第12話 創造魔法使っちゃう?

 魔王城からの帰り道。


 あまりにも呆気なく厄災の魔王をおもちが討伐したもんだから、戦う気まんまんだったお父様やお兄様たち、さらには赤い騎士たちの皆が、「このやる気をどこに発散すればいいんだぁ」と、魔国で魔人に対して暴れまくっている。


 その気持ちは分からないでもないけれど。


「はぁ、それにしても空気が澱んでるなぁ……」


 魔王を討伐しても、この魔国の瘴気は収まらない。


 これがある限り、瘴気が何百年もかけて濃く溜まると、再び魔王が誕生するのだ。


「この瘴気どうにか出来ないかなぁ……」


 魔国を覆うドス黒い瘴気を見て思う。


「あっ! そうだ」

『あるじぃ? さっきから何一人で喋ってるっち?』


 しまった。考えてた心の声がダダ漏れていた。


「いやね、この瘴気どうにか出来ないかなぁって……」

『ぬうん? わりぇには何も感じにゃいけれど、あるじぃはこの黒いやつ嫌っち?』

「うん……この瘴気のせいで魔人は増えるし、いつかまた魔王が誕生してしまう」

『わりぇにこの黒いの消せるかなぁ……ぬうん! ぬうん! ぬうううん! ……無理っちぃぃぃ!』


 瘴気が消せなくて悔しいのか、おもちが前足で地面をタンタンと叩いている。

 私のために瘴気を消そうとしてくれた気持ちが嬉しい。

 

 そして私は、良いことを閃いてしまったのだ


 新しく得たスキル【創造魔法】でこの瘴気を浄化する魔法作れないかなと。


「瘴気を浄化する魔法……どんな魔法がいいのかな?」


 ピコン!


 ——スキル叡智を使いますか?


「ふぇ!?」


 頭の中に何かが話しかけてきた。

 スキル叡智ってなんだ? そういえば魔王のスキルにあったような……。

 色々なスキルを取得しすぎて、まだ全て把握してないんだよね。


 ——スキル叡智を使いますか?


「スキル叡智って?」


 ——叡智とは全てを知る私に質問することです。私に分からないことはありません。


 こっこんな頭に話しかけてくるスキルとかあるの!?

 とりあえずなんでも答えてくれるんだよね?


「叡智使います!」


 ——瘴気を浄化する魔法は創造魔法で作れます。【瘴気浄化】が最適ですね。瘴気浄化を創造魔法で作りますか?


「つつっ、作れるの!? 作ります!」


 そんな簡単に!?


 ——作りました。【瘴気浄化】と唱えてください。また分からないことがあれば質問してください。では私はこれで失礼します。


 スキル叡智、凄すぎなんだけれど……。


「《瘴気浄化》」


 私がそう唱えると、視界が見えづらく澱んでいた空気が澄んでいく。

 あっという間に綺麗な空が見え魔国を覆っていた瘴気は消え失せた。


 急に視界が良くなり、魔神と戦っていたお父様たちは固まる。

 魔神たちは瘴気がなくなった事により、弱体化。

 視界が良くなり弱体化した魔人を倒すのは簡単で、お父様たちは一瞬で全ての魔人を討伐してしまった。


「レティ!? 瘴気を消したのはまさか君の仕業!?」

「お父様落ち着いてください」


 魔人を討伐し終えたお父様が興奮気味にやってきた。

 

「あの、厄災の魔王から得たスキル【創造魔法】で瘴気を消すスキルを作って……そしたら瘴気が消えまして……」

「そそっ、そんなスキルがあるの!? ヤバすぎない!?」

「アレクお兄様」


 長男アレクサンダーお兄様が驚き声をあげる。

 確かに私も自分でしたことなのに、驚きを隠せない。

 他のお兄様たちも集まってきて大騒ぎ。

 だけど、もっとやばいスキルが他にもあるんだよね……どうしたもんか。


『あるじぃ、ノリマキが一緒についてきたいって言ってるでち。一緒に帰ってもいいっち?』


 瘴気が急に消えたもんだから、驚いていたケルベロスのノリマキにおもちが説明していたと思ってたらそんな話に!?


『わりぇともっと遊びたいんだってぇ。わりぇもノリマキと遊びたいっち』


 確かにおもちにも遊び友達がいた方が楽しいよね。

 前世では一頭飼いだったから、遊び友達は私のみだったしね。


「お父様、ケルベロスも一緒に領地に連れて帰ってもいい?」

「ううむ……フェンリルだけでも大騒ぎになると思うがケルベロスまで一緒か。う〜む、まぁ最強の戦闘力が増えてくれたと思えば心強いな」

「じゃあ?」

「いいよ。みんなで一緒に帰ろう」

「やったー!おもち、いいって」

『やったでちいー! ノリマキ一緒に帰ろう』


 二匹が楽しそうに戯れている。ドンバッセル領が賑やかになりそうだ。


 



 厄災の魔王を討伐し、ドンバッセル領にやっと戻ってきた。


 案の定、フェンリルとケルベロスを見て大騒ぎ。

 すぐに二匹の可愛さになれ、今では寮のアイドルになっている。


 疲れもあるだろうと、赤い狂騎士たちのお仕事は一週間のお休みを取り、それは私やお父様たちも同じで、ゆっくりとした時間を過ごしている。

 毎日のお勉強や淑女としてのレッスンなども、この一週間はお休み。

 お兄様たちともっぱらお茶会を開いている……ってわけでもなく。

 

 おもちとノリマキとゴロゴロしている。

 お兄様たちは休めって言われているのに、普段と変わらない訓練している。

 さすがだなぁ。


 そんな休みも今日でおしまい。

 明日は王城に招待されているので王都に向かって出発!

 一週間後、凱旋パーティーを開いてくれるのだとか、その時に褒賞もかなりもらえるらしいとお父様が喜んでいた。


 再び一週間の長旅が始まる。

 転生してきて初めての王都。楽しみだなぁ。

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