お昼寝議論
恒例のメンタルクリニック通院、そしてカウンセリングの日があった。お盆休み前(お盆休み中の人もいる)だったからか、なんとなく患者がいつもより少なく感じた。
ちょっと早めに着いたがそう時間が経たないうちにカウンセリングルームへ通されて、既に推しカウンセラーとなっているOさんと二週間ぶりの対面を果たした。
「あっ、どうも、よろしくお願いします……」
「はい、よろしくお願いします」
本日も非常に穏やかな表情、物腰のやわらかい口調……。
話して数秒で癒しと安心を感じるこの雰囲気、Oさんはめちゃくちゃいいカウンセラーさんだと思う。
早速いつものようにスーパープライベートな悩みや愚痴を聞いてもらった。
そのあとに雑談タイムのような時間が訪れて、そもそもの受診理由である睡眠についてふと問い掛けられた。
「睡眠時間は変わらず六時間から七時間くらいなんですが……」
「何か困ったことでも……?」
「ああ、いえ、二度寝……は、日と時間帯によってはできるようになってきたんですが、お昼寝? が
、相変わらずできないですね……」
説明しよう……。
私はこうして不眠症になり薬で眠るようになる前は、だいたいいつも眠い! という状態のほうが多かった。
今思えばそれはそれで体調不良のひとつではあったのだろうが、労働して帰ってきて食事をしたあとは、だいたい寝ていた。
そもそも私の労働は昼飯を食べる時間がない。時間に追われて作業をしたあと、夕方頃にやっと食べる時間が取れる。しかしそうすると、超空腹だ。もうめちゃくちゃ食べてしまう。そしてスヤァ……になってしまう。
ここまでをOさんに説明した。
Oさんは神妙な顔をしていたが、手元の紙に何かを書いたあとこちらを向いた。
「今はもう胃もたれはほとんどないんでしたよね?」
「あ、はい、パクパク食べています」
「仕事のあとも、以前のようにパクパク食べます?」
「食べ……てはいますけど、最近だとプロテインバーにハマってまして、ちゃんとした食事の前にプロテインバーを食べていることも多いです」
「その後にガッツリ食事されますか?」
「あー……わりと間食が多くなってますが……買い物もして帰る日だとスーパーのお弁当を買って食べたりもします」
Oさんは少し考えてから、
「野菜から食べますか?」
と聞いてきた。
私はちょっと驚いた。
何せ、野菜から食べるようになっていたのだ。
「は、はい、野菜から食べます。添えてあるきんぴらごぼうや大根人参の煮物……もしくは別で買ったサラダとか……」
「なるほど……」
「な……なにかあるんですか……?」
Oさんはにこりと笑い、指を組みながら私を優しい目で見た。
「ひょっとするとなんですが、血糖値スパイクを起こさなくなったのかもしれません」
「血糖値スパイク」
「ええ、一気にご飯をかき込んだことにより血糖値が急上昇し、その後に急下降すると眠気か起こる、という状態なんですが……ゆきさんはこうして体調を崩されてから、食事の順番などに気を遣うようになったのではないですか?」
「あっ、はい、めっちゃ色々調べました! 野菜から食べる、炭水化物は後に食べる、今は筋トレの兼ね合いでたんぱく質を意識して摂る、噛む回数を増やすなど、できることは色々とやりました……!」
「それをそのまま継続してやっていますか?」
「やってます、忘れてる時もあるにはありますが、野菜から食べて炭水化物は後に食べるのはほとんど無意識でやるようになってます!」
もう、めっちゃエウレカだった。
このお昼寝に関してだけは、眠気が起こらないほうがいいんだ! とひらめいた。
とはいえ、ご飯を食べたあとのゴロゴロタイムとお昼寝は気持ちいい……。
またやりたいと思ってしまうが、体調や夜の睡眠のことを考えるとやらないほうが絶対にいいだろう。
かつての血糖値スパイク即昼寝を思い返していると、Oさんがふと口を開いた。
「ゆきさんは食べる順番もですし、最近ずっとやっているという筋トレや、時間が空いた時の散歩や……身体のために本当に色々な努力をしていると思います。これ以上やると逆に追い込まれてしまうのではと心配になるくらいです。お昼寝もやり過ぎはよくありませんが、数十分なら横になって目を閉じて、以前に話した瞑想の呼吸をしながら心を落ち着ける時間にするのはいいはずです。切羽詰まりすぎず、ほどよく息抜きをしていきたいですね……」
私は頷いた。
治したい治したいと躍起になり、空回って悪化する状態は当然避けたい。
今回のカウセリングはこうして終えた。
T先生の診察もスムーズに終えて、私はほかの患者のいない待合室でお盆について考えていた。
そこから三日ほど経ち、故郷でゆっくり過ごしてからの今、非常に穏やかな気持ちである。
このまま何事もなく生きていきたい……。
心の底からそう願っている。
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