第11話 魔王様? 封印させていただきます!

『ほう? フェンリルか……だからここまで来れたのだな』


 魔王がおもちを見て、格下だと馬鹿にしたように笑う。

 お前、嫌なやつ確定。

 おもちを馬鹿にするのは許さない。


『まぁ、フェンリル如きで、最強たる厄災の魔王である私を、倒すことなと出来ぬがね』

『ぬううん!? お前ごとき余裕っちぃぃぃ!』


 魔王に煽られたおもちが、怒って前足でたんたんと地面を叩く。今にも魔王に襲いかかりそうな勢い。


「おもち落ち着いて。計画! 私が封印を使った後に、好きに暴れていいって約束でしょ?」

『ぬうううん。そうでち……よし! あるじ一瞬で魔王あいつの近くに行くでち。振り落とされないように、しっかり掴まってるでち』


 おもちが前足をタンッと力強く蹴り込み、瞬足で魔王の近くに。

 なんでわざわざ危険が及ぶ魔王の近くに行かなければならないのか。


 ——それは。


 封印は十メートル以内でないと使えないのが分かったから。

 いきなり魔王でぶっつけ本番は流石にまずいので、ゴブリンで封印のスキルを試してみたのだ。


 よし、十メートル以内。


 魔王が立ち上がり何かしようとしているが、私の封印の方が先。


「《封印》」


 魔王に手を向け封印を使った。


 スキル【即死】を得ました。

 スキル【創造魔法】を得ました。

 スキル【錬金術】を得ました。

 スキル【弱体化無効】を得ました。

 スキル【魔眼】を得ました。

 スキル【精神状態異常無効】を得ました。

 スキル【魅惑のダンス】を得ました。

 スキル【叡智】を得ました。

 スキル【独裁者】を得ました。


 頭の中にスキルを得ましたと連続で入ってくる。


 あまりの膨大なスキルの量に頭が張り裂けそう、脳みそが弾け飛びそうだ。


「アグゥ……」


 頭が割れるように痛い。


『あるじぃ大丈夫っち?』


 おもちが私の様子を見て、心配している。安心させてあげてあげたいんだけれど、頭が割れるように痛い。ゴブリンを封印した時は、こんなこと全くならなかったのに。


 強力なスキルを封印して得るとこうなるのか。学習した。


「……うん、ちょっとしたら治ると思っ……!?」


 はっ? 鼻血!? 大丈夫なのかな、この状態!?


 私が頭痛と戦っている中。魔王はというと、自分の体を触り動揺し何もしてこない。というか何も出来ないが正しい。


 だって全てのスキルを私が奪ったんだもの。スキルがない今、魔王は素手で殴り合うしかできないだろう。


 ゲームでのレティシアは【即死】と【創造魔法】ばかりを使っていたから、こんなにもいっぱいスキルを持っていたなんて知らなかった。


 てか厄災の魔王、最強すぎない!?

 こんなの絶対倒せないじゃん。何やったって勝てないよ。

 封印持っててよかったぁ。


『お、お前……私に何をした!?』


 ……頭の痛みが楽になってきた。

 

 スキルが無くなった事に気づいた魔王が、震えながらこちらに近寄ってくる。



 魔王を見た瞬間。魔王のステータス画面が目に入る。


 ————————————————————————


 厄災の魔王 真名ヴォルスカ・ナロ・グラディオン

 種族 魔族

 ランク S

 体力 200050

 魔力 857000

 スキル なし

 ————————————————————————


 魔王のステータスが見える。

 スキル【魔眼】のおかげだろう。


「どうしたんですか? 厄災の魔王ヴォロスカ・ナロ・グラディオン? さっきまでの余裕はどこにいったのかしら?」

『なっ!? なぜ私の真名を知っている!? お前は魔眼もちか!? いやっ……魔眼を持っていても、私の真名を見ることはできないはず……どうして!?』


 魔王が明らかに動揺している。魔族は真名を知られることを極端に嫌う。

 知られる🟰敗北の意味をなすからだ。


 ゲームをしていた時も、レティシアのステータスは誰も見れなかった。

 だからレティシアが、こんなにもスキルを持っていたなんて知らなかった。誰も知らないレティシア情報を自分だけが知っている。なんて背徳感!

 

「ぐふふふふふっ」

『あるじぃ? 変な顔』


 しまった。ついつい嬉しくて変な笑い方しちゃった。


『あるじぃもう魔王こいつやっちゃっていい?』


 おもちが近づいてくる魔王を叩き潰していいかと、背に乗る私を見る。


「うん。おもちに任せた」

『任せるでち』


 そっと私を少し離れたところに下ろすと、おもちは尻尾をご機嫌に振りながら、魔王に向かって走っていき。

 その勢いのまま、思いっきり体当たりをくらわせた。


 すごい! まるで大型トラックがぶつかったみたい。


 大きな音と共に魔王は壁にぶつかり横たわる。頑丈な壁はその衝撃で崩れおち、壁に大きな穴が開いた。


『な……なんで最強の私がこんな攻撃くらいで……』


『お前がよっわいでち。これで終わりでち』


『なっ!? 私は最強の厄災のまっ!?』


 次の瞬間。魔王に雷のような大きな光の矢が、何度も何度も魔王につき刺さる。

 あんな攻撃、一回当たっただけで即死のような……。

 それを何回も。おもち最強すぎる。

 フェンリルが恐れられている最強の聖獣っていうのを改めて思い知った。


 厄災の魔王はおもちによって一瞬で討伐された。


 そして私は最強の力を手に入れたのだった。



 ★★★


 厄災の魔王の力を手に入れたレティはこのさきこの力をどう使うのでしょうか。

 楽しみにしていただけると嬉しいです。

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