亜鉛ってすごい
書き忘れていたが、Sクリニックの初診日に血液検査を行なっていた。
T先生にやっておくかどうか聞かれ、すでに二回ほど血を抜かれていたためちょっと悩んだが、医療費にばかすかお金を使っていた段階だったのでまたついでにやっておこうと決めた。
採血の時に低血圧気味ですね〜と言われた。前まではそんなことはなかったので胃もたれやら不眠やら薬の副作用やらでそうなったのだとは思うが原因は定かではない。血を抜かれながら「そうなんですよね〜」と呑気に言うだけに留めた。
この血液検査の結果は二度目の診察の時に渡してもらった。
T先生は前回よりもちょっと気を引き締めたような雰囲気だった気がした。
「血液検査結果なんですが、亜鉛が足りないですね」
「あ、亜鉛?」
亜鉛。もちろん知っている。金属である。原子番号30の金属元素。元素記号は Zn。亜鉛族元素の一つ。(ウィキペディアより)
えっ、体内に金属って……と一瞬思ったが、そういや血液には鉄が含まれているんだし私が愛食していたベースブレッドは成分表をよく見るとマグネシウムとか思いっきり書いてあるし、人間の人体構造ってとんでもなく複雑なのだから亜鉛も必要なんだなあとしみじみした。
私は知らないことだらけ、無知な植物である……。
無知の知をしている間にT先生は検査結果を更に眺めており、どうしますか、と聞いてきた。
「どうしますか…とは……?」
「亜鉛です。飲まれますか、亜鉛補給のお薬。亜鉛不足も体には色々な悪影響がありますし」
「あ……そうですね、せっかくなので……」
実はこの時には色々と申請し、医療費をかなり減らすことができていた。薬代もだ。
体のためになるのであれば、すすめられるまま飲んでおこう。
私の決断にT先生は微笑んだ。
「調子はいかがですか?」
「あ、はい、まあいろいろ……ありましたが、おおむね大丈夫……かな?」
「睡眠はどうでしょう?」
「六時間ほどは眠れるようになっています。眠気などで日中動けなくなることもまったくなくて」
そう、この頃にはミルタザピンがかなり体に馴染んでいた。
夜は六時間くらいは寝られていたし、眠気や倦怠感のあまりに鬱々とすることも減っていた。
T先生にも伝えた。先生はニヒルに頷いて、顎に手を当てた。
「もしも日中の不安感、憂鬱、動悸などが起こるようでしたら、ミルタザピンの用量を増やしますので言ってください」
「え、あ、はい」
「草森さんはね、心身症とお伝えはしましたが、もしかするとうつ病だったのかもしれません」
「へっ? は、はい」
「精神的なうつの症状自体は治まっていて眠気や胃もたれなどの肉体的な症状が残っている。しかし不安感などがぶり返さないとは、限りません。気を付けて症状を見ていきましょう……」
T先生は穏やかとニヒルが同居する独特の雰囲気で笑みを浮かべた。
私はしどろもどろになりつつお礼を伝え、手渡された血液検査結果を眺めながら診察室を出た。
亜鉛……うつ病……心身症……。色々考えつつスマホを覗いた。
ポチポチと検索してみれば、信憑性は不明だがけっこう出た。
亜鉛が欠乏するとメンタル不調を起こしやすい。味覚障害が起きる。物忘れがひどくなる。うつ病と密接に関わっている。
亜鉛くん……マジで? あっ、もしかしてこれがあって、T先生の態度が若干変わっていたのか……?
私はぷるぷるとしながら亜鉛のお薬を飲んだ。味はじんわり甘かった。
亜鉛欠乏はなんだかたいへんだということがわかったのでこれからよろしくお願いしたい。
今もずっとよろしくお願いしている。
ちなみになのだが血液検査はコレステロールと血糖値がちょっと高かった。
ヤ◯ザキ春のパン祭りのために菓子パンを食いまくっていた影響が出たのかもしれないと思ったが真偽は不明であり、六月現在に行なわれた職場の健康診断結果でもう一度血液検査をしたのでコレステロールと血糖値はその時にまた確認しようと思う。
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