むりやり起こすぞ子宮くん
今日は婦人科の診察日である。
三カ月前、スルピリドという薬をやめてみて経過を見ようとなったが、特に何事も起こらないまま今日になった。
何事とは、生理である。
もう半年ほど生理が来ていない計算になる……。
えっ、なんかふつうにめっちゃマズそうなんだけど大丈夫かな?
体調的にはあまり変わらないというか、ミルタザピンのおかげで六時間は眠れる生活になっているし、精神の方もわりと落ち着いていると思う。
あんなに何も受け付けてくれなかった胃の調子も良い。逆に食べ過ぎて腹パンパンにしてしまうくらいだ。
そうなってくると、生理が来ていないことが今の一番の異常に見える。
婦人科に行ってなんとかしてもらうしかない……。
やってきたお馴染みのD病院は月曜日だからか混雑していた。
ラグジュアリーな婦人科待合室の一人掛けソファに座り、ジャンプでも読んで待つかとジャンプラを開く。
ジャンプはすぐに読み終わった。次にジャンプラ連載作を読むが、こちらもすぐに読み終わった。でも1時間弱は経っており、あれっなんかちょっと遅い? と思いながら持参した恒川光太郎の化物園を開いた。
化物園をじっくりゆっくり楽しんで1時間ほど経過したところでやっと呼ばれた。
診察室に入るとF先生が待たせてすまなかったと謝ってくれた。
「あっ、いえ、大丈夫です……お忙しそうですね……」
「ああ、すみません……色々立て込んでしまいました」
先生は苦笑してから私のカルテを表示する。
「では草森さん。スルピリド中止後も生理が来なかったと」
「あ、はい、まったく」
「とりあえず今現在の子宮の状態を見せて頂きたいです、その後にどうするかを相談しましょう」
「わかりました……」
ぶち込まれると痛いんだよな……などと言ってはいられないが、案の定クソ痛かった。
痛みを堪えていると、草森さんは子宮が小さいですねと言われた。いいことなのか悪いことなのかまるでわからなかった。とりあえず痛かった。
子宮確認の儀はこうして終わり、私はふらふらと診察室へ戻った。
F先生は難しい顔をしながら、子宮の図と卵巣の図が描かれた紙を机の上に置いた。
「まず、草森さんの子宮は小さいのもそうですが、薄かったです」
「薄い」
「はい。赤ちゃんを作る土台をそもそも作っていない、という状態です」
生理とは、子宮の中で赤ちゃんを作るゾ!と気合いを入れて膜を作るのだが、赤ちゃんが作られなかった場合は要らないゾ!と膜を剥がして外に出したものである。
その膜、土台が作られていない。
完全に沈黙しているというわけだ。
「こ、これは……どうすれば………?」
「そうですね……プロラクチン(前回生理不順の原因かもと言われた物質)が、今飲まれているミルタザピンでも上がるのかも知れなくて……その場合薬をやめて頂くことになるんですが……」
「あっ、いえ、ミルタザピンはやめると本当にまずいといいますか……」
今現在ちゃんと眠れているのも食欲が湧いているのもミルタザピンの副作用様々だし、あんなに鬱々としていたメンタルが穏やかになっているのもミルタザピンの効果に違いない。
私の話を聞いた後にF先生は唸った。
「一回、むりやり生理を起こしましょうか」
と言ってから、出そうとしている薬の説明をしてくれた。
子宮の内膜を作る薬と子宮の内膜を剥がす薬がある。作る薬をはじめの十日に飲んでもらってから、剥がす薬を終わりの十日に追加する。
そうすると膜が剥がれて生理が来るだろう。
一旦これをやってみよう。
「あと、今回も血液検査をしましょう。プロラクチンの数値を確認しておいた方がいいですので」
「わ、わかりました」
「では……一ヶ月後に、また来てください」
私は頭を下げ、診察室を後にした。ラグジュアリーな空間にはまだ待っている患者がたくさんいた。お腹の大きな女性もおられ、婦人科であると同時に産婦人科だものね……となんだかしんみりとした。
私は子供もおらず、この先も作る予定はないので、そういった意味では生理が来ていなくても問題はない。
しかしF先生が生理の仕組みについて話している時に言ったのだ。
「このまま無月経が続くと、機能不全となった子宮はガンになってしまうかもしれません」
嫌に決まってるよなぁ!?とても嫌です。それならば生理には来てもらい、前まで通りの生理前後はやたらとダルい状態に戻してほしい。
そういえば生理前後はやたらと眠くもあった。
もし不眠に関係している、あるいは不眠の改善に役立つのであれば、やはり生理は起こすべきだろう。
一ヶ月後か……。
私はカレンダーを見ながら思いを馳せた。
一ヶ月後、めちゃくちゃ夏真っ盛りの八月上旬である。
私も気をつけるが、みなさんも熱中症など気を付けてください。
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