第48話 屋台は楽しい。からの……
「よし、今日はここで休憩だな」
お父様たちが馬車から下りてきた。
私はおもちの背に乗って、馬車の後をついて行っていた。
馬車に乗るより、おもちの背に乗る方が快適なのだ。なんたってエアシェルターのおかげで、快適空間のまま背中に乗っていられる。
本当、魔法って便利だなぁ。
というわけで。
私が誘拐された街……じゃなくて、アリアロス街まで戻ってきた。
ちょっと苦い思い出もあるけれど、この街は屋台が有名ですごく楽しかった。
それにおもちと一緒に屋台を回りたいと思っていたので、今日の夕飯はすごく楽しみ。
「私たちは少しする事がるので、レティたちは先に夕食を屋台で食べてくるといい」
「分かりました!」
お父様たちは、以前に宿泊した豪華な宿泊施設に歩いて行った。
アクダマス領での事を、宿泊施設でまとめるらしい。
街に着いて早々お仕事が残っているなんて、色々と大人は大変だなぁ。
まぁ、お父様は自ら手伝っているだけで、皇帝陛下から私たちと一緒に屋台で食べてきたらって言ってくれていたのに。
情にあついお父様らしい。
「仕事終わりに、皇帝陛下と飲み歩きをするのを楽しみに頑張る」とニカっと笑いながらコッソリ話してくれた。
前にこの街に来た時も、楽しそうに飲み歩きしてたものね。
「さぁて、屋台に行こう!」
「うん!」
ライオスが私の手を引き、屋台までエスコートしてくれる。
『こここっ、こりぇは!! すんごいっちぃぃぃ』
おもちがヨダレを垂れ流しながら、瞳をキラキラと輝かせている。
色んな香りがあるから、鼻をぴくぴくをご機嫌に動かせ。
『うんまそーな匂いがいっぱいっちぃ!』
「でしょでしょ。いっぱい食べようね」
『食べるぅぅ!』
興奮のあまり、おもちのしっぽが高速で回転する。
そんなおもちの姿を見たライオスとジュエルお兄様は、屋台へと走っていく。
「おもち様いっぱい食べようね」っとジュエルお兄様がさっそく串焼きを持ってきてくれた。
「レティも食べて!」
「お兄様ありがとう」
美味しいなぁ。外で食べているからか、相乗効果が二倍。
『この肉、うんまいっちぃ!』
串焼きは香辛料強めな味付けなんだけど、このピリッとした胡椒がキツイ感じが肉汁の多いお肉と合う!
何本でも食べれそう。
「レティ、これは僕のおすすめなんだ。食べてみて。おもちさまとジュエルさまも、どうぞ」
「これは?」
「ふふ、今一番のお気に入りなんだ」
それは、前世でいうところのナンのような生地に、何かが包まれている。
外はカリッと焼かれていて、食欲をそそる美味しそうな甘い香りがする。
「んん〜!! もぐもぐ、ごっくん」
あまりの美味しさに声が漏れる。
「美味しっ! ライオス、これめっっちゃんこ美味しい」
「でしょー? 今人気の肉巻きって言う食べ物なんだ」
肉巻きは、もっちりとしたナンのような生地の中に、角煮のような肉の塊が包まれていて、その肉と生地の相性が最高!
これぞ食のハーモニー!
おもちとジュエルお兄様も、無言で味を噛み締めている。
「ライオスさま! この肉巻きどこで売っているんですか?」
「ええとね、あの右側にある屋台の方に行ったら奥にあるよ! 肉巻きの大きな看板があるから分かると思う」
「わかった! ありがとう行ってくる」
残った肉巻きを口に放り込むと、ジュエルお兄様は屋台に向かって走って行った。
『待つっちぃ! わりぇも行くっち』
その後をおもちが追いかけている。
ふふふっ、おもちとジュエルお兄さまは、肉巻きが相当気に入ったみたいね。
その気持ちすごく分かる!
でもこれなら私も作れそう。そうだ! ドンバッセル領に戻ったら、最高の肉ジュエルボアの肉で角煮を作って、この肉巻きを再現してみよう。
きっとジュエルボアで作ったら最高に美味しいはず!
「ぐふふ……」
「レッ、レティ? どうしたの急に」
しまった一人で想像してニヤニヤしてしまった。
「なっ、なんでもないよ! さっ、私たちも屋台探索に行きましょ」
「そうだね!」
ふぅ〜なんとか誤魔化せた。
この後、色々な屋台を食べ歩き大満足で宿泊施設へと戻ってきた。
——んん?
馬に騎乗したテーバイの騎士たちが、馬から下りると慌ただしく宿泊施設の中に入っていく。
なにかあったのかな?
「あんなに慌てて、どうしたんだろう?」
ライオスも不思議そうに騎士たちをみている。
そうだよね、気になるよね。
「私たちんも行ってみよう」
「うん、そうだね」
私たちも騎士に続いて宿泊施設の中に入った。
扉を開けると、ちょうど皇帝陛下とお父様が宿泊施設の広場に下りて来ていたので騎士たちが駆け寄っていた。
今から屋台にお出かけする直前って感じだね。
なんの話をしているんだろう?
お父様の顔がどんどん険しくなる。
これってもしかして、よからぬ事なんじゃ……
それはジュエルお兄様もライオスも察していて、なんの話をしているのか気になるが、近寄っていけない雰囲気にどうしていいのか困っている。
話が終わったのか、騎士たちはお父様たちから離れ、宿泊施設を出て行った。
周りに人がいなくなり、お父様と皇帝陛下が私たちに気付く。
「ジュエル! レティ! ちょうどいい探しに行こうと思っていたところなんだ」
お父様が慌ただしく近寄り、私たちを探しに行くところだと言った。
何があったの!?
「ジュエル、レティ、申し訳ないが宿泊はできない。急いでドンバッセル領に帰らないといけなくなった!」
お父様は早口で話ながら、私とジュエルお兄様を外に連れ出す。
「ええ!? 何があったのですか?」
ジュエルお兄様が何があったのかとお父様に問う。
それは私もそう、何があったのか気になるに決まっている。
「緊急事態なんだ。今すぐ馬車に乗って、テーバイ王都まで帰る! 詳しくは馬車で話すから、ついて来てくれ」
お父様のただならぬ様子に今はこれ以上聞けないと私たちは頷く。
「「分かりました」」
一体ドンバッセル領に何がおこっているの!?
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