いででででで!!!

 検査室へ入り、覚悟はしていたが遂に言われた。


「ズボンと下着を脱いでから、こちらの椅子に座ってください」


 おとなしくハイと返事をする私。

 そらそうよ、子宮内を見るんだから、突っ込むところと言えばあそこである。ズボンも下着も不必要……。

 下半身だけ全裸になり、椅子に座った。配慮のためにカーテンが掛けられているから、先生と看護師さんと顔を合わせることはない。しかしあちら側にはいる。

 椅子がくるりと回され、足を大きく開かされる。


「では検査を始めます。痛いかもしれませんが、我慢してください……」


 配慮の言葉のあとにブチ込まれた。


「いででででで!!!」


 思いっ切り声に出た。いやほんとに痛かった。硬いなんらかの棒状のものがズドン! 痛いですよね、そらそうよ。

 でも私の健康のために我慢である。

 ちらっと横目を向けてみると私の子宮内を映しているモニターがあり、先生曰く特に異常はないようだ。私が見てもなんか肉っぽい表面だな〜エコーってこういうやつかな〜ぐらいのしょぼい感想しか出せない映像で、まあしかし異常がないのであればそれに越したことはない。

 ん? だけども子宮に異常がないのであれば、つまり……?


 ズボンと下着を着用して診察室に戻った。

 私よりも先に待機していたF先生は、神妙な面持ちで私を見つめた。


「血液検査を、しましょう」

「あっ、はい……」

「それの結果次第で今後の方針を決めます。どうぞ、お大事にしてください」

「はい、ありがとうございました」


 私は診察室を出て、採血部屋へと向かった。

 採血、意外とする方が多いので混んでいた。恒川光太郎の草祭をパラパラ捲りながら順番を待ち、いざ呼ばれて腕を差し出したあとに、ふと採血してくれているスタッフさんに問いかけた。


「一日、何人くらいの血を抜きますか?」

「えっ?」

「いえ、手付きがものすごく手慣れてらっしゃるので、一日にめちゃくちゃ血を抜くのかなと……」


 突然聞いてきた変な患者相手にスタッフさんははにかんだ。


「どうだろう、数えてないです……でも五十人くらいかな?と思いますよ」


 ちゃんと答えてくれてとても優しい方であった。ついでにこうして話している間に針をブチ込み血をしっかり抜いていたので、採血スタッフとしてたいへん優秀な方でもあった。


 私は会計を済ませて帰宅した。

 次の診察は採血結果が出たあと、来週の同じ曜日に予約を取ったが、なんと診察日の二日前にF先生から電話が来た。


『もしもし、D病院婦人科のFと申します』

「こ、こんばんは、草森です」


 一体なんだろうとちょっと焦るが、

『血液検査結果が出たのでお電話差し上げました』

 用件はすぐに言ってくれた。


「あっ、そ、そうなんですね? でもなぜ、次の診察の時でもよいのでは……」

『いえ、わざわざ来てもらうほどの結果ではなかったと言いますか……それに草森さんはお金に困ってらしたので、こうして料金のかからないお電話で伝えさせて頂こうかなと』

「な、なんと……ありがとうございます……」


 この時点で感激のあまり手が震えていた。いやほんとに、あっちこっち診療日記のタイトル通りにいろんな診療科へ行った私は、治療費診察費検査費でもうてんやわんやなのだった。

 あったけえ……婦人科、あったけえ……。

 なんなら涙ぐんでもいた私に向けて、F先生は結果について話し始めた。


『プロラクチン、と呼ばれる物質の値が高かったんです』

「プロラクチン」

『はい。そしてこのプロラクチン、スルピリドの副作用として数値が上がってしまうんですよ』

「スルピリド」

『はい。なので、スルピリドの服用を止めて頂き、三ヶ月ほど様子を見て欲しいんです』

「三ヶ月」

『はい。とりあえず二日後の診察予定はキャンセルにさせて頂いて、三ヶ月に新しい診察予定を入れさせてもらいます。この診察までに生理が来ていれば、こちらの診察はキャンセルの電話を入れてください』

「わ、わかりました……スルピリド……プロラクチン……」

『お体のために服用されているのに、すみません』


 先生が悪いわけではないのに謝ってくれる……なんて優しいのか……。

 なんにせよ婦人科の予約は取り直された。F先生とはこうして通話を終え、私は薬置き場に移動して、スルピリドの入った袋を持ち上げた。


「お別れだよ……スルピリド……」


 こうして精神薬でありつつの胃薬であったスルピリドの服用は止めることとなった。


 この婦人科診察・電話からあと少しで三ヶ月となる。

 生理はまだ、来ていない……。

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