婦人科

デリケートな悩みだよね……

 この先は女性特有の症状、ともすると生々しい描写などが含まれるので、苦手な方は避けて頂けると幸いです。


 一度目か二度目か忘れたが、T先生の診察を受け始めた頃の話になる。身体的な症状を聞かれた時に、そういえばと思って口にした症状があった。

 生理不順だ。

 三カ月以上、私の子宮は沈黙していたのである……。


 私の相談を受けたT先生は難しい顔をした。


「それは……申し訳ないけど、ここではどうにもできないねえ……婦人科に行ったほうがいいです」


 ですよね、という返答を頂いた。なにせここは精神科クリニック、生理を来させてくださいと頼まれてもどうしようもないに決まっている。


 私は婦人科を予約した。

 行くのはすっかり行きつけの大病院、D病院の婦人科だ。通い慣れた道をゆき、初めての診療科待合室へいざ向かう。

 足を踏み入れた瞬間にトリコのような「ぞあっっっ!!」が出た。

 待合室の雰囲気が、消化器内科や脳神経外科とはまるで違っていたのである……!


 まず消化器内科などの待合室なのだが、横掛のソファーがいくつもの診察室前に縦三列で置かれている。その後ろに一人掛けの椅子がこれまたいくつも隣接して並んでおり、壁沿いにも椅子がしっかりと備えられている。

 人はみんな隣同士で座る。ぜんぜん知らない他人ともだ。電車やバスを思い浮かべてもらえると分かりやすいかと思う。

 このイメージを持ったまま、婦人科の待合室を紹介する。

 まず、ゆったりとしたラグジュアリーな一人掛け椅子が基本の待機場所だ。

 椅子同士はきっちりと離れており、それぞれが独立している。座ると身体はすっぽりと収まる深さだ。自然に保たれている一人の時間はプライスレス、ノーストレスのリラックスタイム……。


 まあつまり、めっっっっちゃ気を遣われている待合室だった。

 私はトリコになりながら空いているラグジュアリーチェアーに腰掛けて、待っている間に読もうと持ち込んだ恒川光太郎の草祭をおもむろに開いた……。


 草祭はもちろん面白かった。屋根猩猩が好きだった。

 それはさておき恒川光太郎は最高や!を堪能していると呼び出しを受け、私は急いで診察室へと向かった。

 婦人科……なかなか来ることはない。なんなら初めてだ……。

 にわかに緊張しつつ中へ入った。

 微笑みながら迎えてくれたF先生は、私に椅子を勧めてくれた。


「今日は生理不順でいらっしゃったんですね」

「あ、はい……三ヶ月か四ヶ月ほど、来てなくて……」

「なるほど。……まず、受付で書いて頂いた問診票の話をしたいのですが」

「えっ、はい、なんでしょうか」


 F先生はパソコンを操作してから私に向き直った。


「現在飲まれているお薬……スルピリドについてです。こちらのお薬は、生理不順を引き起こす可能性があるんです」


 私は無言になった。

 えっそうなん? と思う気持ちがまずあった。その次にスルピリド自体は服用を始めて大体一ヶ月程度だから、三ヶ月以上の生理不順には関係ないのではないか? と思った。

 何と答えるのが正解かわからず困っていると、F先生は身体ごとこちらを向いた。


「もちろん、絶対にスルピリドが原因だとは限りません」

「は、はい」

「しかし検査はしなければ……。子宮内に異常がないかカメラで見たあと、血液検査をしましょうか」

「え、あ、あの……」

「はい、どうしました?」

「私……いろんな診療科に行き過ぎて……金欠なんですが……検査はいくらほどかかりますかね……」


 この期に及んで肉体よりも金の心配をする私である。

 すまない……すまない……と思いながら先生をちらりと見ると、意外な表情を向けられていた。

 ものすごく優しい顔だった。

 そばに立っている看護師さんも、私を慈しむように見つめていた……。


 婦人科、めちゃくちゃ暖かいところかもしれねえ……。

 そうひしひしと感じた。

 F先生は検査費用を教えてくれたあと、ひとまず子宮内を見ようと言って私を隣室へ案内した。


 ちょっと長くなったので後半に続きます。

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