歯科

閑話休題、私と虫歯

 歯が痛い……。

 そう感じたのは令和六年の十月である。なんか急に痛くなった。前歯の隣の歯だった。

 鏡で覗いてみてもなんとなくグラついているかな……? 程度の異常しか見当たらなかったが、痛いものは……痛い! 食事がしにくい! 不便極まりない!


 さっさとなんとかしようと歯医者を予約した。

 余談と見せ掛けてともするとすべての不調の前提案件なのだけれど、この時の私はスマホは割れるわ歯が痛むわ労働で肩こり腰痛が増すわ出掛ける予定がやたら多いわと、色んなことが起こって金がどんどんなくなっていき、かなり目まぐるしく感じていた。

 ガス欠になっちゃったのかもしれないなと今は思っている。


 さて、歯医者予約の時間である。

 歯医者、調べてみるとめちゃくちゃあって、どこに行けばよいのかまるでわからない。

 まあ一番近いところでいいかと思い、徒歩圏内の歯医者を適当に予約した。地元密着っぽい、小ぢんまりとした歯科医院だった。出入り口に置かれている消毒スリッパがなんだか懐かしい……。

 一足選んで中へと入り、受付を済ませると爆速で名前を呼ばれた。この時にはD病院にまだ通っていなかったが、今思うとD病院の待ち時間の異様な長さとこの歯科医院の待ち時間の異様な短さは足して二で割って欲しい。早く呼ばれ過ぎるとそれはそれで心の準備ができていない。

 そんなわけで、もう診察!?と思いながら診察室に入った。歯医者特有の診察台にもたれて座り、歯科助手の方に楽にしていてね〜となだめられた。

 その後すぐに現れた歯科医のM先生は、気難しそうな五十代くらいの男性だった。


「どうされましたか」

「あ、歯が痛いです」

「なるほど。ちょっと見せてください」


 M先生は手早く私の口の中を確認した。


「虫歯だね……」


 と言ってから私を一旦椅子から下ろし、レントゲン室へと連れて行った。

 ぱちりと撮影された私の歯のレントゲン画像はすぐに見せてもらえた。

 M先生は気難しそうな顔のまま歯並びが異様に悪い私の歯を眺めてから、痛んでいる歯の部分を指し示した。


「ここ……わかるかな。虫歯が神経までいっています」

「えっ」

「永久歯だから抜くわけにもいかないね。神経を切って、削りましょう」

「えっえっ」

「とりあえず今日は神経を切ります。痛いでしょうから」


 あれよあれよと診察台に戻され、はーい口を大きく開けてー、のターンがやってきた。


 もうね、めちゃくちゃに削られた。

 ギュイイイイイン! ビィ〜〜〜〜〜〜〜! ビギィィン! ビギィィン! ギュウイイイイイイイン!

 こんな感じだった。まさに工事現場。私の口の中は大混乱の長距離渋滞、コンクリートをもりもり剥がしての大規模舗装工事が行われていた。


「ふう……今日は一旦終わりです」

「あが…、が………」

「次、歯に合わせた埋め込み用の器具を用意しておきますので、それを刺して根本が緩んでいる歯を固定しましょう」

「んご……んごご……」

「口、濯いでいいですよ……」


 先、シャワー浴びるね……のような含ませだった。

 私はこくこく頷きながら口の中をゆすぎ、この日の施術は終わったのであった。


 後日の予約日、宣言通りに歯を固定する何らかの物体、歯に合わせた杭みたいなものを突き刺された。

 その日だけで作業は終わらず、また後日に予約を取ることになった。


 これがあと二回続いた。

 あれっ、歯医者ってなんかやけに細々と通院しなきゃいけないんだな……? と思った。

 思いすぎたあまりに口にも出た。


「あの、M先生、私はあと何回通院すれば……?」


 M先生は気難し顔のままちょっと考え、


「次で終わりでいいですよ」


 と言った。


 そして次の施術日は、虫歯自体に何かをするわけではなく、経過観察のあとに歯の掃除が行なわれた。

 けっこう汚かったようで、恥ずかしさを感じた。

 終わった後はもう次の予約は取られず、私の歯医者通いは一ヶ月ほどで完了した。


 最近この歯医者を思い出したのはハガキが来たからである。

 その後どうですか、良ければ定期検査をしませんか、という内容だった。


 定期検査……。

 したほうがいいと思うが、また細々と何回も通うことになるのは、嫌である……。

 どうしようかなあと悩みながらハガキを眺め、これを書いた。

 定期検査に出向いた際は、この歯科項目を更新しようと思う。

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