第15話 消えた品物

将吾のアリバイ崩壊と、遥の写真に写り込んだ凶器の存在。

私の推理は、将吾が犯人であるという確信を深めていった。

だが、まだ彼を追い詰める決定的な証拠、そして彼がそこまで周到な計画を立てて犯行に及んだ真の動機が掴めずにいた。


ホテルに留まる生徒たちは、疲労と不安に加えて、警察の不信感から来る苛立ちを募らせていた。

そんな中、担任の先生が遥の遺品整理を始めた。

遥の家族の承諾を得て、彼女の持ち物を回収し、日本へ送り返す準備をするためだ。


私は先生の許可を得て、遥の部屋に入らせてもらった。

彼女の部屋は、数日前まで修学旅行を楽しんでいた少女の痕跡が色濃く残っていた。

ベッドの上には読みかけの雑誌、机の上には買い集めたお土産の数々。

しかし、私の視線は、ある一点に釘付けになった。


遥が肌身離さず身につけていたはずの、星の形をした小さなペンダントトップがない。


それは、遥が高校入学祝いに私がプレゼントしたものだった。

遥はとても気に入ってくれて、以来、一度も外したことがないと言っていた。

首筋に開けられたあの二つの穴。

そして、ペンダントトップがなくなっているという事実。嫌な予感が私の脳裏を駆け巡った。


「拓海、遥のペンダントがない…!」


私はすぐに拓海に連絡した。

拓海は、遥の部屋で何か変わったことがなかったか、私に詳しく尋ねた。


「ペンダント、どこにも見当たらないんだ。普通、外したら引き出しに入れるとか、ポーチに入れるとかするはずなのに…」


私の言葉に、拓海は少し考え込んだ後、言った。


「もしかしたら、事件現場に落ちていたとか…?でも、警察が回収した遺品の中に、ペンダントはなかったって先生が言ってたな」


拓海の言葉に、私はハッとした。

そういえば、遥の遺体の近くで、草むらに隠れるように落ちていたものがあった。

あの時、拓海が触るのを止めた、小さな光る物体。あれが、もしかして…!


私は急いで拓海にそのことを伝えた。


「そういえば、遥の遺体の近くに、何か光るものが落ちてたんだ!私、見間違いかもしれないけど、ペンダントみたいに見えたんだ!」


拓海の反応は素早かった。


「それだ!美羽、もしかしたら将吾が、あのペンダントを隠し持っている可能性がある!」


拓海の言葉に、私の頭の中で点と点が繋がった。

将吾が遥を殺害し、その際にペンダントを奪った。

あるいは、犯行現場に落としたものを、後で回収したのかもしれない。

そして、そのペンダントを、彼が「ドラキュラの末裔」であることの証拠として、あるいは遥を支配した証として、密かに持ち続けている可能性があった。


将吾のSNS投稿には、時折、彼が収集しているという「古の秘宝」や「ドラキュラの遺物」に関する記述が見られた。

もし、彼が遥のペンダントを、その「秘宝」の一つとして手に入れたのだとしたら。


私と拓海は、将吾のSNSをさらに徹底的に監視し始めた。

彼の写真や動画の中に、ペンダントが写り込んでいないか。

あるいは、それを示唆するような投稿がないか。


その時、イアナが静かに私の部屋のドアをノックした。

彼女はいつもと変わらぬ穏やかな表情だったが、その瞳の奥には、事件の深淵を覗き込んでいるかのような、深い悲しみが宿っていた。

将吾

「美羽さん…将吾さんが、最近、よく古いルーマニアのコインを触っているのを見かけます」


イアナの言葉に、私は驚いた。

将吾が、そんなものに興味を示すとは。

しかし、彼女の次の言葉に、私は背筋が凍るような思いをした。


「そのコインには、古くから**『魂の代償』**という意味があると言われています。そして、そのコインを手にすると、失われた魂が、持ち主に縛られる…と」


イアナの言葉は、まるで将吾の行動と遥の失われたペンダントが、ある種の呪われた儀式によって結びついているかのようだった。

将吾は、遥の魂を奪い、それを自分のものにしようとしているのかもしれない。


遥のペンダントが消えたこと。

そして、イアナが語る「魂の代償」という言葉。

これらは、将吾が単なる殺人者ではない、もっと深い狂気に囚われていることを示唆していた。

彼は、遥の命だけでなく、彼女の「魂」までも奪おうとしていたのか。

事件の核心に、さらなる闇が広がっていくのを感じた。

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