43話:伽藍堂

───翌日イヴが居る独房の前に私は立っている。

 今日から彼女の監視をする事になった私はあの宿屋から変わり監視室で暮らすことになった。

 監視室と言っても独房とは鉄格子で区切られているだけで目と鼻の先に彼女は居る。

 その独房に居る間は魔術が使えないらしくまた鉄格子も特殊なモノだから安全とのことだ。


 イヴは大人しく独房内にあるベッドに横たわっている。

 それはまた私も同じだった。正直彼女から暴れようと言う気は一切感じ取れない。

 そりゃ暴れられない部屋に入れられていたら当たり前かも知れないが、イヴは自らそこに居るようにも見えた。


「……ねぇ。何でこんなとこに居るわけ?」


 身体を起き上がらせ首をかしげる。

 当然の質問だ。ぶっちゃけ私だって良く理解していない。

 その事を伝えると"なんだそれ"と苦笑しつつ元の体制へと戻る。

 ここで会話を切り上げる訳にはいかない。イヴと話をしなければここに来た意味は無くなってしまう。


「イヴが魔女って本当なの?」

「…直球だね。そう言うのって探りを入れたりするもんじゃないの」


 確かにあくまでも彼女は監視対象の要注意人物なのだからそうするのが妥当だろう。

 しかし私はイヴにそう言われるまでその考えが全くと言って良い程頭に無かった。


「────あ」

「あって………それで良いのかい?監視役さん」

「そう言われても、友達にそんなことあんまりしたくないし」


 その言葉を聞いてイヴは吹き出し顔を剃らす。

 後ろを向いた彼女は手で口を覆いながら方を震わせている。

 それでもちょくちょく声は漏れているけど。

 頬を膨らませていると、それに気付いたイヴは笑いながら謝る。


「そんなに可笑しいかな」

「だって、まさかそんなこと言われるとは思ってなくってさ。ははっ腹痛い」


 彼女はまだ笑い足りない様子だ。何だか気恥ずかしくなってきて耳が赤くなる。

 その事に気付いたイヴは私の耳の赤さを指摘してきた。

 それを聞いてサッと耳を隠すが、それをするには遅すぎる事など私が一番理解している。


「あの時もこんな感じだったね。あんたには笑わされてばかりだよ」

「笑われるこっちの身にもなってよね!」


 笑顔で私を見つめている。……彼女を見ていると何だかアデラの事を思い出す。

 彼等は一体何処で何をしているのだろうか。トランは眠ってるし、野垂れ死んだりしてなければ良いけど。

 そう考えているとイヴの大きな私を呼ぶ声で意識が現実に戻る。


「ったく聞いてんの?お人好し」

「ごめん。ちょっと考え事してた」

「……っそ。まぁなんでも良いけど……私が魔女かどうかだっけ?そんなのそうですとしか言えないよ」


 彼女はあっさりと自分が魔女であると認めてしまう。

 周りも本人もそう言うんだったらそうなんだろうけど、やっぱり納得いかない。

 魔女も全員が全員あんな・・・だって訳じゃないのかな?私はそう頭を抱える。


「何をそんなに悩むことがあるんだか・・・私にはこれっぽっちも分からないね」


 呆れた様子の彼女は天井を見上げる。

 暫くぼーっとしていたイヴは何か思い付いたように笑った。


「そうだ。良いもの見せてあげようか」


 その提案に何だか嫌な予感がしたが、断っても無駄だと思い首を縦に降る。

 "よしっ"と意気込んだ彼女は立ち上がり二歩ほど鉄格子から離れた。

 この中で魔術は扱う事が出来ないと言うのに一体何をするのやら。

 不安半分、呆れ半分の感情でイヴを見つめているとその姿はフッと消えた。


「えぇ!!?」


 思わず身を乗り出して檻の中を隅々まで見渡す…が彼女の姿は何処にもない。

 元々目新しいものは何も置いていなかったが塵一つ見つからない。

 そこはまるで最初から誰も居なかったかのようにがらんとしていた。


「一体何処に行って……なぁ!!?」


 檻の向こうの部屋に設置されている窓を凝視すると、黒い人影がトコトコと歩いている。

 そう。それこそ先程まで目の前にいた少女イヴその人だった。

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