性が確認されていた。
「なるほど、だから俺はこの国でもトップクラスなのか」
「その通り。説明はこんな感じだ。では鑑定の続きといこう。」
国王のその言葉に従い、鑑定が再開される。10人ほど済んだ後で結衣の番となった。
「名は何という?」
「ゆ、結衣です…」
「ではユイ殿。手をかざしてくれ」
結衣が手をかざすと球が光りパネルが現れる。ここまではこれまでと同じだったが、鑑定結果を見た鑑定官の反応がおかしい。
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Name:有村 結衣
HP:100/100
MP:3/22
固有スキル:『剣聖』『アイテムボックス』
クラス:2.3
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「ゆ、ユイ殿の固有スキルは『剣聖』と『アイテムボックス』だ。クラスは…に、に、2.3!!!」
その言葉に全員が驚愕した。国王の説明ではクラス2は世界トップレベルである。まさかの結衣が世界トップレベルに選ばれてしまった。
「てか、今スキル二つ言わなかったか?」
谷崎が結衣に二つスキルがあることに気づいたらしい。その疑問にはサーシャが答えた。
「稀に、スキルを二つ与えられて召喚される方がおられます。ユイ様はその例のようです。」
「そんなに希少なのですか?」
「そうですね。まず、固有スキルは後から変更したり追加したりすることはできません。」
あれ?固有スキルって2つ以上持てないの?
「それと、純粋なこの世界の住人で複数スキルを持っているのを確認されたことはありません。」
「純粋とはどういうことですか?」
「異世界から来られた方々の血が入っていない方々のことです。先祖に異世界人がおりますと、親がスキル一つ持ちでも二つ持ちが生まれたりします。」
「なるほど...」
「ところで、ユイ様のスキルは『剣聖』と『アイテムボックス』でしたね。単独でもかなり強力です。頑張ってください。」
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その後25人ほどの鑑定を終えて、最後の2人となった。残ったのは俺と中村である。ちなみに鬼山はスキル『拳闘士』と鑑定されていた。
「名は何という?」
「中村健斗だ」
「ではケント殿、手をかざしてくれ」
中村の鑑定が行われ、鑑定官が確認する。すると突如大声を上げた。
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Name:中村 健斗
HP:100/1000
MP:2/27
固有スキル:『勇者』
クラス:2.1
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「陛下!勇者が出ました!クラスも2.1です!」
なんと中村は勇者だったらしい。
これには国王も黙ってはいなかった。
「ケント殿」
「なんだ?」
「そなたにはぜひ邪賢者の討伐を行ってほしい」
「…どうせ断っても意味ないんだろ。だが条件がある」
「条件とは何かな?」
「俺のために城を用意しろ。それとメンバーは俺が決める。あとは常に金を用意しろ」
「うむ…」
「なんだ?条件を飲めないのか?だったら俺は行かねえ」
「…わかった。メンバーは好きに選んでもらっても構わんし金も払おう。だが、新たに城を建設するにはかなりの年月がかかる。代わりと言ってはなんだがこの町一番の屋敷にしてもらえないだろうか?」
「仕方ねえ。流石に住む場所がないのは困るしそれでいいだろう。」
「ありがとうケント殿」
中村は自分が勇者とわかったためかかなり横暴になっている気がする。
そして俺の番が来た。
「最後の一人だな。そなた、名は何という?」
「涼介です。」
「ではリョウスケ殿、手をかざしてくれ」
言われた通り手をかざす。そしてパネルに浮かび上がった文字を事前に用意しておいたものに書き換えた。
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Name:樋口 涼介
HP:100/100
MP:1/10
固有スキル:『魔法耐性(火・水・風・土)』
クラス:4.5
===============
「今、文字化けのようなものが起きたような…まあいい。それより鑑定は…リョウスケ殿の固有スキルは『魔法耐性』。クラスは4.5だ。」
先の中村の結果の後であったためか皆の反応が薄い。まあこれぐらいを狙ったつもりなので上々だろう。
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