鏡と映る者と映す者

片桐秋

第1話

 その中には鏡があった。向かい合わせの鏡に映るように、何枚もの鏡がずっと奥まで並んで立っていた。


 鏡は大きかった。縦二メートル、横が四十五センチくらいだった。


 そんな鏡がずっと並んでいた。


 ここは何処だろう?


 女は一人で辺りを見回した。


 辺りには、見たことがないが何処か見慣れたようなありふれた光景が広がっていた。都市の郊外の少し広い公園のようだ。


 しかし鏡はその公園も越えて、どこまでも並んでいるように見えた。


 そこに一人の老人がいた。老人は鏡のそばにある、ベンチに一人で座っていた。老人の姿は鏡に映ってはいなかった。


「何故、鏡を見ないのですか?」


「ワシには、自分の姿は見えない」


 女は自分の姿を鏡に映した。そこには、見慣れない男の姿があった。


終わり


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鏡と映る者と映す者 片桐秋 @KatagiriAki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ