第3話 北路に現れる黒煙
タクマとランデルは、ギルドからの手がかりをもとに、町外れへと続く北路へ足を向けることにする。北路は、かつて活気に溢れていたが、最近は何か異常な空気が漂うようになり、道脇にある古い樹々は不自然に色あせた葉を落とし始めていた。
歩みを進めるごとに、タクマは、遠くに上がる黒煙の痕跡を初めて目にする。空中に漂う黒煙は、ただ煙が上がるだけでなく、時折、一定の形を保ちながら、ゆっくりと風と共に流れている。
「なんだあれは……」
ランデルは、足を止め、その煙の動きをしばし見つめる。タクマは、歩調を少し落とし、目の前に広がる不気味な光景に静かに息を吸い込む。空気には、焦げた匂いや、遠くで子どものようなかすかな泣き声が混じって聞こえる。
タクマは今までの冒険では感じたことのない不安を覚える。ランデルもまた、ギルドでの依頼状以上の、現実の痛みを目の当たりにするかのようだった。
二人は、無言のまま更に北路を進む決意を固め、焦げた煙に覆われた道を慎重に歩み出す。道脇の環境が急激に変化し、周囲の空気が一層冷たくなる中で、彼らは、いったい何が起こっているのか、確かな証を求めて足を前へ進める。町で耳にした依頼状の内容と、実際の光景が、彼らの内側で重く落ちる現実として共鳴し始める瞬間であった。
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