第二章 罰

ルナの過去

ルナは死神になる前、一国の皇子おうじで、名を”ジェス”といった。

幼い時に両親を海の事故で亡くした彼は、叔父である王の養子となったのだ。

王には子供がいなかったため、ジェスは快く迎えられた。

高価な服を着せてもらい、豪華な食事は当たり前、欲しいものは買い与えられ、行きたい所にも連れて行ってもらいながら、常に愛情に包まれていた。


そのおかげか、ジェスは頭が良く、人柄もいい青年に成長した。

人当たりがいいせいか、国民にも慕われ、外交も以前より上手くいくことが多くなり、まだ若かったが彼のおかげで国は繁栄していたと言っても過言ではないだろう。


ジェスとは逆で叔父である王は、暴君と呼ばれていた。

国民よりも自分優先の人で、金遣いも荒く、決して慕われてはいなかった。

そんな王は次第にジェスに嫉妬心を抱くようになる。

そしてあろうことか王は甥であるジェスの暗殺計画を立てたのだ。


王による自分の暗殺計画を側近から聞いたジェスは王の元を訪ねた。

ジェスはただ、暗殺計画なるものが本当にあるのか、真意を確かめたかっただけなのに、王の態度と王の言葉に怒り、王を殺してしまった。

王を殺したジェスは自責の念に駆られ、自らこの世を去った。


君主を失くした国はあっという間に滅びた。

国民の大半は隣国に奴隷として奪われ、手入れが行き届かない土地は朽ち果て、ここに繁栄していた国があったとは思えないほどの姿になったのだ。

ジェスは自分の愚行を心の底から悔いた。


そんなジェスにイゴシスは言った。


「悔いが消えるまで人間のために死神となり、尽くしなさい」


死神が人間のために存在しているとは到底思えなかったジェスは、イゴシスの提案を断り、長い間冥界を彷徨っていた。

しかし、冥界で出会った者のおかげで考えを改め、イゴシスの提案を受け入れたのだ。


こうしてジェスは死神となり新たにルナという名前をもらった。

しかも悪霊を回収するという重要な任務も任された。

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