現実と新しい居場所

鬱病と診断された時

私はその事実を受け入れられなかった。

両親は鬱病と診断された事への原因を私には一切聞いてこなかった。

父はひたすら母の前だけで泣きながら

後悔していたらしい。私を家から出したことへ。


母だけが私に何が起こったのかを

察していた。そんな母に私は気付いていたが

DVをされてました。他にもここでは濁すが問題があった事を話せるわけが無かった。迷惑や心配をかけたくなかったからだ。


睡眠薬と安定剤が様子見で処方されたが

効くのは最初だけで慣れていけば眠れなかったりなど、1ヶ月に何回も病院に通院する日々が続いた。

自分に合う薬探しが始まる。

最初は先生に何を話せばいいのか分からず

眠れてるか?食事が出来ているか?

気分の波はどうか?

それだけを答える事だけが続く…。


私は3大欲求全てを失い

好きだった趣味にすら興味がなくなっていた。

自分が描いていた人生が途端に崩れ落ちた。

25.26で結婚して、子供を産んで家庭を持つ。

仕事が好きだからこの先も続けて…なんて普通の事かもしれないが

そんな未来を夢見てた 、それを全てを失った。


実家に引きこもる毎日、外に連れ出そうと

父が声をかけてくる。

「asu?散歩いこか!」

私は顔を横に振りながらただ涙を流すだけ。

そんな日々が2ヶ月つづいた。


元々仕事をしていないと落ち着かない性格もあったが支払いができないし

このままじゃ自分が腐ると思い

何となく私は学生の頃に長くお世話になっていた

喫茶店のマスターのお店へ足を運んだ。


カラン〜。と不安な気持ちを抱えながら

ドアを開けた。

「こんにちは〜」

一言私はお店に入るなり声をかける。


お店に入ると 聞き覚えのある声が聞こえた。

「いらっしゃいっませっ!!」

( 店長だ!!相変わらず老けねぇ〜し独特のイントネーションだな笑)


お店にはオシャレなジャズが流れており

暖色 色の壁や何もかも変わってなく

私はさっきまでの不安が消えていく。


「asuちゃんやん!なんや店手伝いにきてくれたんか?笑」


(マスターだ!相も変わらず元気そうで安心したけど太ったなぁ笑)


「いや何言うてるんですか!笑

地元に戻ってきたついでにマスターの顔

見に来ただけですよ〜!笑」


( 私は毎年 年末年始は実家に帰っていた為

帰る時は必ずマスターのお店に顔を出すのでいつもこのやり取りがあった )


「でもasuちゃんが戻ってきたらこっちもたすかるねんけどなぁ」

マスターは少し困り果てた怖い顔で眉をひそめている。


「なんかあったんですか?」


「いやぁ、実は5月のゴールデンウイーク明けに引退する子が居るんやけど人居れなあかんくて募集はして面接してるんやけど、中々いい子がおらんくてなぁ」


ちらっとそう言いながら私を見るマスター。

それを後ろの席で聞いていた

私とも仲良しの常連さんご夫婦が

口を挟んできた。


「なんや!こっち帰ってきとったんかいな〜!色んなええ子おったけど、ワシらは姉ちゃんが1番ええわ!はよ戻ってきてーな!」


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ちょっと癖があるご主人だけど

とても明るく暖かい人だった。

学生の頃に注文ミスをしてもいつも

優しく接してくれてた。


「マスター!怒ったったらあかんで!

普通に食べれるから大丈夫やから!」


当時のマスターは本当に絵に書いたような鬼でよく泣いてバイトから帰る事が多かった。

(今では厳しく根性を叩き直してくれた事へ感謝している)

その為私を気に入ってくれた常連さん達は私を庇ってくれてた。


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口を挟んできた年配のご夫婦の言葉が嬉しかった私は、引きこもりから脱出する

チャンスが来たと思い

すぐにお願いをした。


「マスター、わたし色々あって鬱病なんですけどまたここで拾ってくれませんか?お願いします!」


そう頼む私を見て

マスターと店長は顔を見合わせる。


「まぁ、asuちゃんは5年もやってて慣れてるし常連さんもまだ把握してるやろ?教えんでも済むし。なぁ?店長」


「そうですね〜、asuちゃんなら助かりますね!」


「って事でゴールデンウイーク明けからおいで!病気の事もあるやろから、4時間からやってみよか」


そうして私は2ヶ月間無職だったけれど

5月から職場仲間には病気の事をオープンにし、それ以外ではクローズという形で

復職することになった。


本当はもっと長い期間休むべきなのだろうけど

私はそれを許されなかった。

お金が必要だったからだ。


私は仕事をやっていけば体力も戻るだろう、全て上手くいく、根拠の無い自身に満ち溢れていた。

でも現実は甘くなかった…。


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‪”‬仕事復帰 ・1日目 の朝 ‪”‬


携帯のアラームが何十回もしつこいくらいに鳴り響いてからやっと目を覚ます。

激甘にしてもらったホットコーヒーで無理やり起きるところから始まる。

(珈琲は大好きなので基本はブラック派だ。)


私の症状は変わらないまま、薬を飲んでも直ぐには寝れない。夜中の時間のどこかで

気を失うような感じで眠る日々だった為

寝不足だし

朝起きるのがとてもしんどく、辛い。


「よし!今日から仕事復帰だっ!」

心配をかけないように元気よく私は言う。

「いってきまーすっ!!」


気合を入れて扉を開けて職場に向かった。


腹を括らないと外が怖くて出れなかったのと無理やり起きてる身体への負担や

薬の副作用のせいで鉛のような気だるさに襲われているからである。


私は職場に向かいながら涙を流していた

何故泣いているのか分からない…とにかく悲しい。

気合と根性で職場に着くと

「お!asuちゃんおはよー!!」


ニコッと優しく笑うマスターの顔を見て安堵し

私はまた泣き出す。

眠れてないため仕事もろくに出来ない私を見たマスターは私に言った。


「今日は他の従業員もおるから帰り?しっかり寝て明日また待ってるで!」


私は迷惑をかけた事へひたすら謝り続け

家に帰宅する―――。

仕事復帰はまだ早かったのかな…そんな思いを胸に抱きながら。

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